会社員の妻はいろいろと優遇されていると言われますが、それを実感できるのが、夫が会社を辞めて起業したり、フリーランスで働くようになった時です。それまで、専業主婦として 夫の扶養に入っていた場合、年金や健康保険の保険料を納める必要がありませんでした。しかし、夫が会社員でなくなると‥‥。いざという時に困らないためにも、社会保険と家計に及ぼす影響などを知っておきましょう。
夫が会社を辞めてフリーランスになったら
知っておきたい社会保険の話
2019年12月23日
夫がフリーランスになったら
次のような状況を想定してみましょう。
夫が会社を辞め、フリーランスとなって仕事を始めました。年収はほとんど変わりません。あなたの専業主婦という立場も変わりません。社会保険料はどのように変わるでしょうか。
今までは…
<夫:会社員>
・会社の健康保険・・・保険料1/2
・厚生年金(第2号被保険者)・・・保険料1/2
<妻:専業主婦>
・夫の健康保険・・・保険料負担なし
・国民年金(第3号被保険者)・・・保険料負担なし
これからは…
<夫:フリーランス>
・国民健康保険
・国民年金(第1号被保険者)
<妻:専業主婦>
・国民健康保険
・国民年金(第1号被保険者)
会社員の場合は社会保険料は労使折半となり、会社が半分負担するため保険料が半分で済みます。さらに、会社員や公務員である人の配偶者が専業主婦(主夫)やパート(扶養内)で働いている場合は、第3号被保険者という立場となり、保険料の負担はありません。
社会保険制度において大変恵まれているということがわかりますね。
一方、フリーランスとなると、自営業者という立場になり、健康保険は国民健康保険に切り替わり、年金も国民年金第1号被保険者となります。国民年金には扶養という概念はないため、配偶者も同様に国民健康保険に加入し、国民年金第1号被保険者として保険料を納めなければなりません。社会保険料の負担が大きくなることが想像できます。
どのくらい負担が増える?
Aさん家族を例に計算をしてみましょう、
Aさん:年収500万円(フリーランス後も同等とする)
東京都板橋区在住 35歳
妻:専業主婦 30歳
子:2人(5歳と2歳)
会社員時代
・厚生年金の保険料率(協会けんぽ)9.15%※
・健康保険の保険料率(協会けんぽ)4.95%※
・雇用保険の保険料率0.3%
※それぞれ1/2にした数値
すべての保険料率を合計すると14.4%となるので、年収500万円の場合、社会保険料は72万円となります。妻の社会保険料はないので、世帯合計も72万円となります。
フリーランス
Aさんがフリーランスになった後はどうでしょうか。
国民健康保険の保険料は、市区町村ごとに、世帯単位で徴収されます。ここで気を付けたい点は国民健康保険には扶養という概念がないため、子供がいれば、子供の分の保険料も負担しなければなりません。Aさん世帯の国民健康保険料は年間で563,400円となります。
国民年金の1カ月当たりの保険料は16,410円(2019年度)です。年間にすると2人分で393,840円となります。
国民健康保険と国民年金の保険料の世帯合計は957,240円となります。
およそ23.7万円、負担が増えることになります。
将来もらえる年金への影響は?
会社員からフリーランスになると、厚生年金から国民年金へと切り替わることになります。
厚生年金は2階建てと言われるように、国民年金の上乗せとして受けとれる年金額が多くなります。本来、年金は支払った保険料が多ければ、将来もらえる給付額が増える仕組みとなっています。厚生年金は会社も負担してくれるため、本人が支払った以上の保険料を払ったことになります。
基礎年金の満額はおよそ78万円、厚生年金の受給権者の平均受給額はおよそ174万円(※)となっていますから、かなりの違いがあることがわかります。
※2017年度厚生年金保険・国民年金事業の概況より
先程の例のAさん夫婦の場合、専業主婦である妻がもらえる年金額に変わりはありません。しかし、支払う保険料が夫の立場で変わるというのはどうにも腑に落ちない部分と言えますね。
フリーランスの備えとは
夫がフリーランスになった場合に、社会保険がどう変わるのかを示しましたが、問題はこれだけではありません。会社員が加入する健康保険には、傷病手当金や出産手当金がありましたが、国民健康保険にはありません。そのため、病気やケガで働けなくなった時には、貯金を切り崩したり、民間の保険に加入するなどして備えなくてはなりません。
そう考えると、フリーランスとしてやっていくためには、ある程度まとまった額の蓄えがないと厳しいと言えます。まだそこまで貯蓄ができていないという場合には、「就業不能保険」や「所得補償保険」を検討してみるとよいでしょう。
また、退職金がないということも大きな問題です。年金額を増やすために「付加年金」に加入したり、退職金代わりに「iDeCo」を活用するなどして、自助努力で備える必要があります。
夫がフリーランスになると大変!という部分ばかりクローズアップしてしまいましたが、もちろんいい面もたくさんあります。自宅にいる時間が長くなることで、子育てに積極的に関わったり、人間関係のストレスが減ることもあるでしょう。中でも一番は定年がないことではないでしょうか。人生100年時代、老後も働き続けられることが最強かもしれませんね。
(※本ページに記載されている情報は2019年12月23日時点のものです)