2022年度から高校の家庭科で金融教育が始まります。新学習指導要領では、金融商品の理解を深め資産形成の大切さを学ぶカリキュラムになります。投資の必要性は浸透してきているものの、まだ学んでいる大人が少ないことも現状です。子どもに身近に感じてもらうためにも、まず大人が学びましょう。投資を学ぶ背景と必要性をお伝えしますので、一緒に学び実践してみましょう。
高校生から投資を学ぶ時代へ!
まず大人が学ぶにはどうしたらいいの?
2022年2月21日
なぜ投資を学ぶ必要があるの?
預金でお金が増える時代が終わったから
1980年頃は、金利が高い時代で銀行に定期預金で預けていれば10年で2倍になったと言われています。2022年現在のメガバンクの定期預金の利率は、0.002%です。預金としてお金を持っているだけでは、インフレ(インフレーションの略で物価上昇のこと)に対応できません。例えば、従来100円で買えた商品が、5年後に120円になっていたら、銀行の預金に100円入っていても購入できません。インフレが起こると、預金は目減りするのと同じということです。実生活でも、食品の値上がりなどで感じることは多いと思います。
ひとつの会社で勤め続ける時代が終わったから
現在の退職金の税制優遇は、ひとつの会社に長く働くことが前提となっていますが、今では、転職や起業・独立など多様な働き方を選択できるようになっていることもあり、税制優遇の恩恵を受けられる人が少なくなってきています。
収入が右肩上がりの時代が終わったから
(財務省HPより引用)
高度成長時代のように右肩上がりに給与が増えない状況です。上のグラフは、国税庁の調査による平均給与と伸び率の推移です。平成2年の平均給与は425万円、対前年伸び率は5.7%ありましたが、それ以降伸び率は低迷しています。なお、令和2年は、民間給与実態調査によると平均給与433万円、対前年伸び率は、-0.8%となっていて、給与が増えていないという状況が分かります。
さらに、給与は増えていないのに、税金や社会保険料の支払いは上昇傾向にあります。
(財務省令和3年度国民負担率より作成)
上のグラフによると、国民の所得に対しての税金と社会保険の負担率は、平成24年度は、39.8%であるのに対して、令和3年度は44.3%(見通し)です。収入の約半分近くが税金や社会保険に消えていくということが分かります。なお、昭和45年は、24.3%です。
もちろん、スキルアップをして収入を高める努力により可処分所得(自由に使えるお金)を増やすことは可能も必要ですが、収入だけに頼るのでなく、これからは自分で投資を学び、資産形成をすることが大切であることが理解できると思います。
金融商品とは?
では、高校で学ぶ金融商品とはどういうものなのでしょうか。ここでは、株式、債券(社債、国債)、投資信託、保険、預金を解説します。これらは、安全性、流動性、収益性という3つの視点から見てみると理解が深まります。それぞれが3つの視点のどの部分に当たるか考えてみましょう。
株式
企業が、株主から集めた資金に対して発行する証書のことです。私たち投資家は、株価が値上がりしたときに株式を売却すれば値上がり益を得られますし、企業が利益を出したときは、配当配当という形で利益の一部を受け取ることができます。しかし、企業業績が傾いてしまった場合、株価は下落し、配当減額、または無配当になることもありますので、注意も必要です。
安全性△ 株価の下落や企業の倒産リスクがあります。
流動性〇 売却日から3営業日後に換金できます。
収益性◎ 株価が上昇することで大きな収益を上げられる可能性があります。
債券
国や地方公共団体、企業等が、事業に必要な資金を借り入れるため発行する有価証券のことです。国が発行する債券を国債、企業が発行する債券は社債と言われています。定期的に利子を受け取ることができ、満期まで保有していれば、元本またはあらかじめ決められた金額を受け取ることができます。発行体が、日本をはじめ先進国であれば安全性が高いと言われていますが、国や企業の債券によっては、格付けが低い債券の場合があり、発行元が債務不履行になるリスクもあります。
