シングルマザーにおいては「経済困窮に陥る可能性が高い」という観点から、2019年度の税制改正にて具体案が取り上げられることとなりました。それが「ひとり親制度への支援措置」といわれるものです。では、現状のシングルマザーへの税制支援はどのような状況なのか、そしてそれがどのように改正されるのかについて説明します。
今後どう変わる?
ひとり親制度への支援措置の現状と改正点
2020年1月9日
現行の寡婦(寡夫)控除について
シングルマザーといっても、そのパターンは様々で、「未婚」である場合もあれば「離婚」である場合もあります。更には「死別」である場合も含まれます。そして冒頭で述べたような「経済困窮に陥る可能性が高い」という要因の一つが『子育てと就労の両立の困難さ』である点については、「未婚」「離婚」「死別」のどれかであっても変わるものではありません。
しかし、現行の所得税法上の寡婦(寡夫)控除の規定は、「離婚」もしくは「死別後に婚姻しなかった場合」と定義されており、「一度婚姻関係にある」ことが前提 とされています。現在の寡婦(寡夫)控除の類型について、以下にまとめましたので参考にしてください。
現行の寡婦(寡夫)の類型
原因 | 扶養家族の有無 | 所得制限 | |
寡婦控除 | 離婚・死別後婚姻せず | 扶養親族または扶養親族である子を有する | なし |
死別後婚姻せず | なし | 合計所得金額500万円以下 | |
特定の寡婦 | 離婚・死別後婚姻せず | 扶養親族である子を有する | 合計所得金額500万円以下 |
寡夫控除 | 離婚・死別後婚姻せず | 扶養親族である子を有する | 合計所得金額500万円以下 |
※国税庁資料:寡婦控除・寡夫控除に基づき筆者が作成。死別原因には生死不明も含む。
この表を見ると、「未婚のシングルマザー」に対する控除については規定されておらず、対象外となっています。この問題点を解消するために、今回の税制改正を行うこととなりました。具体的には「住民税の非課税規程に未婚のシングルマザーを含める」 といったものです。
現行の「ひとり親支援制度」の概要
今回の改正の対象となるのは、住民税の所得割及び均等割ともに非課税となる規程に関するものです。その規程の要件は
1.生活保護法による生活扶助を受けている
2.障害者、未成年者、寡婦または寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下
3.前年中の合計所得金額が、市区町村の条例で定める額以下
(1)同一生計配偶者および扶養親族がいない場合・・・35万円以下
(2)同一生計配偶者および扶養親族がいる場合・・・次の式で算出した額以下
35万円×(本人・同一生計親族・扶養親族の合計人数)+21万円 となっています。
従って現行の制度では、子供一人の未婚のシングルマザーであれば、前年中の所得が35万円×(本人+子供1人)+21万円の91万円、パート収入者であれば年収ベースで156万円以下であれば、対象となることになります。
これに対し、同じシングルマザーでも一度婚姻関係にあった場合では、前述の「2.障害者、未成年者、寡婦または寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下」に該当することとなり、パート収入者であれば年収ベースで204万4千円以下であれば対象となることから、明らかに差がみられることになります 。
改正によってどう変わる?
そこで、今回の改正では「未婚」と「一度婚姻関係がある」という垣根をなくし、前年中の合計所得金額が125万円以下であれば、所得割及び均等割共に非課税とする基準を設けました。
適用開始時期と今後の動きについて
この改正については2021年度分以降の住民税について適用となります。また、非課税措置について改正されただけであることから、所得税法の寡婦(寡夫)控除の規定は従来通りのままで、所得控除については引き続き差がみられることとなります。
これについては今後の検討課題として挙げられており、2020年度税制改正において検討し、結論を得るとされていることから、今後、所得控除における寡婦(寡夫)控除についても改正が入ることが予想されます。
(※本ページに記載されている情報は2020年1月9日時点のものです)