年収1,000万円の家庭はどんな暮らしをしているのか興味ありませんか?日本で年収1,000万円以上稼ぐ人の割合は4%程度です。年収1,000万円は手取りにすると平均で700万円台になります。「あれ?思ったほどお金持ちじゃない」と感じるのではないでしょうか。今回は年収1,000万円の世界を探ってみたいと思います。
憧れの年収1,000万円の生活を検証!
贅沢はできる?貯金はどのくらい?
2019年11月25日
年収1,000万円はどのくらいいる?
国税庁の民間給与実態統計調査(2017年分)によると、給与所得者の平均給与は432万円となっています。
出典:民間給与実態統計調査(2017年分)-国税庁-を基に筆者が作成
構成比を見てみると、300万円超400万円以下が17.5%と一番多くなっています。年収1,000万円を超える給与所得者は4.5%しかいません。
この数字は1人で1,000万円を稼ぐ給与所得者の割合ですから、夫婦共働きで世帯年収が1,000万円の場合はさらに増えると思われます。夫婦でそれぞれ500万円稼げば、世帯年収は1,000万円になります。平均給与が432万円ですから、現実味のない話ではないと思います。
しかし実際は、世帯での平均は551.6万円となっています。
<世帯の所得分布状況>
出典:国民生活基礎調査の概況(2018年)|厚生労働省より抜粋
中央値を見ると423万円となっており、世帯年収が1,000万円を超える家庭は全体の12.2%です。やはりここでも年収1,000万円というのは“お金持ち”のイメージになるようですね。
年収1,000万円の実態
年収1,000万円の手取りはどのくらいでしょうか。
一般的に年収は、社会保険料や税金を引かれる前の総支給額(額面金額)を指します。
手取りの計算
夫(年収1000万円)妻(専業主婦)16歳未満の子供2人の家庭の場合
社会保険料を年収の15%(150万円)とする。
<所得税の計算>
1,000万円-220万円(給与所得控除)=780万円
780万円-150万円(社会保険料控除)-38万円(配偶者控除)-38万円(基礎控除)=554万円(課税所得)
554万円×20%(税率)-42万7,500円(控除額)=68万円
※千円未満切捨て
<住民税の計算>
課税所得の10%として計算
554万円×10%=55万4,000円
1,000万円-150万円(社会保険料)-123万4,000円(所得税・住民税)=726万6,000円
手取りは約726万円です。意外と少ないと感じませんか?
所得税は累進課税となっているため、所得が上がるにつれて、税率も上がってきます。所得が4,000万円を超えると税率は45%となり、半分近く税金を取られます。
年収1,000万円の場合、課税所得は554万円なので、税率は20%ですが、年収500万円であれば、課税所得は233万円となるので、税率は10%となります。つまり、1人で1,000万円稼いだ場合よりも、2人で500万円ずつ1,000万円稼いだ方が、所得税は少なくなります。
年収1,000万円の貯金事情
年収1,000万円世帯はどのくらい貯金をしているのでしょうか。
収入に対する貯金の割合
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2018年)」によると、年収1,000~1,200万円未満の世帯の年間の手取り収入に対する貯金の割合は、平均14%となっています。先程の例で、手取りを726万円とすると約100万円を貯金に回していることになります。中央値にあたる年収300~500万円未満の世帯は、7%となっており、割合としては倍になっています。年収400万円の人の手取り額を325万円とすると年間で約23万円なので、4倍から5倍ほど多く貯金をしていることになります。それだけ、貯金に回せていれば、当然金融資産が増えます。
金融資産の保有額
同調査によると、年収1,000~1,200万円未満の世帯の金融資産の平均額は2,661万円となり、より現実的な値としての中央値は1,700万円となっています。
同じように、年収300~500万円未満の世帯と比較してみましょう。
年収300~500万円未満の世帯の金融資産の平均額は1,349万円、中央値は650万円となっています。
どうでしょうか。思ったほどは開きがないと感じるか、やはり差があると感じるでしょうか。
この調査結果で興味深いのが、年収1,000万円の世帯でも、貯金をまったくしなかった世帯が11%、金融資産を保有していないという世帯が7.3%もいることです。
年収1,000万円世帯の支出
総務省の家計調査(家計収支編)によると、年収1,000~1,250万円の世帯の1ヵ月の支出は、約40万円となっており、平均世帯の28万円と比べると10万円ほど支出が多くなっています。
出典:総務省|家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯(2018年)を基に筆者が作成
支出の内訳を見てみると、住居費や光熱・水道費、保健医療費などではほとんど差がなく、差が目立つのが教育費です。世帯平均が11,785円であるのに対し、年収1,000~1,250万円世帯は32,438円となっており、平均に比べ3倍近い費用を教育に当てています。
年収1,000万円世帯は教育熱心ということが分かりますね。
年収1,000万円から見えてくるもの
ここまで、年収1,000万円にスポットを当てて見てきましたが、意外と贅沢な生活をしているわけではないことが家計調査などから感じたのではないでしょうか。1ヵ月の支出も平均と10万円ほどしか変わらず、収入の14%ほどを貯金に回しているなど、堅実な暮らしぶりが伺えます。それと言うのも、裕福な暮らしができるほど余裕があるわけではなく、生活レベルを上げ過ぎると、あっという間に貯金が底を突くような危うさがあるからでしょう。
累進課税によって所得税額が増えるばかりか、児童手当や高等学校等就学支援金制度などは、年収1,000万円の場合は支給がない、あるいは減額されるなど、損と思われる面もあります。それ故に1,000万円という金額のわりには、思ったほど豊かさを享受できないと感じるのではないでしょうか。
しかしそうは言っても、年収1,000万円は憧れの年収です。1人で稼ぐよりも夫婦2人で1,000万円なら、所得制限で弾かれにくくなり、税金面でも有利です。今後共働きは増えていくと思いますので、世帯年収1,000万円は夢ではありませんね。
(※本ページに記載されている情報は2019年11月25日時点のものです)