国民年金保険料を万一未納してしまった場合には、将来もらえるはずの年金はもらえなくなってしまうのでしょうか?また、日本の社会保険制度に対する疑問などからポリシーをもって国民年金保険料を支払わない人もいますが、どのような影響が出てくるのでしょうか?未納により起きる事態、その救済策である免除や猶予、納付期限を過ぎた場合の追納について紹介します。
国民年金保険料を未納した場合とその救済策は?
2022年5月31日
国民年金保険料を未納するとどうなるか
国民年金保険料の未納とは?
国民年金保険料は、 本来翌月末日までに納付しなくてはなりません。
給与所得者である第2号被保険者は、年金保険料が企業から給与天引きされ、本人の代わりに企業が保険料を国に納付するため未納は起こりません。
一方、 20歳以上60歳未満の個人事業主やフリーランス、学生などの第1号被保険者は、年金保険料を自分で納付しなくてはならないので、支払わないと未納となってしまいます。
なお、第2号被保険者に扶養されている配偶者は、年収が一定以下であれば第3号被保険者となり、個別に保険料を納める必要はありません。
国民年金保険料を未納するとどうなるか
国民年金保険料の未納を続けると、将来もらえるはずの公的年金がもらえなくなってしまいます。
将来もらえる可能性のある公的年金としては、原則65歳からもらえる 老齢年金、病気やケガで一定の障害状態になった人が障害認定されたときからもらえる 障害年金、そして本人が死亡したとき本人に扶養されていた配偶者や子どもなどがもらえる 遺族年金の3種類があります。
国民年金保険料を納付しないと、「国民年金未納保険料納付勧奨通知書」という名称のいわゆる催促状が届きます。
さらには、収入があるにも拘わらずに一定期間未納を続けていると、強制徴収により財産差し押さえになることもあります。
国民年金保険料を支払えない場合の救済制度はあるのか
収入が少ないなどの理由で国民年金保険料が支払えないといった場合には、「免除」や「猶予」の制度があり、市区町村の国民年金窓口に申請ができます。
「免除」については、本人、世帯主、配偶者の前年の所得がすべて一定額以下である場合に、全額、4分の3、半額、4分の1のいずれかの額が対象となります。
「猶予」については、20歳から50歳未満の人で、本人と配偶者の前年の所得が一定額以下である場合に対象となります。
また、国民年金の被保険者は20歳からが対象ですが、所得が一定以下の学生については、その家族の所得の多寡にかかわらず、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」があります。
「免除」と「猶予」はどちらを選択した方がよいか
ここで、「免除」と「猶予」の違いを説明します。
「免除」と「猶予」はともに、「免除期間もしくは猶予期間が受給資格期間に含まれる」という共通点がありますが、両者の大きな違いは、「免除」の場合は「免除期間についても一定の割合で年金額に反映される」のに対し、「猶予」の場合は「猶予期間については年金額に反映されない」という点です。
つまり、免除が認められた場合には、将来受け取れる年金額が「猶予」の場合よりも多いということです。
また、免除が認められたときには、もしも一定の障害等級に該当すると障害年金をもらうことができますが、猶予制度が認めらても一定の納付要件を満たしていなければ障害年金をもらうことができません。
支払わなかった保険料を後から支払うことはできるのか?
国民年金保険料を未納した分については、基本的にはその分、将来もらえる年金額が少なくなってしまいます。場合によっては受給資格期間の不足のために年金がもらえなくなる人もいます。
では、もう未納してしまった分は取り返しがつかないのでしょうか。
国民年金保険料を未納してしまった場合の追納について
国民年金保険料は支払期限がありますが、もし支払未納分があり、後になってから支払おうとしたときには2年分までは遡って支払う(追納)ことができます。
よって、たとえ2年以上の保険料の未納がある人でも、過去2年分は追納できますので、もし追納できる状況であれば追納をして、将来もらえる年金額を少しでも増額した方が賢明でしょう。
「免除」や「猶予」が認められた場合の追納について
国民年金保険料について、 未納ではなく「免除」や「猶予」制度を利用していた場合には、過去10年まで遡って追納することができます。
なお、国民年金保険料を未納してしまった場合でも、「免除」や「猶予」が認められていた場合でも、 追納をした場合には支払った追納保険料分は社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税が減額されるというメリットもあります。
そもそも、通算加入期間が10年未満者は年金をもらえませんので、通算加入期間が少ない人で追納することによって将来の年金の確保ができることもあります。
まとめ
老後資金として2,000万円が必要といわれていますが、貯金は使い果たせば終わりです。生涯もらえて物価上昇に対応するよう設計されている公的年金は、老後の生活資金として欠かせません。
自分の将来もらえる年金額を賢く確保するために、早いうちから制度について理解しておくとよいでしょう。自分の国民年金保険料の納付状況については、年に1回、加入者の誕生月に、日本年金機構から年金保険加入者宛に通知される「ねんきん定期便」で確認ができます。
また、同機構のホームページ内にある「ねんきんネット」でも自分の年金支払い状況等が確認ができますので、定期的に確認しておくとよいでしょう。
(※本ページに記載されている情報は2022年4月14日時点のものです。)