60歳まで働いて年金を払って、65歳になったら今度は年金をもらう立場に…。年金についてそんなイメージを持っている人も多いのでは。実は、その年金、早く貰ったり遅く貰ったりすることが出来るって知っていましたか?
65歳が年金スタート…じゃない!?
繰上げ・繰下げ受給って?
2016年7月6日
65歳より前に年金をもらう「年金繰上げ」受給
年金制度は過去から現在まで度重なり改定が行われてきました。人によってもらえる年金の種類や年齢が異なりますが、現役世代で働く女子の年金については、65歳になってから。
しかし65歳まで待たなくても、希望すれば60歳以降に年金を受け取ることができます。これを「繰上げ請求」といいます。
繰上げ請求は年単位ではなく月単位でできるので、家計の必要にあわせて対応させやすいのが嬉しいところ。
早くもらう分だけ支給額は下がる
ただし、本来より早めに受け取ることができる分、ひと月繰上げするごとに0.5%分が本来もらえるはずの年金額から減額されて支給されます。
たとえば60歳になってすぐもらおうとすれば60ヶ月 (5年×12ヶ月) の繰上げになるため、30% (0.5%×60カ月) 減額された年金額を60歳からもらうようになるイメージです。また、一旦減額された年金をもらい始めると、それは一生続きます。
本来の受給年齢の65歳になったからといって、年金額も本来の金額に戻ることはありません。
たとえば、90歳まで生きるとして、60歳からもらえば30年、65歳からもらえば25年間で、受給開始年齢が早いほど受け取る期間は長くなりますね。
60歳からの5年間を減額されても65歳から通常の金額でもらえるというのなら、トータルでみると年金受給額が多くなり、年金制度が成り立ちませんよね。
65歳より後にもらうなら「年金繰下げ」受給
逆に65歳から年金をもらわずに、自分の意思で年金受給を先延ばしにするのが「繰下げ請求」です。
繰上げとは逆に、繰下げ請求では本来の65歳で受け取る年金額よりも増額された金額が支給されます。
遅く貰えば、支給額が上がる
ひと月繰下げるごとに増額率は0.7%。例えば65歳ではなく67歳から受給を希望すると、24ヶ月 (2年×12ヶ月) の繰下げとなり、16.8% (0.7%×24カ月) 増額された金額が、それ以降一生涯に渡って支給されるということです。
繰下げすればするほど年金額は大きくなりますが、増額率には限度があり最大増額率は42%。70歳を過ぎると増額率は変わらず、70歳以降のどの時点で繰下げ請求をしても70歳時点での増額率と同じということになります。
繰上げ請求では「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を同時にする必要がありましたが、繰下げ請求の場合、両方同時でもどちらか一方でも可能です。
年金の「繰上げ」「繰下げ」はおトク?
毎回受け取る金額は下がっても早くから受け取れる繰上げ受給、受給開始は遅くなるけど毎回受け取る年金額が増える繰下げ受給、それとも本来の65歳からの年金受取り。いったいどれが1番おトクなのでしょうか?
実は、どれがおトクかはその人の生き方次第だと言えそうです。
繰上げ年金に関して言えば、早く年金をもらえることはメリットですが、年金額が一生に渡って減額されるのはデメリットですね。
繰下げ年金については、年金額が増えるのは大きなメリットですが、年金をもらい始めるまでは貯金を取崩したりその他の収入を得なければ家計にはデメリットになります。
繰上げ・繰下げともに、シングルなのかカップルか、健康状態はどうか、貯金などで老後資金の準備はできているかなどによって、おトク度が大きく変わります。
年金繰上げで気をつけたいこと
年金受給までの間に結婚をしていたら、配偶者に万が一の場合、遺族厚生年金や寡婦年金の権利が発生することがあります。 しかしながら年金を繰上げ請求することに伴い、これらの権利を失うことがあります。
繰上げ請求で年金額が減額される上にこれらの年金の権利を失うのは家計にダブルパンチとなってしまいます。
生涯おひとりさまの場合でも、60歳から65歳の間にまでに心疾患や脳血管障害等何らかの原因で障害認定される場合、繰上げ請求が認定された後に障害認定されても障害年金は受け取ることができません。
年金繰下げで気をつけたいこと
繰下げ請求した後、年金受給待機中に万が一死亡しても繰下げしていた間の年金はもらえません。
また、たとえば70歳以降に増額された年金をもらおうと予定していても、その後長生き出来なければトータルでもらえる年金額は少なくなってしまいます。
金額の増減額だけでなく、60歳から65歳までの自分や家族の生活スタイルを、老後資金準備状況とともによく考えて判断することが大切です。そのためにもいまからお金の教養をしっかり身につけておくことが大切ですね。