廃止、改正など、長く物議を醸していた配偶者控除は2017年の税制改正で2018年の所得税分から改正されることになりました。
シングルでも既婚者でも、扶養されることなく働いていて、「自分には関係ない」と思っている女子も多いことでしょう。しかし、結婚、妊娠・出産、夫の転勤などで家庭と仕事の両立をすることに難を感じてしまうことも無くはありません。
そこで、新しい改正内容とともに、働き女子の本音を紹介します。
あなたはどうする?
配偶者控除の引き上げで、
働き女子の本音をチェック
2017年11月17日
配偶者控除、2018年からどう変わる?
これまでの配偶者控除制度をあらためて確認してみましょう。
配偶者控除は所得控除のひとつ。
一定条件を満たす配偶者を扶養している人は、その納税者(扶養している人)の所得から配偶者控除額を差し引くことができ、その分、その人自身の所得税が少なくなるというものです。
その一定条件とは、「民法上の配偶者であること」「生計を一にしていること」「年間合計所得額が38万円以下であること」「青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていないこと」などがあります。
これらの条件を満たしたときに納税者(扶養している人)の所得から引ける、配偶者控除額の金額は38万円。
扶養する配偶者の年齢が70歳以上(その年の12月31日現在)の場合は48万円となっています。
2018年からの配偶者控除、多くなる?少なくなる?
分かりやすくするために、これから先は、納税者(扶養している人)=夫、パートなどで働く被扶養配偶者=妻としてみていきましょう。
今回の制度変更で、改定される項目はいくつかありますが、なかでも注目したいのが次の2つです。
- 夫の所得条件が加えられたこと
- 夫の所得によって配偶者控除の金額が変更されること
まず、1つ目の夫の所得条件ですが、夫の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、配偶者控除の適用を受けることができないこととされました。
2つ目の配偶者控除の金額に関しては、夫の所得額が増えるほど、配偶者控除額が少なくなる仕組みで、具体的には次の表のようになります。
夫の合計所得金額 | 配偶者控除額 | 妻が70歳以上の場合 |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
1,000万円超 | 0円 | 0円 |
配偶者特別控除って?
先に見たように、現制度でも、配偶者控除を受けるには、妻の年間所得が38万円(給与所得のみなら給与収入が103万円)以下でなければなりません。
しかし、これを超え、控除が全くなくなってしまうことによる家計に与える影響を鑑み「配偶者特別控除」という制度を設けています。
現段階では、妻の年間所得条件は38万円超76万円未満であること。
配偶者特別控除の金額は38万円から3万円までの間で、妻の年間所得に応じて段階的に減る仕組みになっています。
2018年からは収入要件が拡大!
実は、2018年からの改定で、103万円の壁が150万円に拡大されたというのはこの部分。上記したように、妻の年間所得条件は38万円超76万円未満ですが、2018年からは38万円超123万円以下となります。
これを給与収入ベースでいうと、年間103万円超141万円未満だったものが、103万円超201万6千円未満になるということ。
そして、配偶者特別控除の金額は、妻の年収が103万円超150万円未満までは「配偶者控除」と同じ金額(上記の表)がそのまま適用され、年収150万円を超えると夫および妻の年収に応じて36万円から1万円の範囲で段階的に減っていくことになります。
つまり、扶養に入りながらより稼げるってこと?!
厳密にいえば配偶者控除・配偶者特別控除と名前や適用条件などが異なりますが、妻の給与収入が年150万円までの範囲では、夫の所得から控除できる金額は同額です。
つまり、これまで年収が103万円までに収まるように、労働時間や時給を抑える必要があったものが150万円までなら大丈夫ということになります。
しかしここで忘れてはならないこともあるんです。
- 妻の年収が103万円を超えても、夫が配偶者控除を受けることができれば夫の所得税は安くなるが、妻の年収が103万円を超えることで妻自身に所得税がかかるようになる。
- 妻の年収が130万円(妻の勤務先や労働時間によっては106万円)を超えると、妻自身が健康保険料と年金保険料を支払わなければならない。
妻自身の所得税や社会保険料の支払いに関しては、今回の配偶者控除の改定には関係なく、現状どおりの内容がそのまま継続します。
配偶者控除の適用条件が拡大されるという情報だけに踊らされるのではなく、年収を拡大させることによるその他への影響などを考えながら、世帯全体でマネープランを考えていくようにしましょう。
働く女性のホンネは?
仕事が好き、キャリアを上げたい、バリバリ稼ぎたいと思っていても、結婚したら仕事を辞めたい、扶養に入ってお小遣い程度を稼げればいい……なんて思いが心の隅に潜んでいる場合もありますね。
そこで、他の働く女性はどうなのか、日本FP協会の「働く女性のくらしとお金に関する調査2017」から、働く女性の働き方に関する本音をチェックしてみましょう。
働く既婚女性の71.4%が2018年からの配偶者控除の改定を知っているというのは、さすがに配偶者控除への関心が高いということが窺えます。
では、103万円の壁が150万円に上がることで、働き方が変わるかという問いに対しては、「変わる」が24.1%、「とぢらともいえない」が26.3%、「変わらない」が49.6%で、変わらないという人が多いよう。
その理由は、「元々、収入をセーブしていない(すでに150万円を超えているなど)」が最も多くて45.5%。
他には「家事との両立のために働く時間を増やせない」「勤務先の都合で働く時間を増やせない」「育児との両立のため働く時間を増やせない」などがあります。
また、パートで働く人の中では、「社会保険の壁があるから」と答える人も。
これらの回答をみるかぎりでは、配偶者控除の拡大が女性の働き方に大きく影響を与えることはないと考えられそうです。
むしろ、いま正社員で働いている人は、そのまま働き続ける選択をした方がいいのかもしれません。
場合によっては女性が働き方を変える選択を迫られることもありますが、世帯のマネープランにマイナスの影響を与えることのないように、制度の内容を良く知るとともに貯金や投資などで資産づくりに励んでおくことも必要といえるでしょう。