フリーランスは自由に働ける反面、会社員のように退職金が出ることはないため自分で老後資金を貯めなければなりません。「小規模企業共済」は、節税しながら老後資金を貯めることができるという、フリーランスにとって強い味方となりうる制度です。そんな小規模企業共済について解説します。
フリーランスの強い味方
小規模企業共済で将来の備えをしっかりと
2020年9月11日
小規模企業共済とはどんな制度?
小規模企業共済とは、小規模な会社の役員、個人事業主が掛金を積み立て、退職・廃業時に退職金代わりとして共済金を受け取ることができる制度です。完全退職・完全廃業が条件ですが、加入期間に応じて掛金の最大120%相当額が戻ります。
小規模企業共済は、国の中小企業政策の実施機関である中小機構が運営しています。フリーランスにとって、うってつけの制度と言えます。詳しくは、中小機構のホームページをご参照ください。
加入できる人は?
中小企業の役員、個人事業主が加入できます。退職金を受け取ることができるのは従業員ではなく、加入している役員や個人事業主になります。具体的な加入資格は、下記でご確認ください。
中小機構:加入資格
月の掛金はいくら?
掛金は、月1,000円~70,000円の間で、500円刻みで設定することができます。掛金は増額または減額することができます。
加入手続は?
中小機構のHPより必要書類を取り寄せ、依頼をします。
中小機構:小規模企業共済の資料請求
書類が届いたら必要事項を記入し、都市銀行など中小機構が業務委託している金融機関や団体の窓口で手続きをします。申込から約40日後、中小機構から手帳などが送られてきます。
小規模企業共済のメリット3つ
1.掛金は税金の計算上、全額所得から差し引かれる
積立時は、1~12月に支払った掛金の全額が、「小規模企業共済等掛金控除」として課税所得から控除され、所得税・住民税の負担が軽くなります。老後の貯えを定期預金で積み立てても税金は安くなりません。節税しながら老後の貯えもできるのが、小規模企業共済の一番のメリットです。
課税所得がコンスタントに200万円を超える人は、節税効果が高いことを下の表でご確認ください。
【掛金の全額所得控除による節税額一覧表(出典:中小機構HP)】
※「課税される所得金額」とは、その年分の総所得金額から、基礎控除、扶養控除、社会保険料控除等を控除した後の額で、課税の対象となる額をいいます。ご自身の確定申告書「課税される所得金額」の欄をご確認ください。
※税額は令和2年4月1日現在の税率に基づき、所得税は復興特別所得税を含めて計算しています。住民税均等割については、5,000 円としています。
2.受取方法は一括・分割どちらもOK 税制メリットもあり
完全退職・完全廃業すると共済金を受け取ることができます。共済金の受取方法は、一括・分割どちらでもOKです。共済金には所得税・住民税がかかりますが、受け取った共済金全額が税金の対象となるのではなく、控除額があるため税負担が軽減される仕組みになっています。
①一括で受け取った場合は「退職所得」
退職所得の計算方法は、「(共済金-退職所得控除額)×1/2」となります。
※退職所得控除額
共済加入期間が20年以下:組合員であった年数×40万円
共済加入期間が20年超:(組合員であった年数-20年)×70万円+800万円
退職所得は、事業所得などと合算しないで税率をかけて税金を計算します。
②分割で受け取った場合は「公的年金等の雑所得」
公的年金等の雑所得の計算方法は、「共済金-公的年金等の控除額」になります。公的年金等の控除額は、国税庁ホームページをご覧ください。雑所得は、事業所得などと合算してから税率をかけて税金を計算します。
3.契約者貸付制度がある
万が一事業の資金繰りがうまくいかなくなった場合、無担保・無保証人の「契約者貸付制度」があります。掛金の範囲内で事業資金を借りることができ、即日借り入れもOKです。金利は一般貸し付けの場合年1.5%です。
20年未満で解約すると元本割れするデメリットも
小規模企業共済は解約して解約手当金を受け取ることもできます。
しかし、もし加入してから20年未満で任意に解約した場合、戻ってくる金額が掛金よりも少なく、元本割れしてしまいます。節税効果があるからといって、無理に積み立てると、事業資金や生活費が足りなくなり解約せざるを得ません。お財布と相談して計画的に積み立てましょう。
ただし、退職・廃業の場合は加入期間が20年未満であっても100%戻ってきます。
iDecoとの併用
小規模企業共済は、iDecoとの併用が可能です。フリーランスの場合、小規模企業共済の月額上限7万円とiDecoの月額上限6万8,000円を合わせると、年間165万6,000円積み立てることができます。お金に余裕があれば検討するのもよいでしょう。
まとめ
フリーランスにとって小規模企業共済に入ると、以下のメリットがあります。
・廃業時に掛金の最大120%が戻ってくる
・支払った掛金は、全額所得から控除される
・共済金を受け取った時は、税負担が緩和される
・万が一資金繰りが回らないときは、今まで支払った掛金の範囲内で、無担保・無保証でお金を借りることができる
まだ加入していないフリーランスの方は、ぜひ加入を検討してみてください。
(※本ページに記載されている情報は2020年8月20日時点のものです)