会社の辞め方には、大きく分けて会社都合と自己都合の二つがあります。
このとき、何となくのイメージだけで会社都合より自己都合のほうが、聞こえがいいくらいに思っていませんか。
実は、失業給付という面から考えると自己都合よりも会社都合のほうがメリットは大きいのです。
失業給付の面から見た会社都合離職と自己都合離職の話についてご紹介します。
会社都合退職のメリットとは?
失業給付を多くもらえて家計が助かる?
2019年6月21日
誰でももらえるというわけではない失業給付
会社を辞めることが決まったとき、辞めた後の生活費の心配をする人は少なくありません。そのため、当面の生活費のやりくりに役立つ失業給付の知識は重要です。
会社を辞める人にとっての大切な支援となる失業給付ですが、いつからもらえるのか、いつまでもらえるのかについて、よくわかっていない人もいます。
なお、会社を辞めたときに誰でも失業給付をもらえるのかというと、そうではありません。求職活動をしていながら就職できていないという人が対象であり、働く意思がない人には支給されないのです。また、働いていた期間が短い自己都合離職の人の場合にも、もらえないケースがあります。
失業給付にかかわる離職理由の分け方
一般的なケースと多くもらえるケース
私たちが一般的に認識している会社を辞める理由としては、会社都合と自己都合の二つがよく知られています。結婚や引っ越しなど、従業員側の事情で離職するケースが自己都合、倒産など会社側の事情で離職するケースが会社都合というイメージではないでしょうか。
しかし、失業給付面から考えると、この二つだけで多くもらえるかどうかが分けられているわけではありません。会社の辞め方と失業給付金との関係をざっくりまとめると下記になります。
・会社都合離職の人と自己都合離職の一部の人:失業給付を多く受けられる
・自己都合離職の上記以外の一般の人:一般的な失業給付を受けられる
・就職困難者といわれる人:失業給付を多く受けられる
まず、会社都合離職の人には失業給付を多く受けられるというメリットがあります。そして、自己都合でも一部の理由の人の場合は会社都合と同様の扱いにしてもらえます。
働いていた期間によっても失業給付は変わる
さて、上記の分け方をふまえた上で、働いていた期間(被保険者だった期間)によっても失業給付日数が変わるということも知っておきましょう。給付日数区分は次の3通りに分けられています。
見慣れない言葉である特定受給資格者と特定理由離職者の具体的な内容については次の項目で改めて触れますが、特定受給資格者は会社都合離職の人、特定理由離職者は自己都合離職のうち特定の理由がある人として見るとわかりやすくなります。
【失業給付の給付日数区分(特定受給資格者、特定理由離職者の一部)】
・1年未満:90日
・1年以上5年未満:90~180日(年齢により異なる)
・5年以上10年未満:120~240日(年齢により異なる)
・10年以上20年未満:180~270日(年齢により異なる)
・20年以上:240~330日(年齢により異なる)
【失業給付の給付日数区分(就職困難者)】
・1年未満:150日
・1年以上:300日(45歳未満)、360日(45歳以上65歳未満)
【失業給付の給付日数区分(上記以外の一般的な自己都合離職者)】
・1年以上10年未満:90日
・10年以上20年未満:120日
・20年以上:150日
上記のとおり、障害者などが対象となる就職困難者にも手厚く失業給付が行われています。
出典:ハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html#main)
特定受給資格者と特定理由離職者とは
特定受給資格者は失業給付金を多くもらえる
先ほど出てきた特定受給資格者や特定理由離職者についてですが、これらの区分は離職の理由別でされています。
特定受給資格者とは会社都合で辞めた人のことで、失業給付を多くもらえるよう優遇されています。
【特定受給資格者に該当する離職理由】
・倒産
・事業所廃止
・事業所移転(通勤困難)
・解雇
・労働条件が契約時の明示内容とかけ離れていた場合
・賃金の1/3超が支払期日までに支払われなかった
・賃金が85%未満に低下した
・時間外労働の多さ(連続3カ月45時間、2カ月80時間、1カ月100時間超など)
特定理由離職者の一部も多くもらえる
続いて、特定理由離職者に該当する離職理由は下記のとおりです。自己都合の中でも正当な理由のあるケースが該当します。
【特定理由離職者に該当する離職理由】
・期間の定めのある労働契約期間満了(更新なし)
・体力不足、心身障害のため
・妊娠出産、育児のため
・家族の病気等で介護が必要になったため
・配偶者および扶養する親族と別居生活を続けるのが困難となったため
・通勤困難となったため
特定理由離職者のうち、「期間の定めのある労働契約期間満了(更新なし)による離職」の人は、特定受給資格者と同じように失業給付を多く受けられます。先にご紹介した「一部」の人のことですね。その他の特定理由離職者の人は多くもらうことができませんが、給付制限にかかわる部分で優遇されます。
給付制限があるかないかも大事なポイント
会社を辞めたときに、ある程度の貯金があればいいのですが、そうでない場合は失業給付をいつからもらえるのかという問題が気になるものです。この、いつからもらえるのかという問題について、特定受給資格者と特定理由離職者は、ほかの離職者よりも優遇されています。
・特定受給資格者と特定理由離職者:求職申込から7日間の待機期間後に基本手当が支給される
・上記以外の離職者:求職申込から7日間の待機期間後、さらに3カ月の給付制限期間がある
なお、早くもらえるとしても、最初の失業給付の振込タイミング自体は待機期間後の約1カ月後となってしまいます。離職後すぐの時期の生活費のために、普段から家計のやりくりをしっかりして備えておきたいものですね。
離職理由について、会社都合よりも自己都合のほうが何となく聞こえがいいと思ってしまう人もいるかもしれませんが、失業給付面では会社都合の場合のほうが優遇されています。制度上のメリットを前向きに捉え、もらえるものをしっかりもらって転職活動を頑張る励みにするという考え方もおすすめです。