人生100年時代を見据え、金融庁が2019年6月はじめにまとめた資産形成を促す報告書によると、95歳まで生きるには夫婦で約2,000万円の金融資産の取り崩しが必要になると発表がありました。2,000万円という大きな数字に不安を感じ、「少しでも早く老後の資金を貯めていかないといけない・・・」ということは分かるけれど・・。一方で、「自分にとってどれくらい貯める必要があるのか、どのように考えたらいいのかわからない。」という人も多いのではないでしょうか。今回は、そのような人に自分の場合にはいくら準備が必要か、3つのステップでお届けします。
老後2,000万円不足するってホント?
正しい老後資金の考え方
2019年6月17日
<ステップ1> 老後のお金、どのくらい必要?
よく雑誌やテレビで特集される老後資金。人生100年時代を見据え、金融庁が2019年6月はじめにまとめた資産形成を促す報告書によると、95歳まで生きるには夫婦で約2,000万円の金融資産の取り崩しが必要になるとのこと。さらには、ゆとりある老後を送るには必要なお金は1億円以上とも言われています。必要な老後資金は、自分がどのような場所で、どのような生活を送りたいのかによって変わってきます。自分の場合はどうなのか考えてみましょう。
どんな生活を送りたいかを想像して
まずは自分の老後の生活を想像することから始めましょう。
老後は結婚しているのか、それとも独身なのか。都会に住みたいのか、郊外に住みたいのか。のんびり暮らしたいのか、一年に一度は海外旅行に行きたいのか。どのような生活を送りたいかによって、必要となる資金が違ってきます。
また、持ち家か賃貸かによっても毎月の支出が変わります。賃貸の場合は、給与収入がなくなってからもずっと家賃を払い続けないといけないですし、持ち家の場合はリフォーム代が必要になることもありますね。
その他にも、車を買い替える費用や介護費用など支出が予測される資金をプラスしていくと、自分自身の老後に必要なお金を見積もることができます。
ちなみに、生命保険文化センターによる「平成28年度生活保障に関する調査」によると、夫婦二人で1カ月にかかる費用は、最低限の生活をする場合で約22万円、ゆとりのある生活をする場合で約35万円必要という結果となっています。
<ステップ2>老後の収入、何がある?
老後に必要な資金がわかったら、次は老後に入ってくる資金を考えていきます。
年金はいくらもらえる?
老後の収入で一番に考えられるのが公的年金です。
まずは日本の年金制度について見ていきましょう。日本の年金制度はよく「3階建て」に例えられます。
まず1階部分が国民年金です。日本に住む20歳以上60歳未満の人は全員、国民年金に加入することが義務づけられています。 40年間国民年金を納めた人が65歳から受け取れる老齢基礎年金は、平成30年の場合は1年間に約78万円です。
そして2階部分が会社員や公務員の人が加入する厚生年金です。女性にとって厚生年金は、給与や働いていた期間によって将来もらえる年金の金額が大きく違ってきます。厚生労働省が平成30年12月に発表した「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、女性の厚生年金受給金額の平均は年間で約130万円となっています。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の平均額を合計すると、年間で約208万円の収入になります。自分自身の年金の見込み額を知りたい場合は、日本年金機構のHPから「ねんきんネット」に登録すると、受け取れる年金の見込額を試算することができます。
仮に90歳まで生きるとすると、「1年間に受け取れる年金額×25年間」で生涯受け取れる年金額を計算できます。
年金の他に収入はある?
次に、3階の部分を考えていきましょう。
3階の部分は、自分自身で準備する部分になります。勤務先で加入している企業型確定拠出年金や企業年金、財形貯蓄や、自分自身で積立している資金などがあればプラスします。
また大きい収入予定として退職金や両親からの遺産相続などが見込まれる場合は、その金額もプラスしておきましょう。
不足分はいくら?
ステップ1で考えた老後に必要な資金と、ステップ2で考えてきた老後に入ってくる資金を比べて、不足分が出なかったらまずは安心です。現在行っている貯蓄方法をそのまま続けていけばOK。
しかし、不足が出た場合は、その不足分を今から上乗せして準備していく必要があります。
2019年6月3日に金融庁が、金融審議会四条ワーキング・グループによる「高齢社会における資産形成・管理」を発表したことで「老後は2,000万円不足するの?」と一部で大騒ぎになっています。でも、このように順序立てて考えていくと、自分にとっていくら不足しているのかを冷静に計算することができますね。
<ステップ3>どうやって貯めたらいいの?
不足の金額を、60歳から今の年齢をひいた年で割ると1年間で貯めていかないといけない金額がわかります。その金額を12カ月で割ると1カ月あたり上乗せして貯めていく金額になります。
もし、その金額を毎月上乗せすることが難しいのであれば、ボーナスを利用するなどで調整する必要があります。
仮にあと2,000万円貯めないといけない場合、30歳の人は毎月5.6万円貯めていけばいいですが、40歳になってから慌てて貯めようと思った場合、毎月8.3万円貯めないといけなくなります。
また、毎月の積み立てをもし2%で運用できたとしたら、30歳の人は毎月4万円、40歳の人は毎月6.8万円を積み立てることで目標に近づくことが可能です。
このように考えると、 少しでも早いうちに運用に取り組んでいくことが大切 だということがわかりますね。
勤務先で企業型確定拠出年金に加入している人は、マッチング制度があれば利用するのも一つの方法です。また、自分自身でつみたてNISAなどを利用するなど、少しでもおトクに積み立てていってほしいと思います。
人生100年時代と言われるようになり、長生きできるのはうれしいことですね。でも、その分老後の支出が増えるのはカンタンに想像できます。豊かな老後を過ごすために、3つのステップで準備を始めていきましょう。