日本国民であれば、国民健康保険や健康保険組合に加入し、保険料を支払っています。このため、病院の窓口で払う医療費は原則3割負担で済みます。さらに1ヵ月の医療費は、高額療養費制度があるため、上限が決まっています。収入による違いはありますが、多くの方は9万円前後に抑えることができます。高額療養費制度の概要と、自己負担が軽減される仕組み、理解しておきたいポイントなどをについて解説します。もしもの時に備えて、理解しておきましょう。
意外と知らない!?高額療養費制度とは?
活用方法と注意点を解説
2021年11月9日
高額療養費制度とは?
医療機関や薬局の窓口で支払った額が、月の初めから終わりまでに一定額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度です。収入と年齢によって異なります。
上の表は、70歳未満の方で、高額療養費制度が適用された場合の自己負担の計算式と実際に支払う金額の例です。
例えば、年収400万円の人が1ヵ月にかかった医療費が100万円、窓口で支払う金額が30万円の場合は、高額療養費制度の申請をすることで、実際の自己負担金額は約87,430円になります。日本の年収の平均から見ても多くの人が9万円前後の治療費で収まる可能性が高いということです。
意外と知らない負担軽減活用法
上の制度と合わせて、さらに自己負担が軽減される場合もあります。
世帯内でも合算可能
同一世帯で、同じ月に自己負担限度額を超えた場合、家族と合算して申請できる場合があります。条件は以下の2つが当てはまる場合です。
・70歳未満の場合です。まず受診者ごと、月ごと、医療機関ごとに合算します。同じ医療機関でも、入院と外来、歯科は区別します。治療薬を処方された場合は、調剤薬局で支払った金額を治療費に含めることができます。
・上記のルールで算出した自己負担額が21,000円以上のものは、世帯で合算することができます。ここでいう世帯とは、同一の健康保険組合または協会けんぽに加入している被保険者とその被扶養者です。
例えば、夫が健康保険に加入していて、妻は被扶養者であれば合算することが可能です。夫婦で同じ健康保険に加入、それぞれが加入している場合は合算することができません。なお、国民健康保険の場合は、それぞれが加入しますが、同じ保険証の番号を持つ家族であれば合算可能です。
多数回該当
多数回該当とは、直近の12ヵ月間に、3回以上の高額療養費の支給を受けている場合、4回目以降はその月の負担の上限額がさらに引き下がる制度のことです。所得区分が3段階に分かれ、それぞれで上限額が設定されています。
付加給付制度
付加給付制度とは、名称は企業によって違いがありますが、各人の自己負担をさらに軽減するために、企業の健康保険組合が独自に設けている高額療養費を補完する制度です。大手企業で実施していることがあります。あなたの勤め先の制度を確認しておきましょう。
理解しておきたいポイント
理解しておきたいポイントは3つあります。
1.先進医療は対象外
自己負担が3割で済むのは、公的医療保険の対象となる医療行為が対象で、ここに先進医療は含まれません。先進医療を受けた場合、かかった費用は全額自己負担になります。
2.入院中の食事代やベッド代などは含まれない
入院する場合、食事代や個室等の差額ベッド代など、医療費以外の費用もかかります。これらは高額療養費制度の医療費には該当しません。
3.月をまたぐと治療費が増える
高額療養費制度は月単位で治療費を計算しますので、月をまたいで治療をすると、総支払額が増えてしまう場合があります。
例えば、年収400万円の人が、2回の入院で計100万円の治療費がかかったとします。その2回の入院が同じ月だった場合と、月をまたいだ場合で比べてみましょう。
・10月は30万円、11月は70万円かかった場合
10月 80,100円+ (30万円− 26万7,000円)×1%=80,430円
11月 80,100円+ (70万円− 26万7,000円)×1%=84,430円
合計 164,860円
・11月だけで100万円かかった場合
80,100円+( 100万円− 26万7,000円)×1%=87,430円
月をまたいだだけで、約8万円近くも差が出てしまいます。もし自分で入院時期を決められるようなら、工夫してみる余地はありますね。
高額療養費制度は、すべての人に適用される制度です。月内にかかる医療費は限度があり、万が一治療が長引いた場合もやみくもに医療費がかさむというわけではありません。もし、必要以上に民間の生命保険や医療保険に加入していたら見直しをしましょう。万が一に備えて確認しておいてくださいね。
(※本ページに記載されている情報は2021年10月19日時点のものです)