2019年10月1日からの消費税10%引き上げに伴い、住宅ローン減税の期間3年間延長が決まりました。これによって、消費税増税前に慌てて購入するメリットはあまりないのではないでしょうか。また、繰り上げ返済を利用しての返済プランへの影響など、モデルケースをもとに、どんな返済プランがおトクなのか、シミュレーションしてみたいと思います。
消費税10%で住宅ローン減税期間が13年間に!
どんな返済プランがお得になる?
2019年5月20日
消費税10%で住宅ローン減税が13年に延長
消費税率10%が適用される住宅を取得して、2019年10月1日から2020年12月31日までに入居をした人を対象に、住宅ローン減税が3年間延長されることとなりました。
10年目までは、現行どおり、住宅ローンの年末残高(4,000万円※を限度)×1%が所得税、住民税から控除され、11年目から13年目は、建物購入価格(4,000万円※を限度)×2%÷3年と、住宅ローン残高の1%のいずれか少ない金額が控除されます。
【10年目まで】
住宅ローンの年末残高(4,000万円※を限度)×1%
【11年目から13年目】
①住宅ローンの年末残高(4,000万円※を限度)×1%
②建物購入価格(4,000万円※を限度)×2%÷3年
①と②のいずれか小さい額を控除
※長期優良住宅や低炭素住宅の場合:住宅ローン残高の上限5,000万円、建物購入価格の上限5,000万円
建物の価格が2,400万円(税抜)で、11年目に1,600万円以上の住宅ローン残高があれば、16万円が3年間減税されます。
つまり、消費税がかかる建物部分を増税分の2%減税することで、消費税10%で購入した場合の負担を緩和しているわけです。
他にも、増税後の住宅購入支援策があります。詳しく知りたい方はこちらもチェックしてください。
消費税率引上げ後の住宅取得にメリットが出る4つの支援策を用意! | 政府広報オンライン
住宅ローン減税をとるか、繰上げ返済をするか
消費税増税後に購入して、住宅ローン減税が13年間となった場合に、繰上げ返済をして住宅ローンの残高を減らすのはもったいないような気になりますが、果たしてそうなのか、試算してみましょう。
前提条件として、3,000万円の借入れ、返済期間35年、全期間固定金利1.3%(現在のフラット35の金利参照)、建物購入価格2,400万円(税抜)、繰り上げ返済の額1,000万円(期間短縮型)とし、住宅ローン減税は全額控除されるものとします。
また、繰り上げ返済の方法は、当初から100万円ずつ10年間で1,000万円を返済するパターンと住宅ローン減税の期間が終わったあと(13年後)に一気に1,000万円を返済するパターンの二つを比較してみます。
金利1.3%
繰り上げ返済をしない場合、住宅ローン減税13年間の総額は約309万円となりました。毎年100万円ずつ、繰り上げ返済した場合は、11年目の借入れ残高は約1,124万円となるので、建物購入価格2,400万円の2%÷3である16万円よりも小さい額となります。そのため、11年目以降も借入れ残高の1%となるので、繰り上げ返済をしたことで74万円、減税額が減ることになります。
しかし、繰り上げ返済の効果はそれ以上となります。これは金利の1.3%が、減税額となる借入れ残高の1%を上回っているため、利息に対する軽減効果の方が大きくなるためです。
そのため、毎年100万円ずつ10年間繰上げ返済をした方がおトクという結果となりました。
では、金利が0.7%だとしたらどうでしょうか。
先程と同じ条件で金利のみ0.7%で試算してみました。
金利0.7%
結果は、13年後に1,000万円まとめて繰上げ返済をした方が13万円おトクとなりました。
目安として、金利が1%より高いか低いかでおおまかな判断はできそうです。
しかし、実際は借入額や所得、手数料などによっても変わってきます。
金融機関のサイトに設けられている住宅ローンシミュレーション等を利用して、試算してみるとよいでしょう。
おトクに惑わされない
家を買う意味を考えた時に、住宅ローン減税や繰り上げ返済の「おトク感」にあまり惑わされるのもよくありません。
繰上げ返済を焦るあまり、手元のお金が不足してしまっては本末転倒です。
生活の質に直結する“家”を買うわけですから、金額に表しにくい価値があると思います。
家を買うことの意味を見失わず、住宅ローン減税などはあくまでも“副次的なもの”として考えましょう。
金利変動リスクに注意
長期で住宅ローンを組み、変動金利での返済プランを立てた場合、金利上昇による返済額への影響は住宅ローン減税の効果を簡単に打ち消してしまう場合があります。そのため、金利の動向に気を使う必要があります。最初から、そういったことができないと思ったら、全期間固定金利のフラット35などを検討してみましょう。
消費税増税前に慌てて家を購入することは、住宅ローン減税の延長で無意味だということはお分かりになったと思います。あとは、ライフプランに沿った無理のない返済プランを心掛けて、老後までに完済できれば言うことなしですね。