2022年に入り、年金、税金、子育て、資産形成など、お金にまつわる制度の改正が続々と行われることをご存じでしょうか。本記事では、2022年のお金の制度改正をまとめて紹介します。知らないと損することや、知っておくと得することなど、2022年に入った今、早速さまざまな改正について確認しておきましょう。
【2022年改正】お金制度はどう変わる?
要点をまとめて紹介
2021年12月30日
「年金」にかかわる改正
まずは2022年に行われる年金制度の改正について紹介します。年金なんてまだまだ先の話……などと言わず、何がどう改正されるのか確認してみましょう。自分に関係あるものもあるかもしれません。
在職老齢年金改正(2022年4月から)
2022年4月から在職老齢年金の支給停止の基準額が変わります。
在職老齢年金とは、60歳以降、厚生年金に加入しながら(働きながら)受け取る老齢厚生年金のことです。労働による収入があることから、本来受給できる年金の額が給料や賞与の額に応じて減額され、場合によっては全額支給停止になることもあります。
今回改正となる基準額というのは、「年金の基本月額(年金月額)と総報酬月額相当額の合計」のこと。受給している年金額と給料の合計額、つまり(他の収入がなければ)ひと月の収入額と考えるとわかりやすいかもしれません。現在の年金受給者のなかには60歳から受給している人もいて、60歳以上65歳未満で受給している人の基準額は28万円。これが47万円へ引き上げられ、労働収入が多くなっても年金を下げられる人が少なくなります。
公的年金繰り下げ最長年齢が75歳に(2022年4月から)
同じく2022年4月から改正されるのが、公的年金の繰り下げ最長年齢です。
基本的に65歳から受給開始となる老齢年金は、65歳でもらわずに66歳以後の任意の時期からもらい始めることができます。現行では最長70歳まで繰り下げが可能ですが、2022年4月からは最長75歳まで繰り下げできるようになります。
もらう時期を先延ばしにすることで、1ヵ月繰り下げるごとに年金額が0.7%ずつ増えます。そのため現行では最大42%(0.7%×60ヵ月)の増加ですが、改正後は最大84%(0.7%×120ヵ月)増加させることも可能です。
厚生年金の加入対象者拡大(2022年10月から)
2022年10月からパートやアルバイトなどで働く人の社会保険の加入条件が変わり、社会保険の加入対象となる人が増えます。
自分で加入するとなると、給料から社会保険料が差し引かれ、手取り収入が減ります。家計支出の見直しを求められる人もいるでしょう。しかし、将来もらえる自分自身の厚生年金が増えるのは好ましい動きです。
改正により、次のすべてに該当する人は社会保険加入対象となります。
- ・週の所定労働時間が20時間以上
- ・月額賃金が8万8,000円以上
- ・勤務期間(見込み)が2ヵ月以上(←これまでの1年以上から改正)
- ・従業員101人以上の企業(←これまでの501人以上から改正)
- ・学生ではない
なお、2024年10月にはさらに対象者が拡大されることが決まっており、従業員51人以上の企業に勤める人も加入対象となります。
iDeCo/企業型DC改正(2022年10月から)
会社で「企業型確定拠出年金(企業型DC)」に加入している人は、会社の労使の合意がない限りiDeCoに加入することができませんでした。2022年10月からは、この労使合意要件がなくなり、企業型DCに加入している人でもiDeCoに加入できるようになります。
この場合のiDeCoの掛金は、「企業型DCとiDeCoを合わせて月額5万5,000円」以内である必要があります。自分の掛金額がわからない人は、会社の担当者に確認してみましょう。
「子育て」にかかわる制度改正
児童手当改正(2022年10月から)
中学生までの子どもがいる世帯に子ども・子育て支援として現金が給付するされる児童手当。2022年10月支給分から世帯主の年収が1,200万円程度を上回る世帯への支給が廃止されます。現在も、年収が一定額以上になると給付額が少なくなります(特例給付)が、次の改正内容とともに、あらためて子どもの年齢および世帯主の収入ごとの児童手当の金額を確認しておきましょう。
産後パパ育休制度の創設(2022年10月から)
現在、育児休業は男性・女性に関係なく取得できますが、産休は女性のみ。2022年10月からは「産後パパ育休制度」が創設されます。
産後パパ育休制度は、育児休業の取得とは別に、「子の出生後8週間以内」に「4週間まで」取得可能です。
産後パパ育休制度で休業したときの手当は、現行の育児休業給付(180日間までは給料の約67%)の対象となる見込みです。
「税金」にかかわる制度改正
退職金にかかる税制改正(2022年の支給分から)
退職金をもらったときの税金は、退職金額から退職所得控除額を差し引いた残りの2分の1に対してかかります。しかし、2022年から支給される退職金について次の2つを満たす場合は課税方法が変わります。
- ・退職金額が300万円超
- ・勤続年数5年以下
この場合、300万円を超える部分については「退職所得控除額を差し引いた残りの2分の1」という適用がなくなります。勤続5年以下で300万円を超える退職金をもらえるケースは少ないと考えられますが、もしも該当する人は退職金にかかる税金が増えることになります。
ふるさと納税の確定申告簡素化(2022年の確定申告から)
2022年の確定申告分から(2021年にふるさと納税した分から)提出書類が簡素化されます。
これまで確定申告書に添付が必要だった自治体発行の「寄付金受領証明書」が不要となり、特定事業者(ふるさと納税ポータルサイト運営者)が発行する「寄付金控除に関する証明書」1枚だけの添付でよくなります。このことにより、複数の自治体にふるさと納税をして確定申告をする人の手続きが簡単になります。
「資産形成」にかかわる制度改正
成年年齢引き下げに伴う高校教科書(資産形成)改正(2022年4月から)
2022年4月から成年年齢が現行の20歳から18歳へと引き下げられます。これに伴い、2022年度に始まる高校家庭科の学習において、家計管理の一部として「資産形成」の内容が加わります。
単に「買い物をする際の注意点」や「収入と支出のバランス」といった内容だけでなく、「さまざまな金融商品を理解すること」や「進学、住宅取得、老後などのライフイベントとお金の関係」「病気や失業などのリスクに対する備え」、「これらを見通すライフプラン」などが新学習指導要領に含まれます。
2022年のお金の制度改正内容を知って、今後の働き方や資産形成につなげよう
2022年に実施されるお金に関する制度改正をいくつか紹介しました。これらの改正が自分自身に関わるかどうかは人によって異なりますが、大切なのはどのような改正が行われるかを知り、これからの社会の方向性を理解すること、そしてその方向性に向かって将来のマネープランを立て、対策を取ることです。
たとえば、今回の年金の改正を見ると、「人生100年時代」や「生涯現役」が現実になりそうなイメージを持つこともできます。そう感じたら、高齢になっても働けるような技能磨きや老後資金準備が必要だと思えるでしょう。そのために、できるだけ早いうちから資産運用や、さまざまな金融商品で資産形成に努める。これを高校生のうちから学ぶようになるのです。 すでに社会に出ている皆さんも、今回の改正を自分ごととしてとらえ、行動に移していきましょう。
(※本ページに記載されている情報は2021年11月27日時点のものです)