毎年10月くらいになると、保険会社から「保険料控除証明書」が届き始めます。そして、年末が近付くころに勤務先に提出するという一連の流れは、会社員にとって年末の恒例行事のようなもの。ですが、書類の紛失や出し忘れなどがあった場合にはどうしたらよいでしょうか。今回は、年末調整に必要な書類を提出できなかった場合の対処法についてお伝えします。
年末調整で必要な書類を提出
できなかったときの対処法とは?
2020年10月9日
そもそも年末調整は何のために必要?
毎月受け取る給料からは、あらかじめ仮の所得税が天引きされています。これは、あくまで「給与所得の源泉徴収税額表」をもとに、社会保険料などを控除した後の給与の金額と扶養する人数に応じて、ざっくりと計算されたものです。しかし所得税は、1月1日から12月31日までの間の所得によって決まるもの。人によっては納めすぎていることもありますし、逆に不足していることもありますので、それを精算するのが年末調整なのです。
そして、年末調整の際には各種控除が適用されます。しかし会社では、従業員の生命保険料や住宅ローンまでは把握していませんよね。そこで、各種控除が適用されるためには「この1年でこれだけ払いました」という証明書が必要になるというわけです。
会社に提出する書類と紛失時の対処法
年末調整では、会社が用意してくれる申告書のほかに、各種控除を受けるために必要な書類がありますが、すべて原本でなければいけません。では、これらを紛失した場合どうしたらよいのか、それぞれ見ていきましょう。
生命保険料控除証明書
毎年10月に入ると、各生命保険会社から送られてくるのが生命保険料控除証明書です。これは、1年間にどれだけの生命保険料を支払ったかを証明する大切な書類。「今年は届くのが遅い」、あるいは「受け取ったはずだが見当たらない」という場合、早めに保険会社に連絡して再発行してもらいましょう。
地震保険料控除証明書
地震保険料控除証明書も、毎年10月頃になると保険会社から郵送されてきます。ただし、賃貸物件にお住まいで、契約更新時に一括して数年分保険料を支払うようなケースでは、後日、保険証券と一緒に送付されてくることもありますのでこの限りではありません。いずれの場合も、紛失した場合には保険会社に再発行を依頼することができますので、早めに確認しておきましょう。
給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受ける場合に必要なのが「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」です。住宅ローン1年目には確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で済みますので、忘れずに会社に提出してくださいね。もし紛失した場合、税務署で再交付を依頼することもできますので早めに準備しておきましょう。
また、申告書と一緒に「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」も必要です。こちらも、住宅ローンを借り入れている金融機関から毎年10月ごろに送付されてきますが、紛失した場合には再発行が可能です。
小規模企業共済等掛金払込証明書
個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している場合、毎年10月下旬頃に国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送付されてきます。こちらも再発行可能ですので、見当たらないと気付いたら早めに依頼しておきましょう。金融機関のホームページから、再発行依頼書をダウンロードできます。なお、掛金が給与天引きの場合には「小規模企業共済等掛金払込証明書」は発行されず、会社が手続きを行うことになっています。
国民年金保険料控除証明書
中途入社などの理由で、年の途中まで国民年金保険料を納めていたようなケースでは、「国民年金保険料控除証明書」も必要です。この場合、初めて国民年金保険料を納付した時期によって11月または翌年の2月に日本年金機構から証明書が送付されてきますが、見当たらない場合には再発行も可能です。その際は、お近くの年金事務所に連絡してみてください。
なお、国民健康保険料も控除の対象となりますが、特に納付証明書の添付は必要ないとされています。納付書の控えがあれば合計金額を計算して、どの自治体に支払ったかがわかればいいということですね。基本的に、口座振替で納付していた場合には12月下旬ごろに「納付額のお知らせ」というハガキが送付されますが、もっと早く正式な書類が欲しいというのであれば、自治体の窓口で発行してもらうことも可能です。
必要書類を提出できない場合はどうする?
ここまで、年末調整で会社に提出する書類を紛失した場合についてお伝えしてきましたが、お気付きのとおり、基本的にすべて再発行ができます。つまり、早めに再発行依頼をすれば、年末調整には間に合う可能性が高いということです。しかし、もし年末調整には間に合わなかった場合、どうしたらよいか見ていきましょう。
まずは会社に相談
まずは、いつまでに書類を準備できるかを伝え、会社の担当者に相談してみてください。翌年1月末日までにその証明書類を提出することを条件として年末調整を行ってくれるケースもあります。
自分で確定申告する
すっかり書類の提出を忘れていたというような場合は、確定申告で正確な所得税額を決定することができます。「確定申告なんて面倒……」「大きな金額ではないからこのままでも……」と感じるかもしれませんが、年末調整で提出できなかった書類の分だけを修正するのであれば、実は比較的簡単。会社から発行された源泉徴収票と、提出できなかった書類を準備して、国税庁ホームページにある「確定申告書等作成コーナー」に必要事項を入力すれば、自動で書類を作成してくれます。あとは書類を印刷して郵送するかe-Taxで送信するだけです。
また、確定申告は、原則として2月16日~3月15日という期間で行うものですが、払いすぎた税の還付を受けるための「還付申告」であれば、1月1日から申告できます。税務署が混雑しない時期であれば、比較的早く還付を受けることができますよ。
なお、医療費控除や寄付金控除、雑損控除、1年目の住宅ローン控除などは年末調整では受けられません。この場合も、自分で確定申告をする必要がありますが、いくら確定申告をすることがわかっていても、年末調整の対象である控除項目は、会社で年末調整をしてもらわなければならない点も注意してくださいね。
今回は、年末調整で必要な書類を提出できなかったときの対処法についてお伝えしました。もし会社に提出書類が見当たらなくても、証明書を再発行してもらうことは可能ですので安心してくださいね。そして、もし年末調整に間に合わなかった場合でも、確定申告で修正することができますので、きちんと手続きをしておきましょう。
(※本ページに記載されている情報は2020年10月9日時点のものです)