老後資金の準備として上手く活用したいiDeCo。これまでにも何度か加入対象者を広げる改正が行われていますが、2022年5月からは加入可能年齢の上限が上がり、さらに対象者の範囲が拡大されました。そこで本記事では、今回の改正の内容を説明するとともに、若い世代が考えておきたい資産形成の方法について解説します。
iDeCoが65歳まで加入可能に!
これって若い世代には関係あるの?
2022年7月21日
そもそもiDeCoはどんな仕組み?
iDeCoはひとことで言えば、毎月の拠出額と運用商品を自分で決めて、原則60歳まで掛け続け、原則として60歳以降に年金または一時金として受け取る私的年金制度です。今ではiDeCo(イデコ)という愛称で親しまれていますが、正式には「個人型確定拠出年金」といいます。
毎月拠出できる金額の上限(年間上限額)は、自営業者か、会社員か、公務員か、または専業主婦かなどによって異なります。詳しく知りたい方は、「老後のお金を効率的に貯めるなら、iDeCoに挑戦してみよう」の記事もぜひチェックしてみてください。
この記事のなかでも説明しているように、所得税の控除を受けられたり、運用益が非課税たっだり、年金を受け取るときの税金が優遇されたりと、「拠出時」、「運用時」、「受取時」と、iDeCoに加入してから受け取るまでずっと税制上のメリットがあります。
2022年5月からどう変わる?
2002年1月にiDeCoの制度が始まってから、加入できる人の範囲が広がったり、月単位だけでなく年単位で拠出出来るようになったりと、これまでにも何度か改正されてきたiDeCo。2022年に入ってからも受給開始時期の上限がこれまでの70歳から75歳に延長されています。老齢給付金の受給開始時期について「原則60歳以降に」と前述しましたが、60歳から75歳までの間で、自身で選択することができるようになっています。
そして、2022年5月からはiDeCoに加入できる人の年齢範囲および対象がさらに拡大されました。新たに加入できるようになったのはどのような人か確認していきましょう。
60歳以上65歳未満の会社員・公務員
これまでiDeCoは原則60歳まで拠出を続け、60歳になったら年金(または一時金)受給権が発生するという制度でした。というのも、iDeCoは公的年金である「国民年金」の被保険者であることが加入条件のひとつ。本来、国民年金の加入は60歳までですので、その後はiDeCoにも加入できないということになっていたのです。
一方で、定年年齢の引き上げなどで60歳以降も働き続ける人も増えています。会社や役所等で働く人は60歳以後も厚生年金に加入するため、国民年金第2号被保険者という立場が継続されます。このような社会の動向に合わせ、60歳を過ぎても65歳までiDeCoに加入できるように改定されました。60歳以降も働き続け、給与、厚生年金アップ、私的年金アップと老後資金への対策が期待できるのは嬉しい改定ですね。
60歳以上65歳未満の国民年金に任意加入している人
60歳以降に国民年金に任意加入している人も対象になります。国民年金の任意加入とは、60歳になった時点で国民年金への保険料納付期間が最長の480月(40年)に達しておらず、「任意で」60歳以後も国民年金保険料を納付し続けるという制度です。納付期間を増やすことで受け取る年金も満額に近づけることができます。
今回の改正により国民年金に任意加入している人は、iDeCoも65歳まで引き続き加入できるようになりました。それによって老後資金を増やすことが期待できます。
海外に居住している人で国民年金に任意加入している人
国民年金は原則として「日本に居住している人」を対象にしている制度です。つまり、20歳~60歳の日本人であっても海外居住している人は加入義務がありません。一方で、海外に居住しながら「任意で」日本の国民年金に加入することはできます。海外居住していて日本の国民年金に任意加入している人は日本の国民年金保険料を払い続けるのです。
ここで、iDeCoの話に戻りましょう。これまでのiDeCoの制度では、海外居住者は加入できないことになっていましたが、今回の改正により20歳~65歳の海外に居住している国民年金任意加入被保険者は新たにiDeCoに加入できるようになりました。生き方が多様化している昨今、長い人生のなかでは生活拠点を日本だけでなく海外に置く人も増えています。これらの人にとって自ら老後年金を増やすためにiDeCoに加入できるようになったのは嬉しいことかもしれません。
老後はまだまだ先のこと。若い人には関係あるの?
今回の改正内容を見ると、60歳~65歳の人を対象にしたものが多く、若い人にとっては関係なさそうに思う人もいるかもしれません。しかしながら高齢期における労働環境は確実に変わってきています。また2022年4月に公的年金の受給開始時期の選択肢が60歳~75歳まで拡大されたことなどをみてもわかるように、私たちは長生き社会への対応を迫られています。
そうであると、今回の改正は60歳を過ぎて急いで資金形成に努めるのではなく、若い世代だからこそ、じっくり時間をかけて、老後に向けたマネープランおよび資産形成に努めた方がよいということを教えてくれているとも読み取れます。
どこで、どのように生活していても、おそらく、老後に頼りになるのは若いうちに自ら準備した老後資金であるはず。個々の事情に合わせ、前向きに長生き社会に対する老後資金準備をしていきましょう。
(※本ページに記載されている情報は2022年6月12日時点のものです)