今年5月に、大学などの高等教育を無償化する「大学無償化法」が成立しました。
これからお子さんが大学進学を控えている方はもちろん、まだ結婚していなくても将来お子さんが欲しいという方など、「自分のライフプランにお子さんの教育費が入ってくる方」は、是非一度どんな法案か知っておいてください。
自分にも関係あるの?大学無償化法成立
2019年8月21日
1.大学無償化とは
まずは、大学無償化とはどんな制度なのか見てみましょう。
1)大学無償化法
2019年5月に成立した、高等教育の無償化に向けた法案で、2020年4月から低所得者層の学生は学費免除・減額、返済不要の奨学金を受給できるようになります。
高等教育の対象となる学校は、大学、短大、高等専門学校、専門学校です。
2)対象となる世帯と内容
支援してもらえる減免額は、世帯の所得、学生の進学先、生活場所(自宅か下宿か)によって異なります。
ⅰ)世帯所得が270万円未満(住民税非課税またはそれに準じる世帯)
授業料は最高で26万円(国公立大学)・入学金は最高で70万円(私立大学)減免
返済不要の奨学金は最高で91万円給付
ⅱ)世帯所得が270万円以上300万円未満
授業料・入学金、奨学金の減免額は、ⅰ)の3分の2
ⅲ)世帯所得が200万円以上380万円未満
授業料・入学金、奨学金の減免額は、ⅰ)の3分の1
3)成績不良の場合は支援打ち切り
ただし、修得単位、成績、出席率で基準に満たなかった場合は、支援が打ち切りになります。
さらに、特段の事情がなく、退学処分、修業年限で卒業できない、修得単位数・出席率が著しく悪い場合は、それまでに受けた支援の返納も求められます。
これは、貧しい人を支援するのではなく、進学して勉強したい人を支援することが本来の目的であるためです。
2.だれがどんな影響を受けるか
では、この法案によって、誰がどんな影響を受けるのでしょうか。
1)低所得世帯
低所得世帯は、無償化の対象となる世帯で、お子さんが進学の際に支援を受けられます。
文部科学省・学校基本調査(2018年)によれば、学費が理由で4年制大学に進学しない高校生は46.4万人となっています。そのため、このうちのかなりの数の人たちが、支援があれば大学に進学することが予想されます。
2)中所得者世帯
大学無償化法は低所得世帯が対象であるため、380万円以上の所得があるけれども、子どもを進学させるには十分な余裕がない中所得世帯は今までと変わりません。
大学側がこの不公平感を埋めるために新たな奨学金制度を始めるかもしれませんが、今のところ未定です。
3)学生
進学者が増えることが予想されるため、人気のある大学では競争率が高くなることが予想されます。
大学無償化とは言っても学費がすべて無償になるわけではないので、比較的学費が安く済む国立大学は特に希望者が増える可能性があります。
4)大学・専門学校
進学希望者が増える大学と、学生集めに苦心する大学と、格差が開いていくと考えられます。
また、4年制大学に流れていく人が増えると、人数が集まらない専門学校が増えることも予想されます。
5)企業
労働研究・研修機構の「学歴別の生涯賃金差」(2014年)によれば、高卒の生涯賃金は約2億4500万円、大学・大学院卒は約3億2000万円で、7500万円ほどの差があります。
そのため、学生は大学進学を望む一方で、企業側は安い賃金で雇える高卒社員の人材確保が難しくなってくるでしょう。
3.自分が考えておくべきこと
これらを踏まえて、自分は何をしておいたらよいのでしょうか。
1)子供の教育は今からライフプランに組み込む
今お子さんがいなくても、将来お子さんを持ちたいと考えている人は、今から自分のライフプランに子どもの教育費を組み込んでみましょう。
今の仕事を続けた場合自分でどれくらいの貯金ができるのか、子どもを大学まで進学させた場合総額でどれくらいかかるのか、早いうちに調べておくとライフプランが立てやすくなります。
そして、例えば、自分がシングルマザーになった場合は、この大学無償化法の対象者となる可能性もありますので、その場合にも備えて計算しておくと、いざという時に慌てなくて済みます。
2)パートナー、子どもとコミュニケーション
今、結婚されている方、お子さんがいる方は、パートナー・お子さんとしっかりコミュニケーションを取りましょう。
まずは、お子さんがどういう方向に進みたいのか、そのためにどれくらいお金がかかるのか、万が一収入が減った場合、大学無償化法の対象になるのか、それまでにどれくらい貯金をしておくのかなど、家族で話し合っておきましょう。
子どもの教育費は、家計で大きな割合を占めます。少なくともお子さんが生まれる前までに、お子さんに関する補助金・手当、学資保険、教育費などについて、一度調べておくことをおすすめします。
(※本ページに記載されている情報は2019年8月21日時点のものです)