起業家には、会社に勤めながら副業として起業している方と会社を辞めて起業している方がいます。会社を辞めて起業している場合、退職金がないことや将来の年金額に不安を感じてしまう方もいるでしょう。そんな方が活用できる制度として知っておきたいのが、小規模企業共済です。将来の退職金あるいは年金への備え、節税に役立つ小規模企業共済についてご紹介します。
女性起業家が知っておきたい小規模企業共済
将来への備えと節税対策
2021年8月6日
小規模企業共済制度とは?
起業の目的はいろいろ
女性が起業するときの目的は、人によってさまざまです。
・自由な仕事のスタイルを実現したい
・これまでの仕事の経験や新しく取得した資格を生かしたい
・収入を増やして家計をよくしたい
・性別や年齢にとらわれない働き方をしたい
・社会貢献したい
起業後に目的が変わるケースもありますが、家計をよくしたい=収入を多くしたいと思う方は少なくありません。節税を兼ねて将来への備えをしておきたいと思う方もいるでしょう。
退職後に備えられる制度
小規模企業共済制度とは、簡単にいうと「節税しながら退職金の備えができる制度」です。
小規模企業経営者や個人事業主、会社等役員のための積立制度ですが、名称からはイメージしにくいと感じた方もいるのではないでしょうか。例えば、個人年金のようなものと考えるとわかりやすくなります。
小規模企業共済では、掛金が全額所得控除の対象となるため、節税できます。ただし、所得控除の対象となるため、掛金を事業の必要経費や損金には算入できません。
小規模企業共済制度は元本保証される?
掛金は月1,000円から
小規模企業共済の掛金は、月々1,000円~70,000円まで500円単位で決められます。収入の変化などに合わせて、掛金を増やしたり減らしたりすることも自由です。
掛金は、預金口座から振替されます。月払いのほか、半年払いや年払いも選択できる点が国民年金保険料と同じで、親しみやすいと感じられるかもしれませんね。
起業した方が小規模企業共済を利用する大きなメリットの一つとして、貸付制度の利用も挙げられます。低金利で貸し付けてもらえるだけでなく、緊急経営安定貸付や傷病災害時貸付など、さまざまな種類の貸付制度が用意されています。
任意解約しなければプラスに
小規模企業共済で積み立てた退職金の受け取りは、一括が基本です。しかし、一定の要件を満たせば分割(年金)も選べます。固定額の共済金として受け取れるのですが、普通預金で将来に備える場合に比べ高い利回りで増やせます。
一括で受け取り退職所得扱いにすれば退職所得控除を使え、高い節税効果が得られます。分割にすると年金の上乗せのイメージになり、ゆっくり安心して受け取れます。65歳未満で中途解約すると一時所得の扱いとなります。
なお、20年未満で任意解約すると掛金合計額を下回る(元本割れ)点に注意が必要です。20年以上の受け取りであれば、プラスとなった共済金を受け取れます。中途解約するつもりがないのであれば、元本保証のイメージで利用できる制度です。
iDeCoや国民年金基金との違いは?
iDeCoは60歳前に解約できない
将来に備えながらの節税対策を考える場合、小規模企業共済だけではなくiDeCoや国民年金基金の選択肢もあります。それぞれとの違いを簡単に説明しましょう。
iDeCoを利用する場合も、小規模企業共済と同じく小規模企業共済等掛金控除として所得控除を受けられます。ただし、iDeCoの受け取りは年金としての確定年金のみです。60歳より前での中途解約ができない点にも注意が必要。
iDeCoでは、掛金を払った後に自分で選んだ預金や投資信託などの商品で運用します。運用成績がよければ給付額を大きくできる可能性があります。
国民年金基金は年金給付額が確定している
国民年金基金は、終身年金と確定年金の組合せで利用でき、年金給付額が確定している点が大きな特徴です。小規模企業共済等掛金控除ではなく、社会保険料控除として所得控除が適用されます。同一生計の親族分も合算可能です。
なお、iDeCoと国民年金基金を利用する場合の掛金にも上限があり、個人事業主等の場合は合算で月額68,000円までです。
iDeCoや国民年金基金、小規模企業共済は併用できます。それぞれ上限の68,000円、70,000円までのため、合算で月138,000円までとなります。
小規模企業共済の大きいメリットは節税効果にあります。起業して間もなくて収入が低く、長期的な目線での備えが考えられない段階では「そういうのがあるらしい」くらいの知識を持っておくくらいで十分かもしれません。
しかし、起業後の収入が安定してきて「節税を考えたい」「将来に備えるお金に回したい」などの気持ちが出てきたら利用を検討する価値があります。事業計画やライフプランに合わせ、iDeCoや国民年金基金などとともに検討してみてはいかがでしょうか。
※本ページに記載されている情報は2021年7月26日時点のものです。