人生100年時代の到来を背景に、個人のライフプランに対する考え方が変わるとともに、2020年度の税制改正についてもそれらを踏まえたものが多く見られます。その中でも、私たちの暮らしに影響するものとその内容について、もう一度しっかりとみていきましょう。
もう一度おさらい!2020年度の税制改正で
私たちの暮らしに影響するものは?
2020年11月11日
未婚のひとり親に対する税制上の措置と寡婦(夫)控除の見直し
2020年度の税制改正で大きく変わった「未婚のひとり親に対する税制上の措置および寡婦(夫)控除の見直し」について、その概要とポイントについてまとめてみました。
1.概要
合計所得金額が500万円以下のひとり親であれば、婚姻歴や性別にかかわらず、総所得金額から同一の控除を受けられるようになりました。ただし、現に婚姻をしている人、また住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(見届)」と記載がある事実婚の人は対象外となります。
所得税控除額
(1)生計を一にする一定の子がいる単身者:35万円
(2)子以外の扶養親族がいる単身者:27万円
(3)上記以外の寡婦の控除額:27万円
住民税控除額
(1)ひとり親控除額:30万円
(2)寡婦控除:26万円
これに伴い、現行の寡婦、寡夫、単身児童扶養者(児童扶養手当を受給している18歳以下の児童の父または母)に対する個人住民税の人的非課税措置が見直され、ひとり親および寡婦が対象となります。
これらの適用時期については、所得税は2020年分以後から、住民税については2021年度分以後からとなります。
2.ポイント
(1)婚姻歴のないひとり親に、離別・死別の寡婦(夫)と同様の寡婦(夫)控除が適用されます。
(2)男性のひとり親の控除額・所得制限が、女性のひとり親と同等になります。
(3)寡婦控除は婚姻歴や性別にかかわらず、扶養親族が子の場合は35万円、それ以外の場合は27万円となります。
雑所得(副業等)の所得金額計算と確定申告のルール化
これまで、白色申告者で帳簿等の保存を行わなければならないのは、不動産所得・事業所得・山林所得のある人のみでした。しかし、副業の増加などにより、雑所得の適正な課税を行うという目的から所得金額計算や手続きが見直されることとなりました。
1.概要
副業などによる所得がある人は、以下のルールに従って確定申告が必要です。
(1)その年の前々年分の雑所得の収入額が300万円以下の場合
現金主義による所得計算の特例(簡単に言うと、未収は収入に計上しなくてもよいという特例)が適用可能。
(2)その年の前々年分の雑所得の収入額が300万円超の場合
住所地や居住地で、その業務に係る現金預金取引等関係書類(預金通帳や領収書など)を5年間保管する必要があります。
(3)その年の前々年分の雑所得の収入額が1,000万円超の場合
その業務に係る取引のその年中の総収入金額及び、必要経費の内訳を記載した書類を確定申告書に添付する必要があります。
この改正の適用時期は、2022年1月1日以降の所得税分からとなります。
2.ポイント
(1)副業を営む人などの雑所得は、前々年の雑所得の収入金額の区分けによって、所得金額の計算や確定申告の手続きが異なります。
(2)雑所得の収入金額の区分けは300万円以下、300万円超、1,000万円超の3段階となります。
住宅ローン控除と自宅売却時の譲渡特例が重複不可に
住宅の住み替えの際には、一般的には住んでいた住宅を売却し、新しい住宅を取得します。その際、「新住宅に居住してから3年後に今まで住んでいた住宅を売却した場合」に限っては、住宅ローン控除と譲渡特例などを併用することができましたが、今後はその特例に制限がかかることとなります。
1.概要
今まで住んでいた住宅を売却し、以下の譲渡特例等の適用を受ける場合については、新しい住宅について住宅ローン控除の適用を受けることができなくなります。
(1)居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
(2)居住用財産の譲渡所得の特別控除
(3)特定の居住用財産の買換えおよび交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
(4)既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換えおよび交換の場合の譲渡所得の課税の特例
この改正の適用時期については、2020年4月1日以後の今まで住んでいた住宅の譲渡から適用されます。
2.ポイント
自宅売却時の譲渡特例と住宅ローン控除は、いずれか一方しか受けることができません。
医療費控除・寄付金控除(ふるさと納税等)の添付書類の多様化
この改正のポイントは、以下となります。
(1)医療費控除および寄付金控除(ふるさと納税等)の添付文書の多様化・データ活用。
(2)e-Tax環境の整備により、スマートフォンなどからの確定申告をスムーズ化します。
そして、それぞれの多様化の内容については以下のとおりです。
1.医療費控除関連
現行の「医療保険者の医療費の額等を通知する書類」に代えて、次の書類添付やデータ送信が認められます。
(1)審査支払期間の医療費の額等を通知する書類
(2)医療保険者の医療費の額等を通知する書類に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書類
また、e-Taxで確定申告する際には、マイナポータルを活用し、上記の書類データの送信、または上記の書類の記載事項を入力することで添付に代えることができます。
2.寄付金控除関連
現行の「特定の地方寄付金を受領した者の特定寄付金の額等を証する書類」に代えて、「地方公共団体と寄付の仲介に係る契約を締結した一定の事業者の特定寄付金の額等を証する書類」の添付等が認められるようになります。
これらの改正の適用時期は、2021年分以後の確定申告からとなります。
読者のみなさんにとって、今回の暮らしに影響する税制改正で一番大きいものは、雑所得(副業等)の所得金額計算および確定申告のルール化でしょう。副業解禁の流れの中で今後は雑所得が増えてくることが予想されます。住宅ローン控除も合わせて、ご自身の暮らしに影響する部分については必ず確認し、理解を深めておきましょう。
(※本ページに記載されている情報は2020年11月11日時点のものです)