「それって控除になるからおトクだよ」。
日常では聞かないけど、ふとしたタイミングで聞く言葉「こうじょ(控除)」。単語だけ聞くとなんのことだかさっぱり…と思う人もいるかもしれませんね。曖昧な感じに受け流しやすい言葉でありますが、覚えておいて損がない言葉でもあります。
あなたは答えられる?
「控除」ということばの意味
2017年3月29日
控除の意味は、さしひく
一般的に控除には、「さしひく」、「とりのぞく」と言う意味があります。
「控」…………控え、という言葉でよく使用しますが、転じて、引き留めたり制止する意味もあります。広い意味で対象をコントロールする大意のある言葉です。
「除」…………厄除け、除外する、など「とりのぞく」という意味でよく使用します。消し去るのではなく、その場からなくすという意味合いがあります。
控除とは税金の計算の時によく使う言葉
税金の計算、とりわけ所得税の計算の時に「控除」という言葉をよく見聞きしますよね。 それには理由があります。
所得税と控除の関係性
まず、誤解しがちですが所得税とは、収入にかかるのではなく所得にかかる税金です。しかし、収入を上げるためにはもちろん必要経費がかかります。
すなわち、本来、収入=所得とはならずに、収入−経費=所得となるはずです。 そして、この(収入−経費)の計算そのものを、「控除」と呼ぶのです。
どうですか? 少しはスッキリしたでしょうか?
控除が多いと税金が安くなる
しかし、まだモヤモヤしている人も多いかもしれませんね。控除にはほかにも曖昧な使い方があるのが理解をややこしくしている原因かもしれません。
たとえば所得税額は、所得金額×税率で求められますが、実は所得税額はこれだけでは決まりません。所得税は次のような式で求められます。
(所得額×税率)−基礎控除額= 所得税額
課税される所得金額 |
税率 |
基礎控除額 |
195万円以下 |
5% |
0円 |
195万円超〜330万円以下 |
10% |
97,500円 |
330万円超〜695万円以下 |
20% |
427,500円 |
695万円超〜900万円以下 |
23% |
636,000円 |
900万円超〜1800万円以下 |
33% |
1,536,000円 |
1800万円超〜4000万円以下 |
40% |
2,796,000円 |
4000万円超 |
45% |
4,796,000円 |
上の表の右側の枠をご覧ください。これは「基礎控除額」の表です。
この表の計算式は (所得額×税率)−基礎控除額= 所得税額 となります。 計算式を見てわかる通り、所得税では、税額から右の金額を「割り引いて」くれるのです。
この「割り引いてくれる」のも「控除」の制度の一つ。 制度としてはありがたいのですが、このような使い方もするため、頭がこんがらがってしまうのです。
例)年間所得500万円の人の場合、本来所得税額は20%の100万円のはずですが、(500万円×20%)から- 427500円を割り引いてくれるので、所得税額は572,500円になります。
他にもある控除の使用例
そして、さらにややこしくしてるポイントとして、この「基礎控除額」とは分けて、控除という言葉を使う場面があります。
いわゆる①所得控除と②税額控除です。これも使い方としては、税金の割引計算をする時に使うのですが、それぞれ計算式があります。
①所得控除 (所得額−所得控除)×税率 = (所得税額)
②税額控除 (所得税額)−税額控除=最終的な所得税額
このように所得税は、何回か控除を使い分けながら割引計算をします。 もし、①の所得控除と②の税額控除が同額だった場合、どっちがおトクかというと、断然②の税額控除ですよね。
このように同じ控除でも、意味を分けて使うため、頭が混乱してしまうようです。
所得控除は14種類ある
① の所得控除は、全部で14種類あります。
まず所得が少ない人に重い税負担がかからないよう、「配偶者控除」「扶養控除」があります。個人の事情を考慮して税負担を軽くするために「障害者控除」「寡婦控除」などがあります。
さらに社会政策上の必要性から「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」「生命保険料控除」「寄附金控除」などがあります。
1 |
雑損控除 |
2 |
医療費控除 |
3 |
社会保険料控除 |
4 |
小規模企業共済等掛金控除 |
5 |
生命保険料控除 |
6 |
地震保険料控除 |
7 |
寄附金控除 |
8 |
障害者控除 |
9 |
寡婦(夫)控除 |
10 |
勤労学生控除 |
11 |
配偶者控除 |
12 |
配偶者特別控除 |
13 |
扶養控除 |
14 |
基礎控除 |
税額控除はインパクトが大きい
税額控除の中でも代表的なものと言えるのが、「配当控除」や「外国税額控除」、「政党等寄附金特別控除」です。
また、「住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)」も税額控除の代表的なものになります。仮に住宅ローンの残高が4000万円であれば、その1%に該当する40万円分、納めるべき所得税から直接割り引いてくれます。
他に替えが効かない言葉だから
ここまで「控除」という言葉の使い方を見てきましたが、理解はできましたでしょうか。「控除」という言葉の意味が複雑化しているため、なかなか理解は難しいですよね。
しかし、言葉に罪はありません。
これからもいろんな意味の「控除」とお付き合いしていくことになると思いますが、げんなりせずにひとつひとつ、自分のペースで理解していくことに努めましょう。