2016年12月に、政府から2017年度の税制改正大綱が発表されました。この中には、今まで「103万円の壁」と呼ばれていた配偶者控除が、年収上限150万円までに引き上げられるという、パートや契約社員として働く女性たちにとって、とても大きな変更点が盛り込まれています。これによって、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか?今回は、配偶者控除制度の変更点について、詳しく見ていきましょう。
「103万円の壁」が「150万円の壁」に!?
配偶者控除の変更点とは?
2017年1月17日
配偶者控除103万円の壁とは?
2016年から、新聞やニュースを賑わせていた配偶者控除制度の変更案。ついに、2018年1月から、現行の制度が変更になることが決定しました。新制度はどのように変わるのかを知るために、まずは、現行制度である「配偶者控除103万円の壁」について、簡単に復習しておきましょう。
現行の配偶者控除とは?
現行の配偶者控除の制度は、夫がサラリーマンなどで働き、一家の収入を支えている家庭において、その妻の収入が103万円以下の場合、夫の給与所得から38万円を引き、世帯主の納税額を少なくするというものです。現状では、パートやアルバイトで働いている妻は、夫の納税額を増やさないように、配偶者控除が適用される収入103万円の範囲内で働く方が多くいます。
さらに現在は、「配偶者控除」に加え、妻の年収が103万円を超えても、年収141万円未満までなら、年収に応じて段階的な控除が受けられる「配偶者特別控除」という制度があります。しかし、それでも、年収を調整してあえて働かない女性が多く、これが女性の社会進出を阻む原因とされてきました。
そこで、新しい制度では、女性のさらなる活躍を促すために、妻の収入の上限が、150万円まで引き上げられます。この変更によって、私たちの生活がどのように変わるのか、具体的に見ていきましょう。
なお、今回は見送られましたが、もし配偶者控除が廃止されると、家庭の負担がどうなるのかを知りたい方は、こちらの記事を確認してみてくださいね。
150万円の壁になるとどうなるの?
今まで妻が年収103万円以内になるように調整してパートなどで働いていた場合、2018年以降は、夫の納税額を増やさずに、年収150万円まで働くことができるようになります。単純に計算すると、毎月約8万5,000円(103万円/12ヶ月)までに抑えていた月収が、12万5,000円(150万円/12ヶ月)まで増やすことができるようになるということですね。
また、現在の「配偶者特別控除」と同様の仕組みで、妻の年収が150万円から201万円以下の世帯では、年収の増加にしたがって9段階で控除額が減っていく制度となる予定です。
もちろん、注意点も!
ここで注意しておきたい点は、配偶者控除とは別にある社会保険料の「106万円の壁」または「130万円の壁」です。現状では、この壁が、年収106万円か年収130万円かは、妻の週の労働時間や会社の規模によって変わってくる仕組みになっています。簡単に言うと、妻の年収が106万円、または130万円以下の場合は、夫の社会保険の扶養となるため、国民年金などの社会保険料を払わなくても良いのですが、妻の年収がそれ以上ある場合、この社会保険料の支払いを妻自身がしなければなりません。
新しい配偶者控除の範囲内だからといって年収150万円ギリギリまで働くと、妻は社会保険料の負担が発生することになるのです。年収いくらまで働くべきなのかという点を考える際は、この社会保険料の壁を考慮しなければいけませんね。
夫が高所得者だと増税になる可能性も
さらに、新しい配偶者控除制度は、夫の所得制限が設けられることになります。夫の年収が1,120万円を超えると徐々に控除の額が減らされ、年収1,220万円で配偶者控除が適用されなくなる予定です。現行の配偶者控除は、夫の所得に関係なく誰でも適用されていましたが、新制度では、高所得者の世帯において、税の負担が重くなることになります。新制度に移行するにあたり、妻の年収に加えて、夫の所得についても確認しておく必要がありますね。
いかがだったでしょうか。今回の配偶者控除制度の変更により、ご家庭によっては、妻の働き方を大きく見直す必要があるでしょう。新制度が実施されるのは2018年1月から。そこで2017年は、この新制度を見据えて、どのような働き方をするのが家庭によって一番良いのかを熟考し、労働時間や仕事内容をシフトしていく1年にすると良いでしょう。ぜひ、今後の働き方について、ご家族で話し合ってみてくださいね。