親族が亡くなるまで相続のことを知らなかった、という人は意外に多い。親にどれくらいの財産があるのか、ということや、相続にまつわるルールや法律など、いざ、その日が来て初めて知って慌てふためいても後悔先に立たず。今回は、多くの人が誤解している相続にまつわるアレコレを○×形式のクイズでご紹介してこうと思います。
相続の誤解・勘違いランキング
〜その日が来るまで気づかない〜
2017年3月6日
第5位 相続する財産が少なく相続税がゼロの場合、税務署に申告する必要はない…○か☓か。
「うちは相続といっても、家が一軒あるだけだし、子供も1人。子供がそのまま継げば問題ないよね」
確かに親一人子一人の相続で考えた場合、3600万円以下の財産であれば、相続税の控除枠(相続税のかからない資産額)に入っているので、相続税の申告の必要はありません。なので正解は○。
しかし、相続する際の財産はどのように計算するか、ご存知ですか?
【相続財産の試算】預貯金や定期預金など現金化しやすいものは良いですが、土地や株式の試算は大変です。(遺産相続額は相続開始時の時価で計算されます)また相続する人間が知らない遺産の存在もあるかもしれません。古美術品などの中には高額なものもあり、その場合も例外なく相続税がかかります。もしも、そうした財産がたくさんある場合は、早めに税理士に相談しましょう。
Point
資産によって、課税するものと非課税の区別があります。例えば、葬式代は非課税ですが、お墓代は相続課税される資産です。
第4位 生命保険には相続税がかからない…○か☓か。
生命保険は、お子さんが小さいうちに入って、もしもの時のためのお金にしようと考えているご家庭も多いと思います。だから、まさか……課税なんてされるはずが……。
しかし、正解は×。生命保険も相続する財産に加算されます。悲しいですね。しかし、現金が相続財産にあると、相続トラブルは起こりづらいと言われています。例えば、不動産物件のみ残されて複数人で相続する場合は、共有財産にしたりすることもありますが、これは相続トラブルの元になることが多くあります。兄弟姉妹同士ではよかったとしても、今後、誰かが亡くなってその次の世代になった場合、その名義の変更には手間と労力がかかりますし、さらに、その次の世代も複数人いた場合は……。このように問題は先送りできたとしても、いずれ解決しなければならない問題が発生してしまうのです。
Point
生命保険は振り込まれる額がはっきりしているので遺産額を計算するときに便利です。手続きに不備がなければ3営業日以内に振り込まれますが、診断書の内容に不備や疑問点があれば、聞き取り調査等の対象となり、振込は遅れることになります。
第3位 子ども名義で親が貯金していた口座のお金には相続税がかからないか…○か☓か。
「この口座は息子のために開いたもので、毎月2万円ずつ積み立てていて、子どもが大きくなったときにあげようと思っていたの」
親としては、贈与(年間110万円以内なら非課税)のつもりで、子供名義で貯金をしていて、親が死亡した際に初めて子供がそれを知るということは珍しくありません。
このお金は、法律上、ほとんどの場合親のお金と判断します。法律では、お金の出どころを重視する(子どもが働いて稼いだお金ではない)ので、子供の知らない貯金通帳のお金は相続財産に含まれてしまいます。そのため正解は×。
しかし、贈与のつもりだった、と主張すればどうでしょうか?残念ながら、その場合でも同様です。親がこっそり貯めていたという場合は、子どもは受け取っているという事実認識はない(法律ではこの点を重視する)ので、やはり相続財産になります。
では、どうすれば贈与と判断されたかというと、贈与の非課税枠110万を少し超える額を渡して税務申告をすれば、しっかりと贈与したという履歴が残ります。実際、そのようにして少しずつ贈与して相続税対策をしている人もいるようです。
Point
例えば 111万円を他人に贈与した場合、1万円分の贈与税がかかります。この場合の税額は数百円です。贈与したという記録も残り、あとから相続税をかけられることはありません。
