学生時代に借りた奨学金の返済を続けているM美さん。社会人になってからも学生時代に住み始めた賃貸物件に住み続け、節約に努めながら生活をしています。しかし、まだまだ続く奨学金の返済を負担に感じ始めてきたそう。なんでも、お金を借りてまだ返しきっていない自分が大きな買い物をしたり、旅行に行くのははばかられ、できれば早く完済してしまいたいとのことです。
【FP家計簿チェック】27歳女子シングル。奨学金の返済を早く終わらせたい。借金をしているようで、好きなことが出来ません
2019年6月28日
今回の相談者は、シングル女子M美さん
M美さん(27歳)のプロフィール
- ・独身
- ・一人暮らし/東京近郊
- ・年収300万円/手取り月収17万円、ボーナス35万円
- ・貯金120万円/定期預金
東京近郊の会社で貿易事務を担当している会社員のM美さん。大学時代に行った海外旅行で海外に興味を持ち、海外に関わる仕事を選んだのはいいものの、今の会社の給料にはあまり満足していない様子。それでも仕事は楽しく、続けたい。節約に努めながら将来的なキャリアアップを目指して英語の勉強に取り組んでいる。
海外旅行にも行きたいけれど、奨学金(借入れ)の返済がまだ終わっていないことが気になって、贅沢はつつしみたいというしっかりさんタイプ。
できるだけ早く返済を終わらせて、夢のためにアレコレできる日が来るのが楽しみ。
M美さんの家計簿をチェックしてわかったこと
奨学金を返済しながら一人暮らしを頑張っているM美さん。学生時代から身についた節約生活にはとくに苦労を感じないとのこと。
ただ、お話によると、贅沢をすることには憧れはないけれど、20代も後半になり、キャリアアップや将来のことを考えるようになったとのこと。別に結婚を考えている人がいるわけではないけど、もしも相手が出来ても負債を抱えたままでは結婚したくないし、なにより、自分自身で外国のさまざまなグッズを仕入れる仕事に就くのが夢で、時々は海外旅行をしたいとのことです。
現在のように節約を続ければ月々の奨学金返済を続けていくのは問題ないけれど、これがなければもう少しお金を貯めて旅行にも行けるのに……とも思うそう。まだ約10年残っていることが重荷で、いまある貯金で繰り上げ返済してしまっていいのかどうか、それとももっと他に良い方法はあるかというご相談です。
そこで早速、M美さんの家計簿を拝見しました。
家計簿を拝見すると、やはり「家賃」「食費」などの生活上の固定費以外に奨学金の返済額が目立ちます。そのなかで少額ながらも毎月定期預金へ積み立て、ボーナス時には一部を定期預金に入れています。家計管理をしっかりされて、120万円貯めているのは立派です。
少し気になったのが「英会話の費用」と「保険料」。それぞれお話をうかがいました。
英会話費用は、いまの仕事に英語が活かせることと、将来の夢のために英語の勉強を頑張っているとのこと。わりと安めの英会話学校を探したので月4回の月額料金で6,500円払っています。
保険料は就職したときに勧められた医療保険をそのまま支払い続けてるとのこと。さまざまな特約が付加されていて、20代前半に加入した女性の医療保険にしては少し高めです。
とにかく奨学金を返してしまいたい!
今回のM美さんのご相談は、奨学金を早く返してしまいたいこと。でも、いろいろお話をしているうちに、時々は旅行をしたり、買い物をするために、貯金をもっと増やしたいという希望があることもわかりました。
奨学金の残高状況を確認してみると、残り期間が約10年で、元金残高は約164万円。37歳になるまで払い続けると考えると、たしかにげんなりしてしまうのはわかります。このまま支払い続ければ、この先174万円程度払っていくことになりますが、仮にいま一括返済してしまうなら164万円で済みます。奨学金の繰上げ返済は元金だけの返済で済むため、約10万円分の利息も節約できることになるのです。
しかし実際のところ、貯金が足りませんし、仮に164万円あったとしても全部使ってしまうのはおすすめできません。その理由は大きく2つ、
- ・貯金がなくなってしまうと、万一病気や失業などの緊急事態が起こったときに困る
- ・(奨学金を返済しながらも)どうしても旅行に行きたくなったときに、資金がなくなる
堅実なM美さんですから、仮に奨学金の返済分がなくなるとしたら、その分は貯金に回すとは思いますが、ほかにも年齢的なことも考えておきたいものです。結婚を考えていなくても、ふとした出会いで結婚話が進む可能性があるかもしれません。M美さんが利用している日本学生支援機構の奨学金の繰上げ返済制度は、期間短縮型のみ。月々の返済額を減額させる制度はなくはありませんが、通常は経済的な理由がなければ受付けてもらえません。
そこで、「早く返してしまいたい」「毎月の貯金をもう少し増やしたい」という2つの希望を叶えるために、一部繰上げ返済と、もう少しだけ節約を頑張ってもらうことを提案しました。
FPのアドバイス
「一部繰上げ返済」を定期的に行い、少しずつ完済日を早める
日本学生支援機構の奨学金では繰上げ返済する際の手数料は必要ありません。一部繰上げて払い込むと、その分残りの期間は短くなりますが、月々の返済額は変わらずそのまま続いていきます。つまり、月々払い続けながら、ある程度貯金が貯まったときやボーナス時に一部繰上げ返済を繰り返すことで、ムダな手数料なく少しずつ完済日を早めていくことができます。
取り急ぎ、いまの貯金の一部で繰上げ返済をすることにしましたが、少なくとも手取り月収の6カ月分(102万円)の貯金は緊急予備費として手元に残しておきたいため、15カ月分の元金(約19万5,000円)を繰上げ返済することにしました。
今後はボーナスが入ったときに12カ月分ずつ繰上げていきます。返済が進むにつれて返済月額に占める元金部分が大きくなるため、12カ月分の繰上げに対する払込額は進行状況に応じて変わりますが、おおよそ18万円~19万円程度です。
家計見直し
月々貯金に回す金額を少し増やすため、英会話費用を節約することにしました。キャリアアップを目指してぜひ勉強を続けて欲しいですが、実は仕事が遅くなったりと、結構休みがちになってしまうとか。そこで、チケット制もしくはスカイプでのスクールに変更。あとは海外ドラマを見て耳を慣らします。
また、医療保険も見直しをすることにしました。過度な特約を外し、最低限のシンプルな保障にすることで保険料を節約します。一人だから何かの時の医療費に備えてしっかり保障をと、堅実な考えですが、健康保険の高額療養費制度や傷病手当金があることを説明したら納得していただけました。
今回の家計簿チェックでM美さんへの家計簿見直し提案はこのようになりました。
もともと節約家のM美さんですが、家計見直しの機会に、週末は図書館に通うなどしながら光熱費や水道代の削減にトライしたり、美容院でサービス内容を変更して料金節約にチャレンジするそうです。
月々の貯金はこれまで通り定期預金に積み立てる分と、増やした1万円のうち半分は投信積立てにトライします。早く完済してしまいたいという希望が強いだけに、すぐに現金化できる貯金では、返済が終わってしまうまで繰上げ分に回してしまい、将来の夢を叶えるための資金づくりとして残らない可能性があるからです。
また、完済を早くすることばかりが頭にあると、完済後に反動でお金を使いすぎる可能性もあります。誰にでもおすすめできる方法ではありませんが、価格変動がある投資商品なら、完済後にもお金の使い方にさらに慎重になることができるでしょう。
それから、時々は息抜きとしてプチ贅沢をすることもおすすめします。
(※本ページに記載されている情報は2019年6月28日時点のものです)