年末が近づいてくると、生命保険料控除の手続きを忘れないようにしなくてはという声が聞こえ始めます。生命保険料控除とは、税金の負担を減らせる所得控除のひとつです。生命保険料控除の基本について簡単にご紹介します。
税金を減らせるってホント?
生命保険料控除の基本をおさらいしよう!
2021年11月1日
生命保険料控除とは?
税金を軽減してもらえる控除のひとつ
年末調整の時期になると、生命保険料控除が気になり始める方が少なくありません。控除とは「一定の金額を差し引く」という意味です。生命保険に加入していると、支払った保険料のうちの一定額を、所得税を決める所得金額から差し引くことができます。
その結果、所得税と住民税を減らせる仕組みが生命保険料控除です。生命保険には公的な保障を補う役割がありますから、税金を払う計算のときに配慮してもらえるというイメージです。
所得税は、収入金額そのものにではなく、収入から認められた必要経費を差し引いた所得にかかります。さらに納税者の個人的な事情を加味して税負担を調整するための所得控除があり、これを差し引くことができるとされています。
つまり所得税は、所得から所得控除(生命保険料控除の医療費控除や地震保険料控除、寄付金控除などがあります)などが控除された後の所得金額に課されるのです。
保険金受取人が自分または一定の親族である契約が対象
生命保険料などの控除については、申告が任意であり罰則はありません。しかし、税金を減らせるため、申告するケースが一般的です。
なお、どんな契約でも保険料を支払っていればいいというわけではありません。生命保険料控除を受けられる保険契約には、下記のとおり条件があります。
【一般生命保険料控除・介護医療保険料控除の場合】
保険金の受取人が契約者か配偶者、その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)であること
【個人年金保険料控除の場合】
下記すべてを満たすこと
・年金受取人が契約者または配偶者
・年金受取人と被保険者が同一人
・保険料払込期間が10年以上
・確定年金や有期年金の場合は年金受取開始が60歳以降、受取期間10年以上
出典:公益財団法人生命保険文化センター(https://www.jili.or.jp/knows_learns/basic/tax/22.html)
生命保険料控除の手続きは?
会社員と自営業者で手続き方法が異なる
生命保険料控除手続きの方法は、会社員など給与をもらう働き方をしている方と、自営業など給与所得者以外の方とで異なります。
【会社員など給与をもらっている方】
生命保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書を勤務先に提出します。会社によってはオンラインの電子データ送信を受け付けている場合もあります。給与天引きで保険料を払い込んでいる方は提出不要です。
【自営業者など給与所得者以外の方】
確定申告の際に生命保険料控除証明書を添付します。e-TAXで電子申告する方は添付を省略できます。証明書をオンラインでデータ送信することもできます。
契約時期によって控除の分類が変わる
生命保険料控除には、契約時期によって控除の分類が変わる特徴があります。生命保険料控除をわかりづらくさせている原因のひとつとなっていますが、制度が改正されたためにこのような状態になっています。しかし、これらを覚える必要があるわけではないため、難しく考えず、自分の契約した保険がどれに該当するか知っておくだけでよいでしょう。
それぞれの分類に上限が設けられていますが、所得税については合計額が12万円を超える場合は12万円、住民税については合計額が7万円を超える場合は7万円と合計控除額にも上限が設けられています。
【2011年12月31日までの契約分:2つの控除枠】
・旧生命保険料控除、旧個人年金保険料控除の保険料控除額
それぞれ所得税上限50,000円、住民税上限35,000円
【2012年1月1日以降の契約分:3つの控除枠】
・新生命保険料控除、介護医療保険料控除、新個人年金保険料控除の保険料控除額
それぞれ所得税上限40,000円、住民税上限28,000円
不明なときは生命保険会社へ問い合わせ
なお、2012年1月1日以降に保険契約の更新や転換、特約付加などをした旧契約も、内容により新制度の対象となる場合があります。年末が近づくころに生命保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書を見ると、契約した保険が、どの控除に分類されるか、どの控除にいくら該当しているのか具体的にわかります。
証明書が送られてくる前に契約している保険がどの控除に分類されるか気になるときは、保険会社に問い合わせれば教えてもらえます。特約の名称等で分類がわかりづらいケースもありますから、気軽に問い合わせてみてください。
出典:公益財団法人生命保険文化センター
(https://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/tax/560.html)
よくある質問
保険料控除の金額がそのまま還付されるの?
生命保険料控除は、所得税額が減ることで税金を減らせる仕組みです。控除された金額がそのまま還付されるわけではありません。所得金額に応じた税率がかけられて所得税が決まるため、大まかなイメージでいうと、控除される金額×所得税率の分を減らせることになります。
そのため、税金を減らせるからと生命保険料控除の上限金額に合わせて契約する生命保険の保険料を決めるのではなく、必要な保障のために生命保険を契約し、副産物として生命保険料控除を利用するという考え方がよいでしょう。
妻が契約者で夫が支払っていたら?
生命保険の契約には、契約者、被保険者、受取人があります。被保険者と契約者が同じであったり違ったりといった具合で、契約の仕方は人によりさまざまです。
そこで、妻が契約者で夫が保険料を支払っている場合に、夫の生命保険料控除になるかどうかといったご質問もあります。これに対し、国税庁では「その保険金等の受取人のすべてをその保険料の払込みをする者又はその配偶者その他の親族とするものをいい、契約者が誰であるかは要件とされていません」とし、夫の生命保険料控除の対象であるとしています。
出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140_qa.htm#q1)
住民税のほうでの控除手続きは?
所得税を減らすためには生命保険料控除の申告が必要でしたが、住民税の控除のための手続きはどうなるのかと気になる方もいるでしょう。
所得税の生命保険料控除の手続きをすると、住民税の控除にも反映される仕組みとなっているため、特別な手続きは必要ありません。なお、住民税は前年の所得額によって税額が決まる仕組みです。そのため、生命保険料控除分は、翌年の住民税の計算時に反映されます。
※本ページに記載されている情報は2021年10月19日時点のものです