老後の生活を考えるとき、終身でもらえる公的年金の存在は大事なものですね。公的年金をいくらもらえるか気になり、ねんきん定期便での金額チェックなどをしている人もいるでしょう。
また、公的年金のほかに個人年金などの私的年金で備えている人もいるのではないでしょうか。しかし、年金に関心がありながら、年金に税金がかかる場合があることを知らない人もいます。
気になる年金と税金の関係についてご紹介します。
年金にも税金がかかるって本当?
~老後に備えるための基礎知識~
2018年12月25日
年金に税金がかかる場合も
雑所得として課税
老後の生活の支えとなる公的年金。だいたいいくらもらえるか気になるものですよね。公的年金だけでは足りない老後の生活費を備えなければと、公的年金の受給見込み額を貯蓄目標額設定に役立てている人もいるでしょう。
そこで知っておきたいのが、公的年金にも税金がかかるということ。年金の金額により税金がかかる場合とそうでない場合があり、ねんきん定期便に記載されている年金額が、そのまま全額使えるお金となるわけではない人もいるのです。
公的年金は雑所得としてみなされ、所得税がかかります。復興特別所得税と住民税もかかります。
公的年金等控除額を差し引ける
保険料を払い続けてきた結果としてもらえる年金なのに、しかも大して多いわけでもないのに、もらうときに税金がかかるなんてと感じる人がいるかもしれませんね。もらえる年金の全額に対して税率がかけられるわけではないので安心しましょう。
公的年金には、税金がかかる雑所得として計算するときに一定の控除額を差し引ける仕組みがあります。この差し引ける金額を、公的年金等控除額といいます。公的年金等控除の対象となる主な年金は下記のとおり。
・国民年金
・厚生年金
・過去の勤務により会社から払われる年金
上記のような対象となる年金を全て合算した金額に対し、控除が適用されます。公的年金等控除により雑所得がゼロとなる場合がありますが、65歳未満なのか65歳以上なのかによって、その金額は異なります。
【公的年金等の収入金額による雑所得がゼロとなるケース】
65歳未満の人:公的年金等の収入金額700,000円まで
65歳以上の人:公的年金等の収入金額1,200,000円まで
出典:国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm)
控除によって課税所得額は低くなる
雑所得を求める計算式
公的年金等の収入から雑所得を求めるときは、収入毎に定められた割合と控除額が使われます。65歳以上の人の場合で具体的な数字を見てみましょう。
・雑所得=年金収入×割合-控除額
【年金収入(65歳以上):割合:控除額】
・120万超~330万未満:100%:120万円
・330万以上から410万未満:75%:37.5万円
・410万以上770万未満:85%:78.5万円
・770万以上:95%:155.5万円
例:
年金収入200万円の場合:200万円×100%-120万円=80万円
年金収入400万円の場合:400万円×75%-37.5万円=262.5万円
公的年金等控除額を差し引いた金額は上記のようになりますが、所得税を算出するときの課税所得金額を求めるときには、ほかの控除も適用できます。ほかの控除についても、続けてご紹介していきましょう。
基礎控除分も差し引ける
年金収入の雑所得以外の所得もある人の場合、それらも全て合わせて課税所得金額が計算されます。そのとき、合算した所得金額から、まず38万円の基礎控除分を差し引くことができます。
先にご紹介した公的年金等控除と基礎控除の分を合わせて考えると、65歳未満、65歳以上それぞれで課税対象となる可能性のある公的年金等の収入金額は下記となることがわかります(ほかに収入がない場合)。
65歳未満の人:公的年金等の収入金額1,080,000円超
65歳以上の人:公的年金等の収入金額1,580,000円超
所得税と住民税はどのくらいかかる?
基礎控除を適用した上で課税対象となる可能性のある所得金額となった人には、日本年金機構から「扶養親族等申告書」が送られてきます。配偶者控除、扶養控除を適用できる人が申告書に記入して返送すると、その分も差し引いてもらえる仕組みです。
また、課税所得額を算出する際には社会保険料控除や生命保険料控除、医療費控除といった控除も適用できます。
控除分を全て差し引いてから課税所得に応じた税率がかけられますが、例えば課税所得金額が195万円以下の場合における所得税率は5%です。課税所得金額が30万円なら所得税は15,000円、20万円なら10,000円となります。
住民税には所得割分と均等割分があり、徴収される金額は自治体により異なります。均等割の目安は5,000円程度、所得割の税率は課税所得金額の10%程度です。また、住民税を算出するときの各控除額は所得税を算出する場合と若干異なります。
個人年金でも税金はかかるの?
必要経費分が考慮されます
次に、私的年金の一つである個人年金をもらうときの税金について簡単にご紹介しましょう。
個人年金の場合においても、雑所得として所得税がかかります。計算方法は公的年金と異なり、公的年金控除額のような控除がありません。しかし、個人年金の場合、払い込んだ保険料の分である必要経費を差し引けます。このときの必要経費は、次のような計算式で算出します。
個人年金の必要経費=年間でもらえる個人年金額×払込保険料総額÷年金総支給見込額
なお、イデコは年金としてもらえる受給額すべてが雑所得の扱いとなりますが、税制優遇措置により公的年金控除を適用できます。
契約者と受取人が違う場合
自分の将来のために個人年金で備えている(自分が契約者であり受取人である)場合、受け取るときにかかる税金は所得税です。しかし、例えば配偶者を受取人とする個人年金を契約した場合は、配偶者が受け取る1年目に贈与税がかかります。そして、2年目以降は所得税がかかります。
なお、贈与税には110万円の基礎控除があります。
個人年金を一時金でもらう場合
個人年金を、年金形式だけでなく一時金としてもらう場合は、雑所得ではなく一時所得として課税されます。
個人年金をもらうときの一時所得:(個人年金受取総額-総支払保険料-50万円)×1/2
イデコを一時金で受け取る場合は退職所得控除を適用できます。
年金を受け取る際は、公的年金であっても私的年金であっても、税金がかかるケースがあります。年金の受け取り方で税金のかかり方が変わる場合もあり、複雑に感じられてしまうのが正直なところですね。