安全性〇 格付けを参考に選べば安全度は高いです。
流動性△ 換金しやすいですが、個人向け国債のように1年は換金できず、中途換金の場合は2回分の利子を返還するといった規定のある債券もあります。
収益性〇 預貯金よりは高めですが、株式よりは低めです。
投資信託
株、債券、REIT(不動産投資信託)などのさまざまな金融商品を組み合わせた商品です。組み合わせの中身によって安全性や収益性は変わってきます。株式の比率が高い投資信託であれば、安全度は低くなり、収益性は上がりますし、株式と債券をミックスした投資信託もあります。個別の株式よりは、さまざまな資産を組み合わせているので、ひとつがダメでも他の資産がカバーしますので、安全度は高くなります。
安全性△~〇 投資信託の中身によります。
流動性〇 商品によって4~6日かかる場合がありますが換金しやすいです。
収益性△~〇 株式より低めですが高い収益もねらえます。
保険
病気やケガ、死亡、事故などの他、火災や地震などの災害、第三者への損害賠償責任の負担などさまざまなリスクに備える金融商品です。
保険会社は、契約者から受け取る保険料を運用して保険金や給付金、解約返戻金などの支払いに充てています。その際に約束する利率(予定利率)というものが決まっています。近年は、低金利のためこの予定利率が下がっていますので、収益性は低くなっています。
安全性△~〇 保険会社の格付け等を参考に安全性の確保は可能です。ただし、外貨建て保険であれば、為替リスクがあります。
流動性× 貯蓄型保険の場合、加入期間が10年以上など一定期間経過しないと元本割れします。
収益性△~〇 預金よりは収益性は高めです。外貨建ての場合、その通貨の価値が値上がりしていると収益が高くなります。
預金
私たちが金融機関に預けている預貯金のことです。万が一銀行が破綻しても、預金保険制度に基づき、元本1,000万円とその利息は保証されます。
安全性〇 元本はほぼ保証されますので、安全性は高いです。
流動性〇 普通預金であればATMなどでいつでも換金可能です。
収益性× 利息が支払われますが、低金利のため収益性の期待はできません。
預金は、安全性が高いと言われていましたが、先程もお伝えした通り、インフレが起こると預金は減っているのと同じですので、そういう意味では必ずしも安全とは言えなくなってきているでしょう。
大人は何から始めたらいいの?
これまで、投資の必要性と金融商品の解説をしてきましたので、次は実践してみましょう。大人がまず実践することで理解が深まり、子どもにとっても投資が身近なものに感じるでしょう。
投資初心者にとって始めやすい投資とは?
まずは、投資信託の積立てから始めてみましょう。投資信託は、先ほどもお伝えした通り、株や債券などの金融商品を組み合わせたものですから、どれかがダメでも、他の資産がよければ価格は上昇する可能性が高いので、リスクを抑えた商品があります。
また、ドルコスト平均法と言って、毎月のように一定期間ごとに、定額を買付けでき、時間をかけて運用する方法を取れば、経済の成長とともに価格が値上がりし、その恩恵(収益)を受けることができます。投資信託の価格が安いときも高いときも買うことになりますが、買うタイミングを考えなくて済みます。投資信託の積立ては、少額から(証券会社によっては100円から)でもできますので、投資の練習をするにはハードルが低いでしょう。
ドルコスト平均法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
まずは、少額からでも実践してみて体感することが大切です。
まとめ
投資を学ぶ必要性と、金融商品の特徴を解説しました。
初めて投資をするには、投資信託をドルコスト平均法で運用していくことがハードルが低いです。まずは、少額からでもいいので実践してみましょう。子どもがやってみたい場合は、子どものおこづかいの一部を運用に回して、値動きを一緒に見てもいいかもしれないですね。
(※本ページに記載されている情報は2022年1月24日時点のものです)