会社の持ち株会を利用して、配当所得があるという方は多いと思います。配当所得には、通常約20%の税金がかかります。しかし、配当金の税金は、所得によりますが確定申告をして配当控除で節税できることも多いのです。会社員だと、確定申告をしたことがない方も多く、節税の仕組みや方法がわからない方もいらっしゃるかと思います。配当控除がどんな制度か、どんな場合に節税できるかについて一緒に考えてみましょう。
持株会の配当金は確定申告がおトク?
配当控除を知ってスッキリ解決!
2022年11月17日
配当控除とは?
まず、配当控除とはどんな制度なのでしょうか?通常、特定口座の源泉徴収ありの証券口座の場合、配当金を受け取ると所得税15%、住民税10%、プラス復興所得税の0.315%が自動的に源泉徴収されます。その税金を控除、つまり少なくすることができるのが配当控除です。給与所得や配当などの所得を合わせた課税所得が1,000万円以内の場合は、所得税10%、住民税2.8%を控除することができます。また、配当控除を適用するには、確定申告が必要でその際には「総合課税」を選択しなくてはなりません。なお、所得税率が20%を超える高額所得者は、配当控除の恩恵が受けられない点は注意点です。どういうことか、具体的に見ていきましょう。
配当控除の恩恵を受けられるのはどういう場合?
例えば、32歳の独身、給与収入350万円、配当収入20万円(他の所得はなし)の場合で、配当控除を受けるとどのくらいトクをするかをシミュレーションしてみましょう。確定申告前の配当金の源泉徴収額は、所得税3万円、住民税1万円です。
課税所得を計算
まず、課税所得を出します。上の早見表は給与収入に対する控除金額が分かるものです。給与収入が350万円の人は、給与収入の30%+8万円が給与所得控除の金額なので、
350万円×30%+8万円=113万円
350万円-113万円=237万円
ここに、配当所得20万円をプラスして、さらに、基礎控除、社会保険料給与を控除します。基礎控除は48万円、社会保険料は給与収入の約15%として、350万円×15%=52.5万円とすると、
237万円+20万円-48万円-52.5万円=156.5万円
156.5万円が、課税所得になります。
所得税率を確認する
課税所得が分かると、所得税率、つまりいくら所得税がかかるか分かります。上の表の所得税速算表によると、課税所得156.5万円の所得税率は5%なので、
156.5万円×5%=7万8,250円
年収350万円と配当収入20万円の場合の所得税は、7万8,250円となります。生命保険に加入している場合など条件により変わってきますのでおおよそです。
どのくらい節税できた?
次に、配当金だけの税金を見てみましょう。確定申告前の配当金の所得税は、20万円の15%で3万円ですが、確定申告をして給与所得と合算すると、税率が15%から10%が控除され、最終的に5%になるので、配当金にかかる所得税は1万円で、2万円の節税なります。
つまり、所得税率が10%以下である695万円未満の所得であれば、確定申告をして給与所得と配当所得を合算し、配当控除を受けると節税できるということです。
なお、住民税は、申告不要を選択するのがよいでしょう。確定申告しない場合の住民税は、20万円の5%ですが、確定申告して配当控除を受けると、住民税は一律10%なので、2.8%控除されてかかる税率は7.2%になります。よって、申告しない方が節税になります。ただし、所得税と住民税で申告するかどうかを別々に選択できるのは2022年までとなっていますので注意が必要です。
まとめ
配当控除は、確定申告をして給与所得などに配当所得を合算して税額控除できる制度です。課税所得が1,000万円以内であれば、10.25%の控除が受けられます。確定申告をしなければ、約20%の税金がかかりますが、所得税額が20%以内である課税所得が695万円以内であれば、確定申告をして配当控除を受けた方が節税になります。また、2022年分の申告分までは、所得税だけ申告、住民税を申告不要とすることができるため最大限の節税が可能です。もし、節税ができるという方は、確定申告をしてみてくださいね。
(※本ページに記載されている情報は2022年11月7日時点のものです)