突然入院することになったとき、心配なのはお金のこと。治療や手術をするとなると、いくら請求されるのかわからず、病気のことよりお金の工面に頭を悩ませてしまう人もいるかもしれません。そんなときに持っておきたいのが「限度額適用認定証」。安心して治療に取り組めるように「限度額適用認定証」の仕組みやどこに申請すれば良いのか知っておきましょう。
限度額適用認定証はどこでもらう?
急な入院でも慌てないために知っておこう
2019年8月6日
限度額適用認定証とは?
限度額適用認定証という言葉を聞いたことがない人も、聞いたことはあるけどよくわからない……という人もいると思います。
限度額適用認定証について説明する前に、少しだけ健康保険の「高額療養費制度」にふれておきましょう。
日本の(国民)健康保険制度では、年齢や所得金額ごとにひと月(1日から月末まで)当たりの医療費の自己負担限度額が決められています。例えば70歳未満の人の場合、
- ・年収が約370万円までの人:自己負担限度額は「5万7,600円」
- ・年収が約370万円~約770万円の人:自己負担限度額は「8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%」
その後も年収が増えるにつれて自己負担限度額も上がっていきますが、自分の年収に応じた限度額よりも多い医療費を支払った場合、自治体の担当窓口や健康保険組合などに請求すれば払い過ぎの部分を還付してくれるというのが「高額療養費制度」です。詳しくは「医療費を大幅に下げる!高額療養費申請書の書き方、もらい方」の記事で紹介しています。参考にしてみてくださいね。
さて、「請求すれば」と述べたように、原則として、高額療養費制度は「後から還付」してくれるもの。一時的だとはいえ、多額の費用を立て替えるのは負担です。そこで、その立て替え負担をしなくていいよう「限度額適用認定証」というのがあります。あらかじめ「限度額適用認定証」をもらっておき、医療機関で会計時にそれを提示すれば、高額療養費制度で後から還付されるべき金額を引いた自己負担限度額までを支払いすればいいことになるのです。
なお、月末近くに入院する場合で交付が翌月になった場合は,入院日から限度額適用認定証を提出するまでの期間分は、限度額適用認定証の利用が認められない場合があるようですので注意してください。
限度額適用認定証はどこで、どうやって入手する?
限度額適用認定証は自分が加入している公的医療保険の保険者に申請して入手します。(国民)健康保険証に自分が加入している保険者名称が記載されています。
協会けんぽの健康保険に加入している人
協会けんぽの各都道府県支部へ申請します。健康保険証に記載されている「全国健康保険協会 ○○支部」の○○支部部分が申請先になります。
限度額適用認定申請書は、協会けんぽのWebサイトからダウンロードできます。
申請後、限度額適用認定証が発行され、郵送で届きます。発行にかかる期間は1週間が目安とされていますが、詳しくは管轄の都道府県支部に確認しましょう。
ダウンロードはこちら https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r121
勤務先の健康保険組合に加入している人
自分が加入している健康保険組合に限度額適用認定申請書を提出します。健康保険組合によっては独自のWebサイトからダウンロードできるところもあるようです。くわしくは会社の人事・総務担当者などに確認してみましょう。
国民健康保険に加入している人
居住している市町村役場の保険年金課など、担当窓口で申請します。
自治体によってはWebサイトから限度額認定申請書をダウンロードでき、郵送での受付が可能なところもあるようです。
なお、窓口に出向いて申請する場合、国民健康保険証やマイナンバー(個人番号)がわかる書類、印鑑、本人確認書類等が必要になりますので、揃えて持参しましょう。
限度額適用認定証が届くまでの期間は各自治体によりますが、2~3日で送付されてくるところもあるようです。
必要書類と合わせて、くわしくは管轄の自治体に確認してみましょう。
限度額適用認定証はどう使う?
医療機関の窓口(各ブロック受付または各病棟スタッフステーションなど)に(国民)健康保険証と一緒に限度額適用認定証を提出します。そうすることで、1ヵ月あたりの自己負担限度額までの金額で請求されるようになります。
とはいえ、そもそも高額療養費制度は入院中の食事代、差額ベッド代、健康保険が適用されない治療費などは対象となりません。その分の請求は 限度額適用認定証があっても支払いしなければならないことには注意しましょう。
やっぱり高額療養費制度の申請が必要な場合も
限度額適用認定証による保険医療機関窓口での負担軽減は、医療機関ごとで計算されます。また、同一医療機関でも、入院・外来(医科)・外来(歯科)は分けてそれぞれ計算することになっています。
病気の種類やケースによっては、同月内に複数の医療機関にかかることもあるかもしれません。そのような場合では、それぞれの病院で限度額適用認定証を利用することはできますが、それぞれの病院で自己負担限度額を支払うことになります。
例を挙げて見てみましょう。
Aさんの自己負担限度額は5万7,600円だとします。2019年7月にX病院に入院しましたが、病状からY病院への転院を進められました。転院する前にX病院で精算を求められ、X病院でかかった医療費は8万円。しかしながら、限度額適用認定証を提出していたため、支払ったのは5万7,600円で済みました。
Y病院では入院・手術を行い7月中の医療費は12万円。ここでも限度額適用認定証を提出したため、支払いは5万7,600円で済みました。
さて、Aさんはどちらの病院でも自己負担限度額の5万7,600円を支払いしていますが、よく考えてみると、2019年7月中に医療費として11万5,200円支払いしていることになります。そもそも高額療養費制度は「1人当たり、1ヵ月当たり」の自己負担限度額を決めているもの。それぞれの病院での自己負担限度額とは違います。
このような場合には、後日自分が加入している保険者(協会けんぽなど)に請求し、高額療養費の還付を受ける仕組みになっています。
有効期限の確認を忘れずに!
限度額適用認定証には有効期限があります。有効期限は保険者によってそれぞれ異なります。
たとえば、協会けんぽでは、限度額適用認定証の申請時に記載した療養予定期間(最長1年間)が有効期限です。そのほか健康保険組合では、3ヵ月のところもあれば1年のところもあるなどさまざまです。
有効期限を過ぎた限度額適用認定証は使用できませんので、交付を受けたらきちんと確認しておきましょう。
70歳以上の親がいる場合
高額療養費制度は69歳以下と70歳以上では自己負担限度額が異なります。また、原則として限度額認定証の提出は必要ありません。しかしながら、2018年8月診療分から、自己負担限度額が見直しされたのに伴い、現役並み所得者(年収約370万円~約1,160万円)は限度額認定証の提出が必要となりました。
親が入院した際などには所得の状況を確認し、必要があれば限度額適用認定証を申請するといいでしょう。
自分や自分の家族はどこに申請すれば良いのかあらかじめの知識があれば、急に入院することになっても慌てなくてすむでしょう。入院などが決まれば速やかに交付申請手続をしてお金の負担を和らげるようにしてくださいね。
(※本ページに記載されている情報は2019年8月6日時点のものです)