運用に興味を持ち、つみたてNISAなどを利用し投資信託を購入する人も増えてきています。しかし、長年保有していながら、結局そのままになったりしていませんか?もちろん、運用の原則は長期保有ですので必要がなければそのまま保有しておいて構いませんが、運用商品の見直しなどで売却を考える方もおられると思います。その際に発生する費用の仕組みについて説明します。
保有したままの投資信託
売却で発生する費用の仕組みを教えて!
2020年10月28日
信託財産留保額
投資信託を売却する際に、必ずチェックしなければならないのが「信託財産留保額」です。最近はこの留保額を「なし」としている商品も多くみられます。
信託財産留保額は、投資信託を解約(売却)する際に負担する費用です。投資信託を保有し続ける他の投資家に影響が及ばないよう、解約(売却)に伴い発生する費用となります。解約(売却)の際に支払った信託財産留保額は、残された信託財産に加えられ、基準価額や収益分配金に反映されます。この信託財産留保額は、長期にわたって保有する投資家にとっては、設定されている方が有利になることもあります。
分配金・償還金への課税
投資信託から得る利益には「収益分配金」、「途中換金による利益」そして「償還時の利益」の3つがあります。そして、その課税される税金は「株式投資信託」か「公社債投資信託」なのかで取り扱いが異なります。
1.株式投資信託
株式投資信託の収益分配金は「配当所得」として、途中換金による利益と償還時の利益は「譲渡所得」として、それぞれ課税されることになります。税率はいずれも所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%を合わせた20.315%となっています。ちなみに復興特別所得税の適用は2037年までです。
2009年1月からは、上場株式や株式投資信託と配当との損益通算の仕組みが導入されることとなり、2010年1月より申告不要の特定口座内で受け取れば、同じ口座内で自動的に損益通算が行われます。損益通算により控除しきれない譲渡損失については、3年間の繰越控除が適用されます。
2.公社債投資信託
公社債投資信託の分配金は「利子所得」、譲渡損益や償還差益は「譲渡所得」として、20.315%が源泉徴収されます。2016年1月より税制上は「上場株式等」と同様の取り扱いとなりました。また公社債投資信託については、申告不要の特定口座で受け取れば、同じ口座内で上場株式や株式投資信託等に損失がある場合、自動的に損益通算が行われます。
追加型株式投資信託の収益分配金
投資信託の収益分配金は、投資信託の純資産から支払われます。したがって、分配金が支払われるとその金額相当分について基準価額は下がることになります。分配金は、計算期間中に発生した収益(経費控除後の配当等収益及び評価益を含む売買益)を超えて支払われる場合があります。
追加型株式投資信託の収益分配金には、「個別元本方式」に基づき、「普通分配金(課税扱い)」と「元本払戻金(特別分配金・元本の一部払い戻しに相当することから非課税となる)」があります。収益分配時に非課税の元本払戻金(特別分配金)が支払われると、投資ごとの取得元本である個別元本が減額修正されます。以下に具体例を記しますので参考にしてください。
決算時、収益分配前の基準価額が11,000円の追加型投資信託があるとします。この投資信託が1,000円の収益分配を行うことになった場合をケースごとに見ていきましょう。
A)9,500円で購入していたケース
収益分配後の基準価額(10,000円)が購入時の個別元本である9,500円を上回っていることから、収益分配金の1,000円は全て課税対象の普通分配金となり、受取額は以下の計算式のとおりとなります。
1,000円-(1,000円×20%)=800円
つまり、この場合は全額が収益からの分配金とみなされることから、個別元本は修正されません。
B)10,500円で購入していたケース
この場合は、収益分配後の基準価額(10,000円)が購入時の個別元本である10,500円を下回っているため、下回った500円分が元本払戻金といわれる特別分配金として取り扱われ、非課税対象となります。つまり、普通分配金についてはそれを差し引いた500円ということになります。そうなると受取額は
500円-(500円×20%)=400円に特別分配金(500円)を加えた900円となります。
これをみると、分配金の受取額はBが多いのですが、特別分配金の500円は元金が払い戻されただけです。トータルリターン(総合収益)はAが上回っています。
投資信託を理解するには、売却時の手数料や分配金にかかる税金を理解する必要があります。少し複雑ですが、日頃から投資信託に関わる費用や税金について理解を深めておくようにしましょう。
(※本ページに記載されている情報は2020年10月28日時点のものです)