先日、こんなニュースがありました。「奨学金、保証人に全額請求 支払い義務半額と説明せず」日本経済新聞(2018/11/1)日本学生支援機構が、本来なら奨学金の返済義務が半分であるのに、保証人がそれを知らなかった場合、説明もせずに全額請求していたというニュースです。つまり、知識があった場合となかった場合で、請求額が違ったのです。本来であれば、こういうことはあってはいけないことですが、自分自身を守るためにも知っておいた方がいい知識として、保証人と連絡保証人の違いをお伝えいたします。
保証人と連帯保証人どう違う?
社会人なら絶対に知っておきたい知識
2018年12月24日
保証人と連帯保証人の違い
借金やローンを組む時に、保証人を求められる場面があります。
保証人は債務者が返済できなくなった時に、代わりに支払う義務を負います。
その保証人にも種類があり、契約時に「保証人」と「連帯保証人」という言葉が出てきた場合に、これが単なる言葉の違いではなく、役割と義務に違いがあることを知っておく必要があります。
結論を言ってしまうと、「連帯保証人」の方が「保証人」よりも責任が重く、以下の3つの権利が連帯保証人にはありません。
催告の抗弁権
催告の抗弁権とは、債権者がいきなり保証人に対して返済を求めてきた時に、「まずは、主債務者(借入れをした人)に請求してください」と主張できる権利です。連帯保証人にはこの権利がないので、言わば“文句が言えない”立場なのです。
検索の抗弁権
主債務者に返済能力があるにもかかわらず返済せず、保証人に請求がきた場合、保証人は「主債務者が返済に応じない場合には、主債務者の財産を差し押さえて返済に充ててほしい」と主張ができる権利です。連帯保証人にはこの権利がないので、主債務者に返済できる財産があっても、主債務者に代わって返済しなければなりません。
分別の利益
保証人が複数いる場合、保証人1人当たりの返済額は、その保証人の頭数で割った金額が上限となります。つまり、150万円の借金に保証人が3人いた場合、1人の保証人の返済義務は50万円となります。連帯保証人には分別の利益がないので、人数に関係なく全額返済しなければなりません。
このように、債務者と同様の返済義務を負うのが連帯保証人なのです。
奨学金の全額請求問題とは
日本学生支援機構が奨学金を貸与する際に、連帯保証人のほかに、保証人を1人立てるケースが多くあります。
奨学金を借りた本人の返済が滞った場合、連帯保証人に支払いを求めますが、それでも返済されなかった場合には、保証人に請求がきます。
その際、保証人が返済するべき金額は「分別の利益」に則って、連帯保証人と保証人の2名で割った分(半額)しか支払う義務がなかったにもかかわらず、日本学生支援機構はそのような説明をせずに、全額請求していたという問題です。
「奨学金、保証人に全額請求 支払い義務半額と説明せず」2018/11/1 日本経済新聞より
連帯保証人であれば、「分別の利益」の適用はないので、全額返済する義務を負い、保証人であれば、「分別の利益」が適用され、半分の返済義務で済むということを知識として知っている人はどのくらいいるでしょうか。
法律に詳しい人以外はなかなか知る機会がないと思います。
このケースではきちんと説明があるべきだったと私は思いますが、こうした知識をもっていることは、自分を守るために必要となってくるでしょう。
奨学金を借りる時に気を付けたいこと
奨学金には「給付型」と「貸与型」があり、まだまだ日本では返済の必要がない「給付型」は少なく、「貸与型」という名の“借金”をして進学をしている人が多いのが現状です。
また、社会人となって返済をしていく中で、安定した収入を得られず返済が滞るケースも多く、最悪、自己破産となる「奨学金破産」が問題となってきています。こうしたケースでは、連帯保証人となった親族までもが破産していく「自己破産の連鎖」が起きることもあります。
こうした問題を防ぐためには、家族や親族を保証人に立てずに、機関保証を利用する方法があります。
機関保証とは
一定の保証料を払うことで、連帯保証人及び保証人が不要となる制度です。奨学金を借りた者が、返済不能となった場合に、日本学生支援機構の請求に基づき、保証機関が本人に代わって残額を一括返済します。その後、保証機関は、借りた本人に返済を請求します。
ここで気を付けたい点は、機関保証を利用したからといって返済が優遇されるわけではないことです。返済義務が連帯保証人、保証人へと引き継がれないというメリットにおいてのみ利用する価値があるものです。
保証料は毎月の奨学金から引かれます。保証料は決して安い金額ではないため、保証人の経済状況に問題がなく、納得した上で引き受けてくれるのであれば、機関保証を利用する必要はないでしょう。
安易になるべきではない連帯保証人
連帯保証人となったばっかりに、他人の借金を背負ってしまったという悲劇は昔から繰り返されています。保証人と違って、3つの権利がないこともあり、連帯保証人になる場合にはかなりの覚悟が必要です。
連帯保証人は主債務者と同等の責任を負うため、極端な話をすれば、債権者が主債務者への取り立てを面倒に感じると、主債務者よりも先に連帯保証人に請求がくることもあります。
連帯保証人になるなら、最初から本人の代わりに返済してもいいと思っている、あるいは自分が借りているくらいの気持ちで保証人になるべきでしょう。
その覚悟がない場合は、近しい関係であってもきっぱりと断りましょう。