2018年度の税制改正を受けて、2020年1月から、所得税に適用される基礎控除および給与所得控除、公的年金等控除の控除額が変わります。我々の生活にどの程度影響するのか、所得税改正の改正内容とポイントを分かりやすくお伝えします。
2020年度からの所得税改正は我々の生活にどう影響する?ポイントを解説!
2019年12月15日
基礎控除が10万円引き上げられます
これまで、所得税における基礎控除は38万円でしたが、今回の改正で、10万円引き上げられて、48万円になります。また、今までは、すべての納税者の所得から無条件で38万円が控除されましたが、改正後は所得制限が設けられます。2,400万円超から段階的に控除額が引き下げられ、2,500万円を超えると控除額が0となります。
給与所得控除が10万円引き下げられます
一方で、給与所得者のみなし必要経費と言われる給与所得控除は、10万円引き下げられます。また、今までの上限額だった収入金額1,000万円超の場合の220万円の控除額が、改正後は収入金額850万円超が上限となり控除額も195万円と大幅に引き下げられます。
新たに所得金額調整控除が設けられます
今回の改正で控除額の上限が195万円に下げられたため、給与収入が850万円を超える人は負担増となります。そこで以下の条件に当てはまっている場合には、負担をやわらげるための調整控除が適用されます。
・特別障害者に該当する人
・23 歳未満の扶養親族がいる人
・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人
<所得金額調整控除の控除額>
(給与等の収入金額-850 万円)×10%
※給与等の収入金額が1,000万円を超える場合は1,000万円が上限
公的年金等控除が10万円引き下げられます
公的年金等控除も、給与所得控除と同じように10万円(※)引き下げられます。
※公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合。
また、これまで公的年金の収入金額にかかわる控除額に上限はありませんでしたが、今回の改正で公的年金収入が1,000 万円を超える場合は、上限が設けられます。さらに、公的年金以外の所得がいくらあっても、公的年金の控除額に影響はありませんでしたが、改正後は公的年金以外の所得金額が1,000万円超の場合は、段階的に引き下げ幅を大きくしています。
改正のポイントを整理
基礎控除が10万円引き上げられ、給与所得控除(850万円以下)および公的年金等控除(1,000万円以下)が10万円引き下げられるということは、実質的に変化はないということです。
考え方としては、給与所得控除または公的年金等控除の10万円が基礎控除に振り替えられたと言えるでしょう。
ただし、給与所得が850万円を超えた場合を考えると、基礎控除で相殺できる控除額よりも少なくなるため、税金負担が増えることになります。
例として、年収900万円の人の場合を考えてみましょう。
給与所得控除の額
現 行:900万円×10%+120万円=210万円
改正後:195万円
210万円-195万円=15万円
改正後は15万円控除額が減ることになります。
ここに基礎控除の10万円の増額を加味すると、所得税の控除額は5万円減ることになります。
所得税の税率を20%とすると、改正後は1万円所得税が増えます。
住民税を10%と計算すると、改正後は5,000円住民税が増えます。
合計で15,000円の負担増となります。
給与所得が850万円以下の人は、所得税改正の影響はなく、850万円を超える人は負担増となることがわかりました。また、今回の改正は給与所得控除(および公的年金等控除)と基礎控除であるため、自営業者やフリーランスの人にとっては基礎控除の引き上げのみが関係します。そのため改正後は税負担が軽くなると思われます。
今回の改正では、今まで上限を設けなかったことで優遇されていた高所得者の税負担が増えることが影響としては大きいようです。平均的年収の人たちにとっては、変わりないか、税負担が減ることもあるので、改正は喜ばしいと言えるかもしれませんね。
(※本ページに記載されている情報は2019年12月15日時点のものです)