お金を借りていて返済しなければならないけれど、どうしてもお金の工面ができない。もう自己破産するしかない?と考える人は多いと思います。確かに自己破産は借金の返済に困ったときに利用される法的手段ですが、借金の返済に困った時に利用できる「債務整理」といわれる法的手段は他にもあります。今回は債務整理の種類とその内容について解説します。
自己破産だけではない!
借金返済に困ったときの法的手段とは?
2020年8月24日
法的手段は4つ
借金の返済に困った際に利用できる法的手段は4つ存在します。必ずしも、自己破産しなければならないというわけではありません。借金の程度や、今後どのように返済していくかによっても変わってきます。
1.任意整理
個々の債権者と任意の話し合いを行い、返済方法について合意するものです。任意整理を行うにあたっては、弁護士などに依頼するのが一般的です。利息制限法に基づく債務の減額や将来の利息の減免などを債権者と話し合い、支払い総額を少なくしたうえで、3年から5年をめどに完済する約束をするのが、任意整理といわれるものです。他の債務整理の方法と比べて短期間で終わり、同居している家族に知られずに行えることがメリットです。
2.個人再生
債務総額を法律の規定により算出される金額(小規模の個人再生手続きでは債権総額の1~2割で、最低100万円)に減額し、原則として3年、最長5年間で全ての債権者に平等に返済していく方法を個人再生といいます。これは地方裁判所の手続きとなり、裁判所に返済計画を提出し、認められた計画通りに返済すれば、残りの借金が免除されます。
後に述べる自己破産とは違い、資格を失ったり、弁護士や税理士などの資格を取ることができなくなったり、特定の職業に就けないといった制限もありません。また、免責不許可事由がないことから住宅を失う心配もありません。そして任意整理とは違い、同意しない債権者にも等しく効力が及ぶことも特徴です。
個人再生の一番のメリットは一定の条件をクリアすれば自宅などの財産を失わないということです。自宅を失わずに、債務の大幅な減額ができるところは注目すべき点といえます。
3.特定調停
借金の返済をするために工夫された、簡易裁判所の調停手続きの事を特定調停といいます。裁判所に申し立てをすると、話し合いの期日が指定され、指定された日に調停委員が申立人の生活や収入の状況と債権者の考えに基づき、双方の意見を聞きながら調整を行い、返済金額や返済方法について合意に導いていくという方法です。弁護士に依頼せずに手続きができるので、費用を安くできるというメリットがあります。
4.自己破産
保有する財産の全部を債務の返済に充て、それでも借金が残る場合に、その支払いを無しにするという地方裁判所の手続きを自己破産と言います。支払いをなしにする、つまり免責を認めてもらうためには、破産手続き開始決定とは別に、裁判所で免責許可決定を得る必要があります。この時に財産を隠したり、嘘の説明をしていたりしなければ、基本的には免責が認められ、税金や一定の種類の債務を除いた部分の借金の支払いがなしになります。
なお、自己破産の場合、財産の全てを返済に充てる必要があると誤解されがちですが、生活に必要な家財道具まで処分されることはありません。また、生活費として99万円までの現金を持つことも認められています。自己破産の最大のデメリットは官報へ掲載されることです。そのため、誰にでも知られてしまうというリスクがあります。他にも同居している家族に知られることはもちろん、職業制限を受けることにもなります。
とはいえ、税金等の滞納などを除く債務が無しになることは、これまで説明した4つの法的手段の中で一番のメリットとも言えます。また、必要最低限の生活に必要な財産は残せるため、本気でゼロから生活をやり直す意味では最適といえるでしょう。さらに、自己破産の手続きをすると債権者は給料の差押えなどの強制執行ができなくなるので、給料がとられてしまい生活できなくなる心配もなくなります。
借金の返済が予定通りに行えなくなると、精神的に追い詰められます。しかし、そんな時は決してひとりで抱えることなく、まずは消費生活センターや弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。秘密は守られるので、少しでも早く相談することが大切です。
ここまで4つの法的手段について説明しましたが、どれが一番合っているのかはケースによって異なります。したがって、きちんと相談し自分に最適な方法で解決していくようにしてください。
(※本ページに記載されている情報は2020年7月3日時点のものです)