大学で学ぶ経済的問題をクリアするために奨学金制度を利用したいと思う人は少なくありません。日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度は代表的な奨学金制度として多くの学生に利用されることで有名です。
貸与型の奨学金を利用するときは、いくら借りられるかということとともに、どんなペースで返していけばいいのかということも大切な問題となります。
2017年4月から始まった返還の制度、「所得連動返還方式」について簡単にご紹介します。
奨学金を返すペースが楽に?
所得連動返還型奨学金制度って何?
2019年6月26日
所得連動返還型奨学金制度の対象者とは?
2種類の貸与型があるJASSOの奨学金
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、下記二つのタイプがあります。
・貸与型:奨学金を貸してもらい卒業後に返していく
・給付型:原則として返さなくてよい奨学金を給付してもらえるが住民税非課税世帯などが対象
また、貸与型の奨学金は、下記二つに分けられています。
・第一種奨学金:利息がつかない
・第二種奨学金:利息がつく
利息のつかない第一種奨学金を利用するためには、第二種に比べて厳しい学力基準や家計基準をクリアしなければなりません。
第一種奨学金を利用する人のみが対象
貸与型の奨学金を利用する人は、卒業後7カ月目から奨学金の返還をしていきます。そのときの返し方には、下記二つの方式があります。
・定額返還方式:借りた総額で毎月の返還額が決まる
・所得連動返還方式:所得金額で毎月の返還額が決まる
どちらの方式も、口座振替での返還となります。所得連動返還方式も選べるのは第一種奨学金を利用する人のみです。
月いくら返せばいいペースになる?
課税総所得金額の9%とは
所得連動返還方式で奨学金を返していく場合の毎月の返還額は、下記で決まります。
・課税総所得金額の9%を乗じて12で除した額
所得には給与所得のほか、不動産所得や一時所得など複数の種類があります。そのため総所得となっていますが、給与所得だけの人の場合は収入から給与所得控除や基礎控除、社会保険料控除などの分が引かれた金額と考えればよいでしょう。
課税総所得金額から所得税などの税金が引かれた後の金額が手取りとなるため、手取りよりは多い金額ではありますが、収入よりも低い金額からの割合で計算されるというイメージです。
なお、社会保険料控除や生命保険料控除などの控除金額は人によって異なるため、次に示す金額はあくまでも一つのモデルケースである点に注意してくださいね。
毎月の返還額の下限は2,000円
年収別の課税総所得金額で算出される9%の金額モデルケースは下記のとおりです。
【給与収入:課税総所得金額の9%から算出される1カ月あたりの返還金額目安】
・200万円:4,700円
・300万円:8,900円
・400万円:1万3,500円
・500万円:1万8,500円
・600万円:2万3,500円
出典:文部科学省(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shougakukin/main.htm)
10月から翌年9月までの1年間単位で返還額が見直される仕組みです。なお、返還金額の下限も定められており、2,000円となっています。
定額返還方式では年収200万円の人でも400万円の人でも貸与してもらった金額に応じた定額を毎月返済していかなければなりません。所得連動返還型方式にすると、所得の低い人が楽なペースで返せる様子がおわかりいただけるのではないでしょうか。
注意しておきたいこと
定額返還方式への変更は不可
第一種奨学金を利用する人は、貸与中に定額返還方式にするのか所得連動返還方式にするか変更することができます。しかし、貸与終了後には所得連動返還方式から定額返還方式へ変更することはできません。定額返還方式から所得連動返還方式への変更は可能です。
所得連動返還方式にすると返還のペースが楽になるものの、返還期間が長くなる可能性について心配する人もいるでしょう。定額返還方式であれば一定のペースで返還できるため、先の見通しがついて安心という考え方もありますよね。どちらの方式を選んだとしても繰上返還は可能です。
救済制度は利用できる?
所得連動返還方式を選択した場合に、救済制度を利用できるかどうかということも大事な問題の一つですね。
【所得連動返還方式と救済制度の関係】
・減額返還制度、返還期間(回数)変更制度を利用できない
・返還期限猶予制度(※)は利用できる
※災害や失業など返還困難なときに返還期限を猶予してもらえる制度
無利子の奨学金であっても、延滞してしまうと延滞金が賦課されてしまうので注意が必要です。延滞の心配があるときは返還期限猶予制度の利用を検討しましょう。
所得連動返還型奨学金制度は、楽なペースで奨学金を返せるという安心感を得られる制度です。しかし、返還総額が変わるわけではないため、先を見通しやすい定額返還方式のほうがいいという人もいます。家計やりくりとも関連するため、ケースバイケースですよね。
実家暮らしか一人暮らしかなどの生活状況によっても家計やりくりの大変さは変わります。負担が辛すぎず前向きに返還を続けられそうな自分に合った方式を選ぶようにするとよいでしょう。
(※本ページに記載されている情報は2019年6月12日時点のものです)