第2位 親と同居していて、親が死亡した場合、自宅は相続税の対象外になる…○か☓か。
「この家はずっと自分も住んで来た家だし、きっと自分が相続すると思うんだけど、どうなんだろう?」
家などの不動産物件は資産とみなされ、もちろん相続税の課税対象となります。なので、正解は○。しかし、不動産物件は都内と郊外では幾分事情が異なります。それは、都内の地価は高いため、不動産価格が相続税の控除枠を軽くオーバーしてしまうことがあるためです。みなさんも、地価の高い土地では、相続税が払えなくて土地を物納したという話を聞いたことがありますよね。相続税というのは10ヶ月以内に必ず納めなければいけないという法律もあるので、止むに止まれず苦肉の策として相続税を物納した遺族もいます。
Point
想定外の高額遺産を引き継ぐ場合は、相続税の払いすぎに気をつけましょう。いわゆる2次相続のやり方は気をつけないと、相続税を払いすぎてしまうことになってしまいます。
たとえば、1億5千万の物件を相続する場合を例にとって考えてみましょう。父が亡くなり相続するのが、母1人、子供1人だったとします。この場合、2通りの相続の仕方があります。
①母が全てを相続する。その後、母が亡くなった時に子供が全てを相続する。
②母と子供で2分割して相続する。
①の場合、母が相続する時は、相続税はかかりません。配偶者の特別控除があり、1億6千万円までの財産は相続税がかかりません。しかし、子供に相続する時には、通常通りの相続税がかかります。
(相続税の控除額は3000万円+600万円×法定相続人の数で求められます)
子供に相続する場合の課税価格は11400万円(1億5千万円−3600万円)で、この価格にかかる相続税を計算すると、2860万円になります。
②の場合、まず母と子供で2等分して1億5千万円の家を相続します。(共同名義にする)この場合、母は①の場合と同様に相続税はかかりません。子供にかかる相続税を計算すると、①の場合よりも安くなります。
(家の2等分した価格7500万円−3600万円(控除額)=3900万円が課税額となり、この課税額に対しての相続税を計算すると、580万円になります。
そして、母が亡くなった時に残りの半分を相続したとしても、同様に580万円の相続税しかからないので、合計1160万円となります。①の場合よりもかなり相続税はお得になります。
※相続税は累進課税で、相続する額が高ければ高いほど税率も高いので、このような現象が起きます。
第1位 遺言書には必ず従わなければいけない…○か☓か。
「この遺言書には長男に全ての遺産を相続させるとあるから、次男三男には遺産を相続する権利はない!!」
よくドラマでもあるシチュエーションですが、実はこれが一番の勘違いポイントです。正解は×です。遺言書には法律のような拘束力はありません。
しかし、最近では手軽に遺言書を作成できるキットが書店などで売られているので、遺言書を残す方も多くなり、遺言書をめぐるトラブルも年々増えてきたと言われています。
遺言書のトラブルで最も多いのは、特定の個人や団体などに全てを相続させようとしてその旨を書き残す場合です。中には自分のペットの世話をする人を指名してその人に全額遺し、家族には一切財産を残そうとしなかった人もいます。
さて、上記のような場合、遺言書の内容に不満がある遺族は裁判所に対して異議申し立てをすることができます。そして、民法では親族に対して一定の割合の相続を保証する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度が規定されています。 最低限受け取れる遺産額が決まっているのですね。
Point
遺産を巡るトラブルを防ぐ意味でも、公証人や弁護士などは、あらかじめ遺留分を考えた上で、遺言書を作成することを勧めています。
遺留分(遺産相続の最低保証)
子供と配偶者が相続人の場合……子1/4 配偶者1/4
父母と配偶者が相続人の場合……配偶者1/3 父母1/6
配偶者のみが相続人……配偶者1/2
子供のみが相続人……子供1/2
直系尊属のみが相続人……直系尊属1/3
兄弟姉妹のみが相続人……兄弟姉妹にはなし