会社を辞めたときに雇用保険からの失業給付があるのは知っている人は多いはず。それとは別に、失業した人が再就職することで、雇用保険から手当をもらえるって知っていますか?しかし、給付を受けるには条件を満たすことが必要です。今回は雇用保険の再就職手当について、もらえる条件や金額の計算について説明します。
再就職すると手当がもらえるって知ってる?!
条件や計算方法をお教えします
2020年1月20日
再就職手当とは?
再就職手当とは、雇用保険から支給される手当のひとつで、早期の再就職を促進することを目的とした給付金です。
もう少し具体的に説明しましょう。
雇用保険に加入している人が失業した場合、いくつかの要件を満たすことが必要ですが、通常は基本給付(いわゆる失業保険)が支給されますね。この基本給付は年齢や失業した理由、雇用保険に加入していた期間によって、もらえる日数が90日~360日までの間で決まっています。
本来、この基本給付は次の就職先を見つける間の「つなぎ資金」(生活費)的な意味合いで支給されるものです。そもそも就職する意思や能力があるにもかかわらず失業し、途絶えてしまった収入を補うための措置ですが、できれば本人も再就職してきちんと給料をもらえるほうがいいですよね。
一方で、それまでの給料よりは金額が下がるとしても、基本手当がもらえることで安心し、再就職が遅くなってしまうこともなくはありません。
理由はいくつか考えられますが、次のようなケースもあるでしょう。
- ・再就職先はしっかり選びたい、時間がかかっても仕方ない
- ・とりあえずは雇用保険からお金をもらえるから、それで何とか生活できる
- ・せっかくならもらえる日数分、全部もらわないと損、etc……
2度目以降の就職ですから納得して決めるために、じっくり選びたいという人も多くいそうですが、それでも求職活動へのモチベーションが低下するケースがあるのも否めません。
そこで、もらえるべき基本手当をもらい始める前や、もらっている途中でも、定められた条件を満たして再就職すれば、まだもらっていない基本手当のいくらかを一時金として支給しよう……というのが再就職手当なのです。
再就職手当がもらえる条件は?
再就職手当は、もらえるはずだった基本手当のまだもらっていない分を代わりに受給する制度ですから、基本手当の受給中である、あるいは受給資格決定を受けていることが前提です。基本手当の受給資格決定のための要件は「それって会社都合になるかも!知らないと損をする失業保険についてのあれこれ」の記事で詳しく説明しています。ぜひ参考にしてくださいね。
そのほか、再就職手当をもらうためには次の8つの条件をすべて満たす必要があります。どのような条件があるか知っておきましょう。
1.7日間の待機期間満了後の再就職であること
失業してハローワークで手続きしてもすぐに基本手当は支給されず、7日間の待機期間があります。この7日の間に就職または自営業を開始した場合には再就職手当はもらえません。
2. 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上
年齢や失業の理由等によって基本手当をもらえる日数はそれぞれですが、再就職時点でまだもらっていないか、1/3分以上残っていることが必要です。たとえば、所定給付日数が90日分の人のケースでは、まだもらっていない期間として30日分以上残っていることが必要です。
3. 出戻り再就職でないこと
以前働いていた会社への出戻りという形での再就職では支給されません。さらに言えば、事業所自体は違っても、その会社と資本金・資金・人事・取引面で密接な関わりがある会社(たとえば子会社など)への再就職でも支給されません。
4. ハローワークや人材紹介会社の紹介による再就職である
受給資格決定日から待機期間満了後の1カ月間内に再就職する場合、ハローワークや人材紹介会社の紹介で見つけた仕事ではなければ再就職手当はもらえません。1カ月経過後は再就職先を見つける方法は何でも構いません。たとえば知人の紹介や、自ら求人の張り紙を見てというのもOKです。
5. 1年超えて勤務することが確実であること
再就職先での雇用契約が1年以下の場合には再就職手当はもらえません。たとえば派遣などで契約期間が1年以下となっていても更新する見込みがあれば支給対象となりますが、更新が見込まれない場合には支給されません。
6. 原則、雇用保険の被保険者となっている
実は再就職手当は会社への再就職ではなくても、自営・起業などの場合でも受給可能です。この場合には雇用保険には加入できませんが、それ以外では再就職先で雇用保険に加入しなければいけません。
7. 過去3年以内に再就職手当をもらっていない
過去3年以内に常用就職支度手当の支給を受けた場合も、再就職手当はもらえません。
8. 求職申し込み前から採用が内定していた会社への再就職でないこと
実は受給資格決定(求職の申込み)前から次の就職先への採用が内定していたという場合には支給されません。
再就職手当はいくらもらえる?
再就職手当をもらえることができれば、もらえるはずだった基本手当がもらえなくなって損することはなくなりますが、もらえるはずだった分すべてが支給されるわけではありません。再就職手当としてもらえる金額の計算方法も知っておきましょう。次の計算式に当てはめることで計算できます。
再就職手当の額=支給残日数×基本手当日額×給付率
給付率は、
- ・所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合:60%
- ・所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合:70%
仮に所定給付日数が90日の人が、自己都合退職のため3カ月の給付制限期間中に再就職した場合、給付残日数は90日(3分の2以上)になります。仮に基本手当の日額が4,000円だとして上の計算式に当てはめると、
90日×4,000円×70%=25万2,000円
基本手当はもらえなくなりますが、再就職手当として一時金で25万2,000円支給されます。
自己都合退職の場合、給付制限があり3カ月程度は無収入となってしまいます。この間に再就職できればあらたに給料をもらえるようになりますし、再就職手当ももらえて家計が助かりますね。
早めに再就職することが再就職手当を多くもらうためのカギとなりそうですね。今後のキャリアを検討する際にも制度の中身を正しく知っておいてくださいね。
(※本ページに記載されている情報は2020年1月20日時点のものです)