人生100年時代を見据え、金融庁が2019年6月はじめにまとめた資産形成を促す報告書によると、95歳まで生きるには夫婦で約2,000万円の金融資産の取り崩しが必要になるとのこと。2,000万円という大きな数字に不安を感じてしまうと思います。ちなみにこの試算では「年金だけでは毎月5万円不足」ということですが、それだけではなく、今の生活と比べて何が違うのか、若いときにしっかりと考えておくことも大切です。例えば、年を取って入れ歯になって、その費用がどれくらいかかるかなんて見当が付きません。今回は、そんな老化による出費「老化コスト」がどれくらいあるかを調べ、それに対してどう対策を取っておいたらいいのかをお伝えします。
老後2,000万円不足!? ・・他にも老化による出費を調べてみました
2019年6月17日
1.体の部位別、老化による出費
年を取ると何となく今よりも医療費がかかることは予想がついていて、多めに費用を見ておかなければいけないと考えている人は多いと思いますが、ここに挙げるのは、医療費とは別会計の例です。
身体の部位別にどんな老化現象が現れ、その対策にどれくらいの費用がかかるのか挙げてみました。ここに挙げた症状や金額はほんの一例に過ぎません。これら以外にも一時的にあるいは継続的に費用がかかるものはいろいろあると思います。
頭
薄毛対策: (シャンプー・育毛剤 2,000円~/本、クリニック治療 15,000円~30,000円/月、ウィッグ 70,000円~200,000円/個)
物忘れ対策:サプリメント3,000円~/月
顔
シワ:(美容外科 3,000円~、美容液・クリーム 2,000円~)
目
老眼対策: (老眼鏡 2,000円~、ルーペ 7,000円~、サプリメント 1,000円~/月)
耳
耳が遠くなる (補聴器 10万円/片耳)
歯
歯が抜ける:(入れ歯(自費)30万円/片顎、 入れ歯洗浄剤 2,000円/4か月分)
歯が弱る:(やわらかい宅配食 500円/食)
足腰
足腰が弱る:(サポーター 1,000円、歩きやすい靴 5,000円、杖 1,000円)
お腹
メタボ:(スポーツジム 10,000円/月、サプリメント 1,000円~/月)
老化は病気ではないため、一度老化現象が起こると、一生対策が必要になってきます。そのため、消耗品であれば、定期的に何度も購入が必要になってきます。しかも、医療費ではないため、医療費控除による所得控除もできません。
2.一般的な、若いときに要らなかった出費
そして上記以外に、よく言われる医療費・介護費用などがかかってきます。相場を見ておきましょう。
介護
介護度3の場合、在宅介護費用はだいたい 60,000円/月です。(ただし、食費や家賃などを入れると20万円くらいになります。)有料老人ホーム 20~30万円/月くらいかかります。
介護度のほか、面倒を見てくれる家族がいるか、どこに住んでいるかなどによってかかってくる費用が大きく変わります。
医療費
実際に病院に行く機会は増えたとしても、高額療養費制度があるため1か月あたりの負担はそれほど大きくありません(例えば、70歳以上で一般区分の場合、上限額は個人ごとに18,000円/月、世帯ごとに57,600円/月)。
ただし、毎月、治療・投薬が必要となってくると、年間での負担は結構大きくなります。70歳未満の人全員と、70歳以上で現役並みの所得がある人は過去12か月で3回以上高額療養費の支給を受けている場合には通常より限度額が下がりますが、70歳以上で一般・低所得者区分の人の限度額は変わりません。
お葬式
一般的なお通夜・告別式を行う葬儀一式の場合の相場は200万円くらい、お通夜・告別式などは行わない直葬にすれば40万円程度になります。
お墓
一般的なお墓を建てて埋葬する場合は150万円~200万円くらいですが、お墓を建てず樹木葬、海洋散骨の場合は、5万円~80万円くらいになります。
3.老化コストにどうやって備えるか
このように、老化によって今よりもさまざまな費用が必要になってきますが、では、それらの出費にどう対処していったらよいでしょうか。次の3つの方法を考えてみましょう。
老後要らなくなる出費を計算する
老後かかってくる費用とは逆に、年を取ることでかからなくなってくる費用を挙げてみましょう。
会社勤めをしていたころは、スーツやパンプスなど着るものが必要でしたし、外食代、交際費、仕事のためのセミナー代などもかかっていました。
住宅ローンの返済、生命保険の保険料、子供の教育費も要らなくなります。
これらの費用で老化コストが賄えれば、それほど心配することはありません。
老化を遅らせる
若い状態・健康な状態を保つことができれば、それだけ老化対策が必要なくなります。加齢は避けられないことですが、生活習慣やストレスから老化を早めていることもあります。日頃から体に良い食事、適度な運動、十分な睡眠など、自分で取り組めることはどんどん取り入れていきましょう。
しっかり貯金
病気や介護であれば保険で賄うこともできますが、老化現象は自分の貯金で賄うしかありません。
心持ち大目に貯金を心がけましょう。もし将来、老化コストとして使わなければ、ご褒美に旅行や趣味に使うこともできます。
老化によるコストのほかにも、今は想像もできない出費、突然の出費も考えられます。今お金を使う時に「これ、無駄遣いかな?」と思ったら、まずはとりあえず貯金しておくということも考えてみましょう。