相続ってまだ自分には遠い話と感じるかもしれません。でも、今から自分の親にやっておいてもらわないと、将来、親から相続を受ける時、自分が大変な目に遭うかもしれません。ぜひ、これだけはご両親に伝えておいてください。
あとで自分が困らないように!
親に伝えておきたい相続の話
2019年11月7日
1.あとでモメる羽目に
相続は「争族」と聞いたことがないでしょうか?相続時に争って調停・審判に至る件数は年々増加傾向で15,000件ほどになっています。解決に至るまでには平均で1年、そこまで時間をかけても解決できるのが6割くらいです。
こんな家族はモメる
では、なぜモメるのか見てみましょう。
1)相続財産が5,000万円以下
一般的にですが、親が裕福であれば、子どもは経済的な支援が受けられ、ゆとりのある生活をしています。それに対して、親がそれほど裕福でない場合は、その子供もごく普通のサラリーマン家庭など平均的な収入の場合が多く、住宅ローンや教育資金で大変な思いをしていることが多いです。そのため、少しでも遺産を多くもらいたいという気持ちが強くなります。実際に相続争いの75%は相続財産5,000万円以下の場合に起こっています。
2)相続人数が多い
上述のように、よほど生活にゆとりがない限り、人は少しでも多く遺産をもらいたいと考えます。そのため、「自分が一番親の面倒を見た」「お兄ちゃんは家を買うのにたくさん援助してもらった」など、自分に有利な発言を始めます。相続人が多ければ多いほど、そのような発言が多くなり協議がまとまらなくなります。
親が再婚をしている場合などは、前妻との間にできた子にも相続権がありますので、もっと話し合いが複雑になります。
モメないために
そこで、あとでモメないためには遺言書が必要になります。
遺言書は、自分の財産を誰にどのように遺すか、葬儀などの祭祀をどうして欲しいか、自分の意思表示をしておくものです。
エンディングノートの方が自由に何でも書けて手軽ですが、エンディングノートには法的効力はありません。遺言書は決められたルールにのっとって書けば、法的効力がありますので、モメ事が起こった時に優先されます。
主に利用されている遺言書の種類は2種類あって、持っている財産や相続人がそれほど複雑ではなく、書き方のルールを見ながら自分で書けそうな人は自筆証書遺言でいいと思いますが、無効になるのが心配な人、財産や家族構成が複雑な人は専門家に相談して公正証書遺言にするのをおすすめします。
2.あとで税金を払う羽目に
相続が発生した時には相続税を払わなければいけませんが、実際に相続税を払わなければいけない人は全体の8%くらいと言われています。
こんな家族は相続税を払わなければいけない
なぜなら、税金には基礎控除があるからです。相続税の場合は、
3,000万円+600万円x法定相続人数
という計算式で計算します。これで算出した基礎控除以上に財産がある場合には、その超過部分に対して相続税がかかります。ですから、相続人が少ないほど基礎控除額は少なくなります。
1のケースとは逆に、財産が多いほど、相続人数が少ないほど、遺された方は困ることになります。
相続税で困らないように
相続税の節税対策として、生前贈与という方法があります。贈与の場合も贈与税がありますが、次のような方法は非課税で行うことができます。主なものを挙げます。
1)暦年贈与
年間110万円未満であれば、誰にでも非課税で贈与することができます。ただし、毎年定期的に贈与すると連年贈与とみなされることがありますので、税理士さんなどに確認してください。
2)教育資金の一括贈与の非課税特例
自分にお子さん(親から見て孫)がいる場合に活用してほしいと思いますが、直系尊属からの教育資金の贈与は1,500万円まで非課税となります。ただし、受贈者は30歳未満で、30歳時点で資金が残っていた場合は、その残額に対して税金がかかります。
3)直系尊属からの住宅取得資金贈与
直系尊属からの住宅取得資金の贈与は非課税となります。ただし、受贈者は20歳以上で、合計所得が2,000万円以下であること。非課税限度額は、契約日や住宅の種類によって異なりますが、省エネ・耐震性などを兼ね備えた優良住宅の場合、最大1,200万円となります。
以上のように、親が遺言書とか生前贈与とか、相続対策を何も行っていない場合、遺された自分が親族とのモメ事に巻き込まれたり、多額の相続税を払うことになるかもしれません。
また、資産はあるけれども不動産ばかりで現金が少ないと遺産分割に困るなど、ここに挙げた以外にもいくつか押さえておいた方がいいポイントもあります。
ぜひ、親にこれらの話をして、終活について一度、家族全員で話し合いをしたり、専門家に相談したりすることをおすすめします。
(※本ページに記載されている情報は2019年11月7日時点のものです)