近年、晩婚化が進み、高齢出産の割合は年々増えてきています。40代での初産もそれほど珍しくなくなってきました。20代の夫婦よりも、40代の夫婦の方が経済的に豊かになっている場合が多いので、40代夫婦は子育てに多くの費用を注いでしまいがちです。実はこれが後々大きなリスクとなってしまうかもしれないのです。
40代で出産するとどうなる?
高齢出産とお金の問題
2018年8月15日
高齢出産のメリットとデメリット
若い頃は仕事一筋で頑張り、ある程度の年齢になって、仕事での実績もできた頃、一旦立ち止まって私生活の充実を考える人は多いと思います。そうしてそこから結婚、出産という人生のイベントを経験すると、どうしても高齢出産となってしまいます。
高齢出産にはそれなりのメリットもあります。年齢を重ねたことで、経験が増え、世の中の仕組みを理解した上で子育てができることです。
また、仕事で実績を積んだことで、収入が増えている場合が多いので、経済的な余裕がある中で子育てができます。
一方で当然ながら、デメリットもあります。
まずは身体的なリスクです。
流産率や先天性異常の発症率は年齢とともに上がってきます。
また35歳を過ぎると自然妊娠する確率が下がっていき、不妊治療をするケースが増えます。そうなると不妊治療にはお金がかかるので、経済的な理由で難しくなる場合もあります。
体力面でも若い頃とは違い、子育ての疲労も大きくなります。
こうしたメリット、デメリットは認識している人は多いのではないでしょうか。しかし、高齢出産で子育て期間が後ろにずれた場合のマネープランをしっかり認識している人は少ないように思います。
ライフプランでみる家計状況
結婚、出産、住宅購入などのライフイベントは、その時期によって、将来の家計状況が大きく変わっていきます。
以下に、30代で子育てした夫婦と40代で子育てをした夫婦の二つのライフプランを紹介します。
※ライフプランシミュレーション-ゆうちょ銀行を利用してシミュレーションしました。
【モデルケース1】
夫35歳(会社員)年収600万円
妻30歳(専業主婦)
子供 2歳と0歳
<前提条件>
貯蓄額 400万円
第一子妊娠中に住宅ローン(年間支払額100万円・35年返済)を組んで住宅を購入
子供は二人とも高校から私立に通わせ、大学は自宅から通学
末子が小学生になったら、妻は扶養の範囲(年収100万円)で働く
200万円の車を6年ごとに買い替え
65歳定年 退職金2,000万円
30代子育て夫婦では、生涯収支で一度も赤字になることなく、85歳の時点で1,000万円近い貯蓄額があります。
次に40代子育て夫婦のケースを見てみましょう。
【モデルケース2】
夫45歳(会社員)年収700万円
妻40歳(専業主婦)
子供 2歳と0歳
<前提条件>
貯蓄額 600万円
第一子妊娠中に住宅ローン(年間支払額100万円・35年返済)を組んで住宅を購入
子供は二人とも高校から私立に通わせ、大学は自宅から通学
末子が小学生になったら、妻は扶養の範囲(年収100万円)で働く
200万円の車を6年ごとに買い替え
65歳定年 退職金2,000万円
※出産時の年齢と夫の年収、貯蓄額を変更し、他の要因は同じとしました。
72歳あたりで赤字に転落し、85歳の時点で1,638万円の負債を抱える結果となりました。
平均寿命の延びを考えると、負債はさらに増えていくことになります。
老後資金の確保の問題
モデルケース2の場合、末子が大学を卒業した時には、夫は67歳、妻は62歳になっており、すでに年金生活に入っています。つまり、教育費が一番かかる時期と定年が重なり、老後資金で学費を払うことになります。
モデルケース1の場合は、末子の大学卒業時は、夫57歳、妻52歳であり、夫婦が現役の時に教育費から解放されているので、老後資金を取り崩さなくて済む上に、残り数年でさらに老後資金を貯めることができます。
さらに、住宅購入についても、家を買うタイミングとして、最も多いのは子供が誕生した時と言われています。早く購入し、定年までの住宅ローンの残債が少なくなっていれば、退職金を返済にまわす額が減り、それだけ老後資金の確保ができます。
40代子育て夫婦のさらなる問題
子供を授かった時期の年収や貯蓄額はそのまま教育費にも影響されます。
文部科学省の調査によると、世帯の年間収入と学習費総額の状況は、公私立問わず、収入が上がるにつれて学習費総額が多くなっていく傾向にあることがわかっています。(※)
※平成28年度子供の学習費調査:文部科学省より
高齢出産で子供を授かった場合、若い夫婦よりも世帯収入が高めである場合が多いので、教育費にお金をかけることができます。そして、一旦上げた教育費のレベルはなかなか下げることができません。
これから先、年収が思った以上には上がっていかなかった場合、教育費が重くのしかかり、家計を圧迫することになります。
さらに、教育費の支出は定年まで続くので、老後資金を貯める余裕もなく、そのまま年金生活に突入するという最悪の事態になり得ます。
こうした事態を避けるためにはどうしたらいいのでしょうか。
40代子育て夫婦がとるべき方法
教育資金、老後資金、住宅購入資金を同時期に確保する必要があるケースにおいて、対応策があるとすれば、世帯収入を増やす以外にありません。
そこで、先ほどの【モデルケース2】において2点だけ変更を加えてみました。
*退職時期を65歳→70歳に変更
*末子が小学生になったら、妻は扶養の範囲(年収100万円)で働く→フルタイムで働くに変更
これにより、生涯収支が赤字になることがなくなり、85歳の時点で1,538万円の貯蓄額となりました。
他にも、資産運用で増やす、教育費を減らす、住宅購入の物件価格を下げるなどの方法がありますが、共働きによって世帯収入を増やし、なるべく長く働くことの効果は非常に大きいことがわかります。
高齢出産は晩婚化や医療技術の進歩によって、今後も増えていくでしょう。子育て時期がライフプランに与える影響について考慮できているかどうかで、老後の生活が変わってきます。まずは、ライフプランを作ってみるところから始めてみませんか?