おひとりさまで重度の介護状態になってしまった場合には、自分では何もできないため、老人ホームに入らなくてはなりません。
ひとくちに老人ホームといっても、大きくは、地方公共団体や社会福祉法人が運営する「公的老人ホーム」と、地方自治体から認可を受けた民間企業や団体が経営する「民間老人ホーム」に分けられるのをご存知ですか?その違いについて学んでみましょう。
知っておきたい
老人ホームのABC
2016年5月23日
費用面では魅力的、でも入所条件が厳しい公的老人ホーム
まず、公的老人ホームから見ていきましょう。代表的な施設は、特養ともよばれる「特別養護老人ホーム」です。老人福祉法に基づく介護保険施設のひとつで、家での介護が困難な人が対象になります。入所条件は原則として、65歳以上で要介護度3以上に認定された人。
要介護3というのは、入浴や衣服の着脱などに全面的な介助が必要だったり、食事や排泄に一部介助が必要になる状態です。
なお、要介護度が1および2であっても、認知症で日常生活に支障をきたすような症状が頻繁に見られたり、単身世帯等家族等の支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不充分であるなど、特養以外での生活が困難であると認められた場合は入所が可能です。
ケアプランに従い、食事や入浴などの介護、日常生活の介助、リハビリなどの機能訓練などが受けられます。
気になる費用ですが、介護保険負担金、食事代、居住費などを含め、8万円~十数万円程度。入所時の一時金もいらず、更に所得の低い人には負担額軽減のしくみがあります。民間の老人ホームに比べて、費用の面で圧倒的に安いこともあり、人気があることも頷けます。
ですがその人気ゆえ、民間の有料老人ホームと比べて入ることが困難というデメリットもあります。特別養護老人ホームに入るための待機者数は、平成26年度の調査によるとなんと52万2000人。地域によって待機状況にばらつきはありますが、入所を申し込んでも希望通りに入所できず、在宅または他の施設への入所で、希望の老人ホームに入るためには在宅や他の老人ホーム待たないといけない…なんてことも多く見られるようになってきた光景です。
快適な生活を望むなら、民間老人ホームがおすすめ
公的老人ホームが地方公共団体や社会福祉法人などの公的機関によって運営されているのに対して、民間老人ホームは、地方自治体から認可を受け民間企業や団体が運営しています。
公的老人ホームは入居要件に合致しないと入居できませんが、民間老人ホームは、自分の希望の老人ホームに入ることができます。
民間の有料老人ホームの数は、平成26年社会福祉施設等調査によるとなんと全国で9,632施設。同じ平成26年の調査で、特別養護老人ホームの数は約7800施設あるとされており、民間の老人ホームの方が1800近く多く存在しています。
公的老人ホームに比べて費用は高めですが、各社費用や介護、食事などのサービスに特徴を出しているので、比較してみるとよいでしょう。
介護や食事などのサービス体制が整い、居室で生活できる上に24時間駐在の介護スタッフにより介護計画に沿った介護、生活援助、リハビリ、レクリエーションなどを受けられる介護型有料老人ホームの場合、入居金だけで数百万円にも上るところもあります。公的老人ホームとの金額差は数十万~数百万と、大幅な差が出てきてしまうため、理想の老後などがある場合は、それに向けた資金の準備は必須です。
元気なうちの入所で、充実したシニアおひとりさまライフも可能になる
ここ最近、安全と安心を確保できるシニアライフを求めて、元気なうちに老人施設に入る人も少なくなくなってきました。
この先ずっとおひとりさまで過ごすのか、結婚相手に先立たれて将来おひとりさまになってしまうのかは分かりませんが、平均寿命がより長い女性の方が単身生活を余儀なくされる可能性が高いのは事実です。
歳を取ると身体的に不安になるのはもちろんですが、リタイアして社会との接点がなくなり孤独、孤立を感じる精神的な不安も大きくなります。これらの不安を避けるために、誰かがいる安心にお金をかける必要もあるかもしれませんね。
まだ遠い話しとは思わずに、できるだけ若く元気なうちに少しずつ情報を仕入れることは悪いことではありません。気になった施設がある場合、見学してみるのもオススメです。見学する際には介護スタッフの対応や入居者の表情などを確認しながら、設備の状況や掃除が行き届いているか、運営会社がしっかりしているかなどをチェックしてみましょう。良く話を聞き、返還金の説明が明確か、必要な介護や医療が受けられるか、ターミナルケアをしてもらえるかなどをしっかり確認しておくことが大切です。自分の親の介護にも役立つでしょうし、将来のイメージが具体的につかめるかもしれませんよ。