あおり運転などの危険運転が社会問題となり、注目視され始めた「ドライブレコーダー特約」。あおり運転の対策としてはもちろんのこと、事故発生時にどのように役立ち、保険料にどう影響するのかを解説するとともに、他にもある万一の際に役立つ損害保険や特約についても紹介します。
ドラレコ特約は必要?
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2021年7月7日
あおり運転に対する罰則とは?
2020年、道路交通法の改正により、あおり運転は「妨害運転罪」として正式に取り締まりの対象となりました。車間距離不保持、急ブレーキ、割り込み、幅寄せや蛇行運転などをすれば、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」の罰則を受けることになります。また、高速道路であおり運転を行い、車両の停止や衝突事故を起こせば、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられます。行政処分として、いずれも一度の違反で「免許取り消し」となり、欠格期間として2年から3年(最長10年)が設けられることになるなど、罪の重い行為とみなされます。
ドライブレコーダー特約とは?
自動車保険の「ドライブレコーダー特約」は、保険会社が契約者にさまざまな機能を搭載したドライブレコーダーを有償で貸与するものです。したがって、自分が選んだ市販のドライブレコーダーでは加入できないということをしっかりと認識する必要があります。そしてこの専用のドライブレコーダーにより、事故時の映像の記録はもちろんのこと、事故受付センターへの自動連絡などを行います。
取り扱い保険会社は2021年3月末時点において国内大手保険会社の4社で、通信販売型自動車保険では取り扱いがありません。そしてこの特約の内容は、各保険会社に共通する部分と異なる部分が存在します。
共通する内容
・保険会社に月額650円~850円程度を支払い、貸与されたドライブレコーダーを車内に設置する
・事故等発生時、直後に事故受付センターに自動連絡される
・事故発生直後からの録画映像が保険会社に送信される(※契約者の許可後、送信する会社もある)
・危険運転、わき見運転などへのアラート機能が搭載
・安全運転診断を行う
各保険会社独自のサービス
・事故発生時、事故受付センターとドライブレコーダーにて通話可能となる
・駐車中にも監視機能がある
・あおり運転発生時にドライバーからSOS発信できる
・提携警備会社の駆け付けサービスが付帯している
・家族の見守りサービス(事故時の通知、走行距離など)が付帯している
・安全運転スコアをクリアすることで翌年の保険料が割引となる
・契約4年目以降の特約保険料が割引となる
あおり運転に限らず、事故発生時に保険会社へ自動通報される点は非常に心強く、保険会社によってはそのままドライブレコーダーで通話できる機能もあります。また、自動通報だけでなく、ドライバー側からのSOS発信も可能で、衝撃を感知しない場合でも通話や映像の送信を行うサービスもあります。
状況が映像で記録されることで、事故後の示談交渉においても、円滑に進むことが期待できます。
ドラレコ特約のメリット・デメリット
上に挙げた以外のメリットとして、「事故発生直後の事故対応」が挙げられます。通常の場合、事故を起こした際は気が動転してしまうなど、正確な状況を伝えることが難しいケースが多いですが、GPS機能により事故発生現場の正確な地点を捉えることができ、緊急車両の手配もいち早く完了します。
また、運転者に役立つのが安全運転診断機能です。この機能は走行時に危険を察知してアラートを発するほか、日常の運転を記録し、急加速、急ブレーキ、速度超過などの運転を診断してスコア化するものです。スコア化することにより、運転者が日頃、実際に安全運転ができているか客観的に知ることができます。さらに、ドライバーの安全運転の判定により、保険料の割引を行う保険会社もあります。
一方、デメリットとしては「ランニングコストの高さ」があげられます。例えば月額850円の場合は年払いにすると1万円以内に収まるとはいえ、最近では1万円前後で買えるドライブレコーダーも多くあります。ただし、画質を求めると価格は高くなります。ドラレコ特約によって最新レコーダーと万一の場合の安心が得られることに価値を感じるのであれば、検討の余地はあるのではないでしょうか。
悪質ドライバーに対応する自動車保険と特約
あおり運転などの結果、当て逃げにより相手方が逃走してしまう、または相手が任意保険未加入で損害が賠償されないなどのケースも想定されます。そのような場合には、には、ドラレコ特約とは関係なく、自分の任意の自動車保険から次のような補償が受けられます。
無保険車傷害保険
任意の自動車保険では無保険車傷害保険が自動付帯となっているものがほとんです。これは当て逃げなどで相手が分からない、または相手は分かるが保険に入っていない、または満足な補償を得られないなどの場合に保険金が支払われるものです。死亡、後遺障害時の補償となり、保険金は上限2億円が一般的ですが、なかには無制限という保険会社もあります。なお、記名被保険者と配偶者、その同居家族、別居の未婚の子であれば契約車両に搭乗中以外(他の車に乗車中や歩行中)でも補償されるのが一般的です。
人身傷害保険
任意加入である人身傷害保険は、補償の対象となる人が死傷した場合に過失の有無に関係なく治療費や休業損害などを補償するものです。当て逃げや相手が自動車保険に入っていないという場合でも死亡、後遺障害はもちろん、治療費や慰謝料の支払いも受けることができます。
また、相手が保険加入していた場合の事故でも、過失割合にかかわらず、保険金額を上限として損害分が補償されることが特徴です。
基本的に契約車両に搭乗中のみ補償となりますが、タイプにより他の車などの乗り物に搭乗中、歩行中も補償されるものもあります。
弁護士費用特約
弁護士費用特約は、付帯を自由に決められる補償ですが、最近ではあおり運転などの世相を反映し、注目度が増しています。ある保険会社では契約者の64.5%がこの特約を付帯しているというデータがあります。この弁護士費用特約で補償されるのは、弁護士報酬、法律相談費用、訴訟費用などです。
弁護士費用特約は年間2,000~3,000円前後で1事故あたり300万円までの訴訟費用をまかなうことができるため、もしものことを考えて加入しておくと安心でしょう。
ドライブレコーダーが搭載されているかがポイント
ドラレコ特約は基本的に保険会社から貸与されたドライブレコーダーを取り付ける必要があることから、現在既にドライブレコーダーが搭載されているのであれば、あえてドライブレコーダー特約付きの保険に加入し直すよりも、人身傷害補償保険、弁護士費用特約などで補償の充実を図るほうが合理的かもしれません。
一方で、これからドライブレコーダーを取り付けるタイミングであったり、事故発生時の備えをより万全にしたい、安心を買いたいという場合には、ドライブレコーダー特約のある保険会社を選択し、各社独自の機能を比較して最終的に決めることがポイントとなります。
※本ページに記載されている情報は2021年6月20日時点のものです。