老後資金を貯める方法としてiDeCoをおすすめする記事は多いですが、誰がやっても得する方法というわけではありません。iDeCoにはいくつか注意点があり、それをわかって加入する分にはいいのですが、「なんとなくおすすめされているからやってみた」では、のちのち後悔することになります。ここでiDeCoの注意点をしっかり頭に入れて、賢く利用しましょう。
こんな人にはiDeCoは向かない
iDeCoで老後資金を貯めるときの注意点とは
2019年5月10日
iDeCoの6つの注意点
iDeCo(個人型確定拠出年金)には多くのメリットがありますが、一方で、注意点もあります。以下に6つ注意点をあげましたので、ご自身の状況と照らし合わせて読んでみてください。
60歳まで解約できない
iDeCoを始めようと思った人に、まず伝えなければならないことは『60歳まで解約できない』ということです。解約するには、国民年金の保険料免除者、拠出期間が3年以下、または個人の資産が25万円以下などの厳しい条件に当てはまっていないと解約できないため、ほぼ解約はできないと思っていた方がよいでしょう。
iDeCoは20歳から加入できますから、早く始めると40年近く資金を拘束されることになります。途中で、どうしても掛金を拠出することができなくなった場合には、拠出をストップすることはできますが、その際にも口座管理手数料は取られているので、残高が目減りしていく事態となります。
iDeCoは1人1口座
iDeCoを始めるには、まずは口座を持つ金融機関を決めなければなりません。1人1口座と決まっており、口座変更は簡単にはできません。
口座を変更する場合、金融機関によって取り扱っている商品が違うため、いったん現金化して、新たに運用する商品を購入する必要があり、手続きに数か月要します。そのため、後から変更する事態にならないように、金融機関選びは慎重に行いましょう。
特に気にしてほしい点は、口座管理手数料が安い、あるいは無料の金融機関を選ぶことです。
iDeCoは運用期間中、最低でも年額2,004円は必ずかかりますので、あとは金融機関によって違ってくる手数料をいかに抑えるかが、60歳までの長期の積み立てでは大きな差となります。
所得がない人は所得控除のメリットがない
iDeCoの3大メリットとして「掛金が全額所得控除」「運用益が非課税」「受け取り時の税制優遇」がありますが、その中でも最大のメリットである掛金の全額所得控除は、当然ながら、所得税を払っていない人には何のメリットにもなりません。また、所得が少ない人よりも多い人の方が、税率が高くなる分、所得控除の恩恵は大きくなるので、言い換えれば、所得が少ないとメリットも少なくなります。
そのため、専業主婦や、扶養内で働いている人にとっては、運用益が非課税くらいしかメリットがないため、そうであれば、いつでも引き出せて、口座管理手数料もなく、たくさんの商品から選べる「つみたてNISA」の方がよいでしょう。
また、住宅ローン控除やふるさと納税によって、税金の軽減をすでに受けている人も注意が必要です。
iDeCoの掛金控除によって、住宅ローン控除の限度枠を最大限に使えなかったり、ふるさと納税の限度額が下がるなどのデメリットが生じることがあります。
運用期間中は手数料がかかる
iDeCoの手数料として、加入時に払うもの、受取時に払うもの、運用期間中に払うものがあります。このうち、運用期間中に払う手数料は加入している間ずっと払い続けなければならないので、元本確保型の定期預金で運用した場合、利息よりも手数料の方が高いという状況になり得ます。それでも、掛金の所得控除のメリットがある場合は、利用する価値がありますが、このメリットがあまりない場合は、積極的に運用して、手数料以上の運用益を出さないと損をすることになります。
元本割れのリスクがある
iDeCoは運用を自分で行って、老後資金を作るための制度であるため、運用成績によっては、元本割れを起こすこともあります。iDeCoで購入できる投資信託はコストの安いインデックスファンドが多く選ばれていますが、それでも投資に絶対はありません。
こうしたリスクのある運用を避けたい場合は、上述した元本確保型の定期預金などで運用をするとよいでしょう。
いずれにしても、ご自分で掛金を拠出し、運用方法を選択できるということは、その結果として受け取れる老後資金がいくらになるのかは、すべて自分次第ということです。
受取り方法によっては節税にならないことも
iDeCoは受取方法を年金にするか一時金にするか(金融機関によっては併用もできる)を選択することができます。年金を選択した場合は「公的年金等控除」、一時金を選択した場合は「退職所得控除」の対象となります。それぞれ非課税枠があり、その範囲に収まれば、税金がかかりません。ただし、会社の退職金が多い人や、厚生年金を多くもらえそうな人は、非課税枠を超えてしまい、課税されてしまいます。
そのため、年金と一時金を併用して、受取りの時期をずらすなどの工夫が必要です。
iDeCoをやらない方がいい人
さて、以上のことを踏まえて、iDeCoをやらない方がいい人、加入のメリットがあまりない人をまとめてみました。
★貯金がない人
★所得税を払っていない人、所得税が少ない人
★退職予定のある人(結婚、出産、起業など)
★税金の軽減を受けている人(住宅ローン控除、ふるさと納税など)
★公的年金や退職金が多い人
★リスクを許容できない人
これらに当てはまっていても、iDeCoのメリットの方が上回っていると判断できた場合は、始めてみてもいいと思います。しかし、少しでも不安があるなら、“iDeCoは一度始めたら途中でやめることができない”ため、加入を待った方がいいでしょう。
iDeCoにはメリットとデメリットの両方があります。まずはしっかりと理解するところから始めてみてくださいね。