少子化の流れを変えて男女ともに子育て・介護と仕事の両立ができる社会を目指すことを目的に、育児・介護休業法についての制度改正が行われています。2021年6月の改正では、男性の育児休業取得促進のほか、出生時育児休業制度も新設されることとなりました。今回はこれらの制度改正の内容や、新設される制度の概要について説明します。
改正によってどう変わる?新設される出生時育児休業とは?
2021年11月12日
これまでの改正の概要
育児・介護休業法については、少子化の流れを変えて男女共に子育ておよび介護と仕事の両立ができる社会を目指すことを目的として、これまでに以下のような改正が行われています。
2019年12月の改正
2019年12月には、「子の看護休暇および介護休暇が時間単位で取得可能」となりました。これについては2021年1月1日より施行されています。1時間や2時間といった時間単位の取得が可能となったことで、病院の付き添い急病による保育園のお迎えなど、短時間の遅刻や早退も対応しやすくなっています。同時に、所定労働時間の短いパートやアルバイトなど方についても対象となっています。
2021年6月の改正
2021年6月の改正により、今後以下のように育児・介護休業法の内容が変わっていくことになります。ただし、施行は来年度(2022年)となっている点に注意が必要です。
1.出生時育児休業の新設・育児休業の分割取得可能
出生時育児休業とは、男性が子どもの出生後約8週間以内の時期に、柔軟に育児休業を取得できる制度で、育児休業給付金の受給も可能となっています。施行は2022年10月1日の予定です。申し出期間は原則として休業の2週間前までとなっており、2回に分割して取得することも可能です。また、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することも可能としています。
2.有期雇用労働者の育児休業取得要件緩和
これまでの育児休業の取得要件だった「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が廃止され、無期雇用労働者と同様の取り扱いとなります。したがって、転職や就職したばかりの契約社員やパートタイム、アルバイトの方などでも、育児休業を取得できる可能性が拡がることとなりました。ただし、育児休業を取得できたとしても、育児休業給付金については、休業前に一定以上働いていないと支給対象外となる可能性がありますので、注意が必要です。
3.介護休業制度の取得要件緩和
2021年の改正で、有期雇用労働者の介護休業の取得要件について、育児休業と同様に、1年以上雇用されている期間が必要であるという要件が緩和されることとなりました。
4.全事業主に対する雇用環境整備向上の義務化
2021年の改正により、中小企業を含む全事業主に対し、従業員が育児休業を取得しやすいように、環境整備や従業員の意向確認が義務化されます。具体的な内容については、今後省令で定められることとなっていますが、短期間育児休業を取得する場合はもちろんのこと、1カ月以上の長期取得を希望する労働者がいた時には、希望する期間を取得できるように事業主が配慮するような指針が示される予定です。
5.大企業における「育児休業等の取得状況」の公表を義務化
従業員数1,000人超の事業主においては、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。詳細な公表内容についてはこれから定められますが、男性の取得率が公表される予定となっています。
改正によってどのように変わる?
今回の2021年の改正では、大幅な改正が予定されています。この改正によって、育児および介護休業の取得環境はどのように変わっていくのでしょうか。
出生時育児休業制度
出生時育児休業制度が創設されたことにより、妻のサポートが特に必要な時期(出産直後、実家から自宅に帰る時期、子どもの姉兄の育児負担が増す長期休暇の時期、復職、就活時など)に、それぞれ短期間でも複数回取得できることや、保育園の待機中に夫婦交代で育児休業を取って乗り切ることができるなど、休業回数、日数、時間が以前より柔軟になったことで、男性でも育児休暇を活用しやすくなります。
有期雇用者に向けた配慮
2021年の改正により、育児および介護休暇の取得において「1年以上の雇用」という要件が無くなります。給付金の受給については、別途要件を満たす必要があるため、よく確認する必要がありますが、雇用期間の縛りがなくなった点は取得しやすさに直結すると思われます。
育児もさることながら、介護は事故などをきっかけとして突然必要となる場合があります。仕事と介護を両立させるためには、介護休業中に担当のケアマネジャーなどとよく話し合い、介護施設や介護サービスを上手に活用しながら、自ら介護する時間を減らす努力も大切です。
※本ページに記載されている情報は2021年10月21日時点のものです。