勤務先を選ぶ際に福利厚生制度の充実度合いを気にする方もいるのではないでしょうか。そもそも福利厚生制度とはどのようなもので、具体的にどのようなサービスを受けられるのかを知っておくことは大切です。今回は福利厚生制度の内容について解説します。
上手に使いこなそう!
勤務先の福利厚生制度にはどんなものがある?
2021年8月18日
福利厚生とは?
福利厚生とは、会社がそこで働く人やその家族に対して提供する、給与以外のものやサービスのことで、以下の2つに分類されます。
法定福利
法律によって定められた福利厚生のことで、私たちのための健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの保険料を会社負担してくれることを指します。
法定外福利
会社が独自で導入するもので、企業で働く人のモチベーションアップや生活の質の向上を図ったり、採用時のアピールポイントにしたりという目的があります。身近なところでは、社員食堂や住宅手当、家族手当や社宅および寮なども含まれます。
したがって、「福利厚生制度の充実」という言葉は、法定外福利の充実のことを指します。
法定外福利の内容とは?
法定外福利については企業によって内容が異なるものの、代表的なものは以下の3点になります。
健康保険の付加給付
勤務先の健康保険が組合健保であれば、まず確認しておきたい点です。ちなみに組合健保とは、保険証の保険者名称が「〇〇健康保険組合」となっているものです。
現在、現役世代の医療費の自己負担は3割となっていますが、この自己負担額が高額になった際には「高額医療費制度」を利用し、所得に応じて医療費の支払い負担を抑えることができるようになっています。
そして、付加給付では、この制度に健康組合独自で負担を上乗せし、給付を行うことで、医療費の自己負担額をさらに抑えることができる仕組みとなっています。
健康保険組合からの付加給付は会社によって異なりますが、実際にそのような制度があるのかどうかをきちんと確認しておくことが大切です。
なぜなら、そのような制度があるのであれば、現在加入している民間の医療保険の見直しにもつなげることができるからです。給付額から最終的な負担額を計算することで、もしも必要以上の保障をつけているのであれば、それを外すことで保険料の削減になります。
団体保険
一般的な生命保険と異なり、団体保険とはその会社に勤める人とその家族だけを対象としたグループ保険となっています。メリットとしては、
・保険の仕組みがシンプルである
・保険料が割安である
・加入要件や比較的緩い
ことが挙げられますが、以下のような注意点があることも覚えておきましょう。
・会社に勤めている期間しか契約することができない
・1年更新のタイプが多いことから、途中で大きな病気をすると更新できない可能性がある
団体保険は加入できる期間が限定されているため、あまり知られていませんが、気になる方は一度確認してみることをおすすめします。
社内預金・財形貯蓄
資産運用を始めたいけれど、いきなり投資信託などの投資商品を購入するのは怖いと考える方や、確実に増やしていきたいと思われる方は、このような給与天引きで先取り貯蓄ができる社内預金や財形貯蓄を考えてみるとよいでしょう。
社内預金の金利は最低でも0.5%と定められています。現在、普通預金の金利は0.001%ですから、500倍の利率ということになります。また、引き出しや使い道の制限がない点も魅力といえます。
財形貯蓄には、使い道が自由である「一般財形」と、使い道が限定されてはいるものの、非課税などのメリットがある「財形住宅」や「財形年金」があります。それぞれに積立期間などの要件がありますので、気になる方は勤務先に確認してみましょう。
社内預金については、その金利の高さから非常に魅力的ではありますが、導入している企業はあまり多くないのが現実です。財形貯蓄については、「増やす」という概念で考えると厳しい面がありますが、先取りで貯めていきたいという方には利用するメリットはあるといえます。
その他の法定外福利と今後における注意点
法定外福利には、上に挙げた3つ以外にも「人間ドックの受診費用補助」や「資格取得祝い金」など、さまざまなものがあります。その内容については、勤務先で配られる福利厚生に関する冊子や、労務部門などの担当部署や労働組合などを通して確認することができます。時間があるときに一度どのような法定外福利制度があるのかどうか確認しておくとよいでしょう。
そして、このような法定外福利制度は「今後削減されてしまう可能性がある」という点はしっかりと覚えておきましょう。高齢化などが原因で健康保険組合が財政難になり、解散に追い込まれるケースも増えてきています。もしも解散した場合はその会社に勤めている方は「協会けんぽ」に加入することになります。そうなると、上で説明した健康保険の付加給付は受けられなくなってしまいます。
会社では従業員のために費用を負担して法定外福利を維持していますが、その削減は給与カットや従業員のリストラよりもハードルが低いことも事実です。現在のコロナ禍などにより、会社の財政状況が難しくなった場合には、コストカットのために法定外福利がいつの間にかなくなっていたという可能性もゼロではないことを覚えておく必要があります。
※本ページに記載されている情報は2021年7月16日時点のものです。