政府は2023年度からこの出産育児一時金を増額することを発表しました。出産を望む人には助かるニュースですね。一方で、出産費用も全国的に増加傾向にあり、本当に出産費用の軽減になるかどうか懸念する声もあるようです。そこで本記事では、出産育児一時金および出産費用の現状について解説します。
出産育児一時金が増額される!
出産費用を軽減するためのポイントをFPが解説
2022年9月29日
出産育児一時金とは?
出産育児一時金は、子どもを出産した人に対して(国民)健康保険から支給される給付金です。
自分自身で健康保険に加入している人だけでなく、配偶者の扶養として健康保険に加入している人、および国民健康保険に加入している人が対象です。国民皆保険といって、日本ではすべての国民がなんらかの公的医療保険制度に加入していますから、出産のほぼすべてが対象になります。
ちなみに、妊娠12週(85日)以降であれば,死産および流産でも支給されます。
金額は、原則として1児につき42万円です。双子、三つ子など、多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます。ただし、分娩をする医療機関等が産科医療補償制度に加入していない場合には出産育児一時金の金額は40万8,000円となります。
出産育児一時金が増額へ!いつから?金額は?
2022年6月、政府は出産育児一時金を増額する方針を示しました。これは、少子化対策が喫緊の課題だとする岸田首相の発言を受けたものです。「政府として年末の予算編成過程において結論を出す」としています。
早ければ2023年度から増額実施とのことですが、現在のところ金額はまだ決まっていません。出産費用の実態を分析し、厚生労働省の審議会で具体的な上げ幅などを議論する方向です。
「安心して妊娠、出産できる環境づくりを進める」と首相が発言されていますが、子どもを望むパパ・ママの経済的負担が軽減されることを期待したいですね。
過去にはどれだけ増額された?
実は出産育児一時金は過去にも何度か増額されています。
そもそも出産育児一時金は、保険が利かない(正常)分娩費用に対して、出産に要する経済的負担軽減を目的として1994年に創設されたものです。当時は国立病院の平均分娩料を根拠とし、金額は30万円。その後、出産費用の増加につれて、出産育児一時金の額も35万円、38万円、そして現在の42万円と順次増額されました。創設から30年近くの間に12万円上がったことになります。
最近の出産費用相場は?
出産育児一時金の増額に向けて、政府は妊婦へのアンケート調査などで出産費用の実態を分析しているところですが、最近の出産費用事情について確認しておきましょう。
出生数の減少や高齢出産の増加による入院長期化等を背景に、出産費用は増加傾向にあります。厚生労働省によると、2020年度の公的病院での出産にかかる費用の全国平均額は45万2,000円とのこと。
前述したように、正常分娩には保険が利きません。これは自由診療であるためですが、言い方を変えると料金も医療機関の裁量に任されていることになります。そのため、分娩技術代のみならず医療機関にとって分娩回数の多少や、施設やサービスのクオリティなども料金に反映されます。たとえば、出産数が減少すると採算がとれるよう料金を上げる必要があるでしょうし、妊婦さんに来てもらうためにエステや豪華な食事などといった快適・安心な出産サービスを提供したりするでしょう。なかには、ここで出産したいと妊婦さんに希望してもらえるよう質の高いサービスを提供しつつ、入院予約金を徴収する医療機関も増えているようです。これらの、本来の分娩費用以外の料金も出産費用を押し上げている傾向にあるのです。
出産時の費用負担を軽減するには?
出産育児一時金の増額は、これらの事情も鑑み決定されることを期待したいものです。しかしながら、現状ではいつから・いくら増額されるかはわからないのも事実です。
そこで、自分自身でできる出産時の費用負担軽減に向けた対策を知っておきましょう。
医療機関選び
そのひとつは産院選びです。地域によっては選択肢がないという場合もありますが、事前にしっかり確認し、妊婦さんの希望するサービスと料金の折り合いがつく医療機関を選ぶようにしたいものです。
自治体の助成金
自治体による助成がないかどうかも確認してみましょう。自治体によっては出産育児一時金とは別に、独自の出産助成金を支給しています。たとえば、東京都渋谷区では「ハッピーマザー出産助成金」として1人の出産につき10万円を限度に助成してくれます。
産前産後の保険料免除
産前産後期間の国民年金保険料免除制度も忘れずに手続きしましょう。
会社員の人は健康保険料および厚生年金保険料の免除手続きを会社経由で行ってくれますが、国民年金に加入している人は、自分で住民登録をしている市区町村役場で手続きしなければなりません。出産予定日または出産日が属する月の前月から4ヵ月間の国民年金保険料、66,360円(16,590円※×4ヵ月)が免除されます出産予定日の6ヵ月前から届出可能です。
※2022年度の国民年金保険料額
出産費用は子育てにかかる費用のごく一部にすぎません。経済的に本当に安心して出産するためには、子どもが欲しいと思ったときからコツコツ貯蓄に励み、出産後からはじまる子育て費用に向けて資産形成に励むことが何より大切だということを心得ておきたいですね。
(※本ページに記載されている情報は2022年8月21日時点のものです)