毎月の給与から天引きされる所得税。自分の手元に来る前に消えてしまうお金なので、どうしても無関心になりがちですが、所得税は所得に応じてかけられる税です。そのため、所得が予定より少なければ戻ってきます。
意外に知らない
源泉徴収と年末調整
2017年3月24日
税金はみんな平等に負担しよう
税務申告をしたり、税金にまつわるアレコレを考えていると、なぜ、税金はこんなに複雑なんだろう?という疑問が湧いてくることがあります。そんな疑問を考えても決してプラスにはなりませんが、その理由を逆から考えてみると、意外にもすぐにわかります。 それは、税における平等思想。もしも、税率が一定だったら計算は楽だけど、そういう税率だと「富裕層の負担が軽く、庶民層に負担が重い」という不満が出てくると言われてます。
「適正税率」でみんな平等に
例えば税率が10%固定だと考えて、5000万円を稼ぐ人の500万円は軽いけど、300万円を稼ぐ人の30万円は負担が重いというのが税を課す側の考えです。 これを5000万円を稼ぐ人の税率を現在の適正税率まで引き上げると、およそ1770万円が税金になります。 これで庶民層と同じ負担率になるはず……、と税を課す側が考えたかどうかはわかりませんが、それが日本の財務省の考える負担率の平均化、税における平等です。
所得税は所得金額によってこんなに違う
所得税の税率は累進課税といい、所得が増えれば増えるほど税率は高くなっていきます。
このように税率を変えれば、所得が多い人から多額を徴収でき、所得が少ない人からは文句は出ないかもしれません。しかし、ひとつ見落としてはいけないポイントがあります。所得税は収入にかかるのではなく、所得にかかるということです。
収入と所得はちがう
普通にここまで読んで、収入と所得を同じものだと考えた人は大勢いるかもしれませんが、実は二つは違うものです。所得とは、収入からそれをあげるためにかかった費用(コスト)を引いた金額です。一瞬、ん?と思った方は下の数式を確認してください。 収入 − 費用 = 所得 つまり、収入から必要経費を引いた金額が所得となるのです。こうなると不思議なことが起こります。収入が5000万円あっても、必要経費が4500万円かかる場合は、所得は500万円なので、所得税率は20%になるのです(上記表参照)。
経費はごまかさず正直に
いわゆる節税とは、いかに多額の必要経費を税務署に認めてもらうか、というポイントで工夫する行為を指しています。たまに行き過ぎたりする人もいますが、そこに労力を注ぐより納税はきちんと適度に収めるのがベター。本業に注力し、着実に所得を増やしていきましょう。
源泉徴収とは、税金を前倒しで収めていること
話がややズレてしまいましたが、税金がなぜ複雑か、というポイントに話を戻します。収入はすぐにわかりますが、所得というものはすぐにわかりません。必要経費の性格上、後払いになっていたり、継続して支払っているものだったりするので、すぐに所得額を出すのが難しい。 そのため、政府は収入にあらかじめ税金をかけることにしました。報酬を支払う人(事業者)にあらかじめ税金分を抜くようにと通達を出して事業者から直接徴収することにしたのです。 それが<源泉徴収>です。 つまり、政府は必要経費分をまだ計算してない(収入)に見込み税率をかけて税金を徴収しています。 そして、<年末調整>とは、 本来税率をかけるべき対象である(所得)を計算して「取り過ぎた税金を返してあげるよ」「少ない場合は追加徴収するよ」というものなんです。
控除項目は、税務署が認める必要経費
また難しい言葉が出てきましたね。控除は、「こうじょ」と読みます。意味は「とりのぞく」です。控除にはいろいろな種類があり、年末調整で計算される控除は<所得控除>と呼ばれます。 年末調整では、会社員が普通に生活していく上で、必要経費だと認められる支出を収入から控除(とりのぞく)します。そして残った金額を所得と認めるというわけです。
私たちが受けられる控除って?
年末調整で受けられる控除には、配偶者控除、扶養控除、障害者等の控除、配偶者特別控除、生命保険料控除、住宅借入金特別控除などがあります。 つまり、養う妻子がいる人、障害者の人、共働きの配偶者の収入が38万円超76万円未満の人、生命保険に加入してる人、住宅ローンを組んでいる人には、その負担から一定分を収入から控除してくれるのです。
例:生命保険控除の場合
例えば、生命保険料控除は、一般の生命保険料4万円、個人年金保険料4万円、介護医療保険料4万円の合計12万円の枠が最大控除分(とりのぞける最高額)となっています。 保険会社から送られてくる年末調整の保険料控除証明書を年末調整の書類に添付して会社に提出しましょう。 なかなか複雑な仕組みですが、平等な税負担を目指して政府が作った制度です。年末調整で各種控除項目を申請すると結果的に課税所得が減り、住民税を減らすことにもつながります。 自分が使える控除はなにか、一度調べてみるてはいかがでしょうか?