2020年に成立した年金制度改正法には、厚生年金の適用拡大や賃金と年金の関係見直しなど、私たちの暮らしに影響を与える変更が多く見られます。そして、その多くが2022年より適用開始となることから、適用開始の時期、そして内容についてしっかりと理解しておきましょう。
2022年から適用される年金制度改正法の内容とは?
2022年1月13日
厚生年金の適用拡大
今回の改正により、厚生年金被保険者の適用が拡大されます。
企業規模要件の見直し
短時間労働者における厚生年金への加入については、勤務先の規模によって要件が緩和されています。そして、その特例的な緩和要件が今後段階的に縮小されることになりました。
現行では従業員500人超の企業が強制加入ですが、これからは従業員100人超の企業が原則、強制加入となります(2022年10月適用開始)
さらに従業員50人超の企業が原則、強制加入となります(2024年10月適用開始)
また、同時に加入対象者の範囲も見直され、たとえば現在は1年以上働く人が加入対象ですが、今後は2ヵ月を超えて働く人は厚生年金に加入することになります(2022年10月適用開始)。
在職老齢年金制度の見直し
60~64歳の在職老齢年金制度について、全額支給停止となる条件が以下のとおり緩和され、働きながらでも年金を受け取りやすくなります。
現行の基準額28万円以下を47万円以下に拡大(2022年4月適用開始)
賃金と年金の合計額が47万円を超えなければ、年金を全額受け取れるということです。
公的年金の受給開始時期の選択肢拡大
現在、公的年金の受給開始時期は、原則として、60歳から70歳の間で自由に選ぶことができますが、今後はその選択肢が拡大されます。また、繰り上げ受給における減額率が変更される点にも注意が必要です。
繰下げ受給の上限年齢の引上げ
まず、現行では70歳がの繰下げ受給開始年齢の上限年齢ですが、それが75歳に引き上げられます。反対に65歳に到達する前に年金受給を希望する場合は、繰上げ期間に応じて年金額が減額されます。その減額率は現在1月あたり0.5%ですが、これが0.4%に引き下げられます(2022年4月適用開始)。
確定拠出年金の制度改正
確定拠出年金の制度は、公的年金の上乗せとして利用される私的年金で、企業型確定拠出年金と、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の2つがあります。今回の年金制度改正法により、この確定拠出年金の制度も大きく変わることになります。
加入可能年齢の引上げ
確定拠出年金の制度は企業型、個人型ともに加入できる年齢の上限が決められていますが、高齢者の就労の拡大を踏まえ、加入可能年齢が以下のとおり引き上げられることとなりました(2022年5月適用開始)。
(企業型の場合)
現行は厚生年金被保険者のうち65歳未満の方が加入対象となっていますが、厚生年金被保険者であれば70歳まで加入できることとなります。
(個人型の場合)
現行は60歳未満となっていますが、改正後は任意加入制度に加入しているなど、国民年金被保険者であれば60歳以降でも加入でき、65歳まで加入することができます。
受給開始時期の選択肢の拡大
企業型および個人型ともに60歳(もしくは加入資格喪失後)から75歳までの間で受け取りを開始することが可能となります(現行制度は60歳から70歳までの間)。ただし、確定拠出年金の加入資格を喪失した後、老齢給付金受給開始までは運用の指図のみを行うことになります(2022年4月適用開始)。
加入要件の緩和
現行の制度では、企業型確定拠出年金加入者で、個人型確定拠出年金に加入できるのは、労使合意に基づく規約の定めがあり、かつ事業主掛金の上限を引き下げた企業の従業員に限られています。しかし、今後は規約の定めや事業主掛金の引き下げがなくても、原則として個人型確定拠出年金に加入することができることとなります。ただし、マッチング拠出を行っている人は引き続き対象外となります(2022年10月適用開始)。
平均寿命の延びとともに、今後の更なる少子高齢化のことを考えると、老後の生活における必要資金は公的年金そして私的年金の制度を上手に活用しながら、さらに不足部分を自助努力で準備する必要があります。そのような意味でも、パート勤務の方が厚生年金保険に加入できる機会が拡大されたことや、私的年金である確定拠出年金の加入年齢および加入要件が見直されたことは大きな意味があるといえます。現在用意されている公的年金制度や私的年金制度の概要をしっかりと理解し、今回の改正内容についても、自身に当てはまる部分についてはきちんと確認しておきましょう。そして、年金制度については今後も改正が続くことが予想されますので、年金制度に関するニュースをチェックするとともに、今後の動向についてもいち早く情報を取り入れるようにしていきましょう。
※本ページに記載されている情報は2021年12月16日時点のものです。