現在、認知症に備える保険への加入を検討する人が増えており、各保険会社もさまざまな商品を販売しています。ただ、加入を検討する際には、その商品の概要はもちろんのこと、加入することで得られるメリットやデメリットをよく理解しておく必要があります。
やっぱり必要?
認知症に備える保険について
2021年9月17日
認知症の状況
65歳以上の認知症患者数は増加傾向にあり、内閣府の高齢社会白書によると2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。また、介護が必要となった人の原因の第1位が認知症であることや、その費用についても(認知症でない人と比べて)2倍以上かかるとする試算もあり、認知症に備える保険の需要が年々高まりつつあります。
認知症保険とは?
認知症保険というと、新しい保障の分野と思われがちですが、実際には民間の介護保険でも既にカバーされている分野です。
認知症保険の商品性
現在の民間の介護保険では、以下のような介護保障を用意しています。
1.日常生活の動作において、介護が必要となった際の保障
2.認知症と診断され、自分が置かれている状況を認識できなくなった際の保障
3.公的な介護保険と連動して給付を行う保障
上の2番目の保障だけを取り出し、個別の保険として販売しているのが「認知症保険」といわれています。
認知症保険の種類
認知症保険については複数の保険会社が取り扱っており、単体で加入できるものと、医療保険などに「特約」として付加できるものとの2種類があります。受け取ることができるのは、認知症と診断された際の一時金と、症状が一定期間継続した場合の給付金という組み合わせが一般的です。給付金は、一時金で受け取るものが多く、年金で受け取るタイプや年金と一時金の両方で受け取るタイプも用意されています。
加入の際にも健康な人を対象とした「標準型」と、入院歴や持病のある人を対象とした「引受基準緩和型」があり、持病があっても加入しやすくなっていますが、「引受基準緩和型」の場合は標準体と比べると保険料が高めに設定されているという特徴があります。
自分のリスクを理解する
認知症保険を考える際のポイントは、その給付金をどのような場面で使用するかです。認知症の治療費や介護の初期段階にかかる費用に備えることが目的なのであれば、診断時にまとまった一時金が受け取れる保険を選ぶべきです。逆に年金形式での受け取りを選ぶケースは、介護を含む認知症にかかった後の継続的に発生する費用に備えることが目的となります。
認知症だけの保障で十分なのか、それとも認知症だけではなく、認知症を含む介護費用を広く保障したいのかを考えることが大切だといえます。
押さえておきたいメリットとデメリット
認知症保険に加入する際には、その保障範囲だけではなく、保険に加入する際のメリットそしてデメリットについてもしっかりと理解しておく必要があります。
認知症保険のメリットとは?
認知症保険のメリットは、通常の介護と比較して費用がかかるといわれる認知症を伴った介護に、費用面で安心して対応できるということです。また、認知症を発症するリスクは誰にでもあるにもかかわらず、軽度のうちは診断が難しいとされており、発症に気づいた時点ではある程度進行しているケースが多く見られます。そのために、家族は突然の認知症と向き合うことになり、診断されたというだけでも大きい精神的負担の中、費用面が保険でカバーできるということは非常に心強いと言えるのではないでしょうか。
従来は幅広い保障のある介護保険が主流となっていましたが、最近では、特定の保障だけに特化した保険の需要が高まっています。少しでも健康に長生きするための保険として、認知症保険は活用できるといえるでしょう。
認知症保険のデメリットとは?
認知症保険は支払い要件のハードルが高く、厳密な規定があります。給付金の支払い要件は保険会社によって異なりますが、多くの認知症保険が、「器質性認知症」と診断されることを要件としています。その他にも、給付金の支払い要件には以下のようなものがあります。
・認知症として診断された後、「所定の認知症が180日間継続した場合」
・認知症として診断され、かつ、「自立度ランクⅢ以上」かつ「要介護1以上の認定」の全てを満たす場合
・認知症と診断され、「要介護1以上」と認定された場合 など
また、保険会社の中には軽度認知障害と診断された際に一時金が支払われるものもありますが、総じて給付金を受け取る要件が厳しい点がデメリットといえるでしょう。
認知症予備軍といわれる「軽度認知障害」とされる人は、現在約400万人にも上るといわれています。さらに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、その予備軍の数は急激に増えるのではないかと予測されています。こうした背景からも認知症保険のニーズは高まっていますが、認知症保険に加入する際には「軽度認知障害」が保障の対象であるかどうかを確認するようにしましょう。
また、このような保険以外にも、認知症への備えとしては、遺言や信託などさまざまなものがあり、それぞれに使いやすさや使いにくさがあります。自分が認知症となった際に、できれば家族に迷惑をかけたくないと思うのが自然でしょう。どのような方法が自分に合っているのかを考え、さらに保険商品を選択する際にはその商品の特性を理解し、さらにはメリットやデメリットをきちんと確認してから加入するようにしましょう。
※本ページに記載されている情報は2021年8月17日時点のものです。