気に入る賃貸物件が見つかり、いざ契約となったとき、聞き慣れない言葉を目にして不安になりませんでしたか?
原状回復(部屋を入居のときの状態に戻すこと)は、退去のときの敷金返還にかかわる大事なポイントのひとつです。
賃貸物件の退去のときに起きやすい原状回復トラブルを含め、画びょうの穴はどうなのかなど原状回復の基本について簡単にご紹介します。
女性のひとり暮らし!
賃貸の原状回復って何?画びょうを使っても大丈夫?
2022年3月29日
入居と退去のときにもお金がかかる賃貸
敷金とは?
賃貸物件を借りるとき、かかるお金は月々の家賃(と管理費)だけではありません。家賃が発生する前(契約のとき)に初期費用が必要なイメージは、みなさんがお持ちかと思います。その初期費用の代表的なものとして、敷金、礼金の言葉を聞いたことのある方も多いでしょう。
敷金とは、賃貸契約時の保証金のようなもの。民法第622条で「いかなる名目によるかを問わず賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」と定められています。
最近は敷金礼金なしの物件も増えていますが、敷金を払っているケースでは、退去のときに敷金から原状回復費用が引かれることが一般的。原状回復のために入居者が負担すべき金額を引かれ、残額が返還されます。
原状回復って何?
原状回復とは、簡単にいうと「部屋を入居のときの状態に戻すこと」です。とはいえ、年数分の劣化は自然に起こることですよね。
基本的なルールに従うと、経年劣化(通常の使用による日焼けや黄ばみなど)や通常の使用による損耗等の復旧は、貸主の費用負担で行われることになります。借主による故意過失や管理義務違反があった場合は、借主負担です。
さて、ここで「基本的なルール」という言い方にしたことには理由があります。原状回復にかかわる注意点について、続けて見ていきましょう。
契約内容が優先される点に注意
参考のルールにとどまるガイドライン
賃貸物件において、原状回復に関する貸主と借主の間のトラブルは少なくありません。補修費用を借主負担にするべきか貸主負担にするべきかの見解の相違などによるトラブルが起きやすいのです。そのため、国土交通省で基本的なルールとなるガイドラインが作成されています。
しかし、ガイドラインは基本的なルールとして参考にできるだけであり、法的な効力があるわけではありません。
ガイドラインにおいて「妥当と考えられる一般的な基準をガイドラインとしてとりまとめたもの」「原状回復の内容、方法等については、最終的には契約内容、物件の使用の状況等によって、個別に判断、決定されるべきものであると考えられる」と示されています。
出典:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html)
賃貸物件を借りるときには、契約内容がとても重要となります。契約に基づいて権利が発生したり義務が発生したりするためです。内容をしっかり理解しておく必要があると心得ましょう。
起こりやすいトラブル
国土交通省のガイドラインは、トラブルになりやすい事例を未然に防ぐための参考となるように作成されてきました。起こりやすい身近なトラブル例を、いくつかご紹介しましょう。
・傷ができたのは入居前か後か
退去のとき、部屋の壁や床などに傷があると補修費用を請求される可能性があります。例えば借主の記憶により入居前からあったと主張したいケースでも、証拠がないとトラブルになりやすいのです。そのため、事実関係を確認できる入居時のチェックが重要とガイドラインで示されています。
・原状回復の施工単価が適当かどうか
原状回復のための修繕は、貸主が依頼した業者により行われることが一般的です。そのため、クロスの張替え施工単価が高額なことによるトラブル事例もありました。契約時に施工単価が記載されていると安心といえるでしょう。
・傷に対しての補修範囲が適当かどうか
借主がクロスに傷をつけてしまったとき、色や模様を合わせるために部屋全体のクロスを貸主が張替えてしまうケースがあります。しかし、色や模様が合っていなくても賃貸物件として使えるため、全体の張替えはグレードアップに該当するとガイドラインで示されています。グレードアップに該当する分を借主が負うことは妥当でないとされる一方、傷をつけてしまったクロスの一面分であれば、必要な場合において借主負担が妥当とされています。
最低限のケアをしながら気持ちよく部屋を使おう
画びょうやピンの穴は通常の損耗の範囲
通常行われると考えられる清掃や換気を怠ったための損耗やカビ汚れの修繕義務は、借主にあります。しかし、これは一般的な清掃や換気をしていれば特別な心配がいらないということでもあります。
最低限の部屋のケアは、気持ち良い生活の維持にも役立ちます。楽しみながら行っておきましょう。
また、壁にカレンダーやポスターを貼るための画びょうやピンの穴は、下地ボードの張替えが不要な程度であれば通常の損耗の範囲とされています。必要以上に気にしすぎず、自分らしい部屋作りのための装飾を気軽に楽しみましょう。
現状確認書はしっかり記入しておく
賃貸物件に入居するとき、貸主から現状確認書(入居時チェックリスト)を渡されることがあります。
現状確認書は退去のときのトラブルを防ぐ大事な証拠となるものですから、しっかり記入しておきましょう。文面だけでの伝わり方に心配があるなら、気になる箇所をスマホ撮影し、あわせて提出しておくと安心です。
物件内覧のときには気がつかなくても、現状確認書への記入のためにチェックをすると小さな傷や汚れ、収納扉の建て付けの悪さなどに気がつくケースが少なくありません。家具などの搬入後では確認が大変になるため、物件の鍵をもらったら早々に記入しましょう。
トラブルの解決方法
原状回復や敷金返還に関するトラブルでは、数万円から数十万円くらいの争いになるケースが一般的。解決方法の例は下記のとおりです。
・少額訴訟手続き
・国民生活センター、消費生活センターへの相談
・法テラス(無料)などによる弁護士への相談
トラブルになりやすい状況をあらかじめ知っておいて未然に防ぐこと、それでもトラブルになったときに備えて解決方法を心得ておくことは、ひとり暮らしをしようという女性のとって欠かせない生活の知恵ともいえるでしょう。
契約のときにわからない点、疑問に思う点などがある場合は、恥ずかしがらずに質問しておきましょう。契約後においても、不明な点がある場合などは問い合わせをして確認しておくと、後々のトラブル防止に役立ちます。
※本ページに記載されている情報は2022年2月21日時点のものです