企業にお勤めの方であれば、12月は年末調整の時期です。これまでの経験で12月の給与明細を見た際、戻ってくるお金の額の多さによってはびっくりするとともに嬉しく思われた方も多いのではないでしょうか?しかし、そもそも「年末調整」ってどんな仕組みで、なぜお金が戻ってくるのかを正しく理解できていますか?今回はその仕組みと流れについてお話したいと思います。
年末調整ってどんな仕組み?
なぜお金が戻ってくるの?
2019年11月8日
年末調整の仕組み
企業にお勤めの方であれば、毎月のお給料から2つの税金が引かれています。一つは「所得税」、もう一つは「住民税」と言われるものです。では、この2つの税金についてもう少し詳しくみていきましょう。
毎月のお給料から引かれている「所得税」
所得税とは国に納める税金です。納める税金の額はその年の1月1日から12月31日の所得に応じて決まります。
毎月のお給料から引かれている「住民税」
住民税とはその年の1月1日の時点で住んでいる住所地に対して納める税金です。納める税金の額は所得税の計算とは違い、「前年の1月1日から12月31日までの所得 」に応じて決まります。
しかし、ここで疑問が生じます。だって、その年の所得に応じて決まるといわれているのに、既に毎月のお給料から引かれているのはおかしな話 ですよね。一体どういう計算で決めているのでしょうか。
年末調整の対象となるのは「所得税」
毎月のお給料から所得税を引かれる段階では、まだ「その年の年末(12月31日)までの所得がいくらになるか」は分かりません。従って、お勤め先では年始(1月1日)に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出するように言ってくるはずです。
会社はこの申告内容を基に、私たちの家族構成(扶養家族の有無や人数)を確認します。そして、その内容によって仮計算した所得税額を毎月のお給料から天引きしていくのです。これを源泉徴収と言います。源泉徴収の税額については、国税庁のホームページで確認できますので、会社側はそれを基に計算しています。
もちろん、年始に提出した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」については、家族構成等に変更があればその都度申告しなければなりません。
そして12月になると、会社はその年のお給料を合計し、更に社会保険料控除などの各種控除額を計算して、最終的な「今年の所得」および「所得税額」を確定するのです。
この手続きの事を年末調整と言います。ここで、「1月~12月のお給料から源泉徴収された所得税」と「年末調整にて計算した所得税」を比較し、年末調整額の方が低ければお金が戻ってくる(還付)というわけです。もちろん人によっては年末調整額の方が多くなる可能性もあります。
その場合はお給料から天引き(徴収)されることになります。 つまり、年末調整でお金が戻ってくる人は「これまでの1年間、本来納める所得税の税額よりも多く天引きされていた」ということです。
年末調整の流れ
では、年末調整に関する1年間の流れを見ていきましょう。
1.毎年1月に「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出。
2.それを基に会社が源泉徴収額を決定し、1~12月のお給料を支払う際に天引きする。
3.毎年11月下旬になると、「給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」および「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」を会社に提出(該当する方のみ)。
4.保険料控除やその他住宅借入金等特別控除の額を反映した最終的な所得と所得税額が確定。
5.12月のお給料の支払い時に源泉徴収額との差額を還付(もしくは徴収)。
という流れになります。
「所得」と「所得税額」の計算の流れ
「1月~12月の給与収入合計」-「給与所得控除」-「各種所得控除」=課税給与所得となります。これがいわゆる所得といわれるものです。そして次に速算表に基づいて、税額を計算します。そして、その税額から「税額控除(住宅ローン控除など)」を差し引いたものが所得税額となります。
年末調整について直接目にすることが出来るのは、「各控除のための申告書」と、12月に年末調整の結果として還付(もしくは徴収)される「所得税の精算額」だけですが、その裏では様々な情報の蓄積や計算が行われていることを是非知っておきましょう。
(※本ページに記載されている情報は2019年11月8日時点のものです)