サラリーマンなら誰でも必ず利用できる給与所得控除。この給与所得控除が2020年1月から変わったのは知っていますか?そして、それによって手取りはどう変わるのでしょうか。
給与所得控除について最新情報をお伝えします。
給与所得控除ってなに?
2020年からの変更点は?
2020年2月6日
給与所得控除って?
給与所得控除とは、一言で言うと、公務員や会社員などの給与所得者の給与から一定額を差しくことができる控除額のことを言います。
個人事業主などは、収入から経費を差し引いた「所得」に対して税金がかかります。給与所得者も仕事用にスーツやパンプスを購入したり、ペンやノートを購入したり何かと経費がかかりますよね。そのため、給与所得者にも経費分を控除しましょう、というものが「給与所得控除」です。
つまり、給与収入から給与所得控除を差し引いたものが「給与所得」です。
そして「給与所得」から、その人それぞれの事情に合わせて所得控除を行い、最終的に残った「課税所得」に対して税金がかかるというわけです。
「所得控除」は人それぞれの事情とお伝えしましたが、人によって控除できるものもあればできないものもあります。でも、「給与所得控除」は給与所得者全員を控除することができ、この給与所得控除の金額の計算方法は給与の額によって決められています。
2020年からどう変わる?
給与所得者なら誰でも控除できる「給与所得控除」
同じ控除してもらえるのであれば、少しでも多く控除してほしいですよね。
給与所得控除の変更点は?
でも、2020年1月から、この「給与所得控除」の額が一律10万円引き下げられることになりました。 年収850万円を超える場合は控除額の上限が195万円になり、実質10万円以上の引き下げになります。
控除額が引き下げられるということは、課税対象となる「給与所得」が多くなるということ。つまり、増税になります。
ただし、22歳以下の子どもがいる子育て世帯や障害者がいる人は対象外になります。
源泉徴収票でシミュレーション
1月の給与明細と共に、昨年度の給与所得の源泉徴収票をもらったと思います。
源泉徴収票を見ると、「支払金額」の右側に「給与所得控除後の金額」という欄がありますね。今年同じだけ給与が支給されたとしたら、この「給与所得控除後の金額」が2020年は10万円多くなるということです。
国税庁のHP給与所得控除の表に当てはめて計算してみましょう。(出典:国税庁)
仮に、2019年の給与収入が500万円だとします。
2019年の給与所得控除額は500万円×20%+54万円=154万円です。給与所得控除後の金額は500万円-154万円=346万円です。
でも、2020年の給与所得控除額は500万円×20%+44万円=144万円となり、給与所得控除後の金額は356万円となります。
課税される大元が2019年より10万円多くなっているのがわかりますね。
基礎控除も改正される
今までは、給与所得控除についてみてきました。
今回の税制改正では、給与所得控除と共に基礎控除も改正されます。
基礎控除は給与所得からさらに差し引くことができる所得控除の中の1つで、2019年までは一律38万円控除されていましたが、2020年からは最大48万円の控除に引き上げられました。ただし、合計所得金額が2,400万円を超えると基礎控除額は段階的に引き下げられ、2,500万円を超えると基礎控除額は0円になります。
つまり、給与所得控除の引き下げと合わせると、年収850万円までは今までと比べて増税にはなりません。
今年の年末調整の変更点は?
これらの税制改正によって、2020年の年末調整はどのように変わるのでしょうか。
「所得金額調整控除」の創設
先ほど、会社員や公務員などの給与所得者で年収850万円を超えても、22歳以下の子どもがいる子育て世帯や障害者がいる人は対象外になるとお伝えしました。 そのために新しく「所得金調整控除」が創設されます。
具体的な計算方法は、総所得金額を計算する時に「給与等の収入金額(収入金額が1,000万円超の場合は1,000万円)-850万円×10%」を給与所得の金額から控除します。この控除を受けるためには、「給与所得者の所得金額調整控除申告書」を提出する必要があります。
2020年の年末調整の用紙は今までと様式が変わるということを今から頭に入れておいてくださいね。
年末調整手続きの電子化
年末調整では、今まで保険会社等から送られてきた控除証明書の内容を保険料控除申告書等の書類に記入して、控除証明書と一緒に会社に提出する必要がありました。
2020年の年末調整からは手続きが電子化される予定です。
控除証明書は保険会社のホームページから取得するか、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」で取得することができます。
ただし、マイナポータルのアクセスにはマイナンバーカードが必要なので、利用を考えている人は早めにマイナンバーカードを取得しておくといいでしょう。
給与所得者なら、誰にでも関係がある「給与所得控除」
実際は増税にならないという人も、どのような変更があったのかという知識は持っておきたいですね。
(※本ページに記載されている情報は2020年2月6日時点のものです)