老後資金を準備しながら節税もできるiDeCo(個人型確定拠出年金)。加入者は増加傾向にあり、筆者もiDeCoへの加入相談を受けることもあります。一方で、加入時の商品選びで迷う人も少なくないようです。iDeCoにはいくつかの制限もありますから、先々をイメージしながら商品を選ぶことが大切です。そこで当記事では、資産運用に対する考え方別に、商品選びのポイントを説明していきます。
【運用タイプ別】
iDeCo加入のおすすめ商品の選び方
2021年9月29日
そもそもiDeCoの運用商品には何がある?
iDeCoは自分で運用商品を選んで掛金を拠出していく制度です。運用商品は途中で変更もできますが、将来の年金資金とするものですから、安全性の確保もルールとして決められています。
そこで、リスクを抑えながら資産の膨らみを期待できる「投資信託」と元本確保型商品と言われる「定期預金」と「保険」の3種の運用商品に限定されています。それぞれメリットとデメリットがあります。なかには定期預金や保険には馴染みがあって選びやすいという人もいそうですが、iDeCoでこれらを運用商品として選ぶ場合にはいくつか注意点もあることを知っておきましょう。
投資信託
運用の専門家が国内外の株式や債券などに分散投資している投資信託。メリットとデメリットを知っておきましょう。
【メリット】
・預貯金や保険よりも高い利回りを期待できる
・iDeCoを利用することで、運用益に本来かかるべき20.315%の税金がかからず再投資に回るため、運用効率が高まる
・リスク・リターンの異なるさまざまなタイプの投資信託があり、選択肢が豊富。
【デメリット】
・価格変動リスクがあり、元本が保証されていない
・将来もらえる金額が確定していない
定期預金
【メリット】
・元本が確保されている
・あらかじめ金利が設定されているため、老後の資金設計をしやすい
【デメリット】
・金利が低く、付与される金利はわずか
・運用商品見直しの際、途中で解約すると「中途解約利率」が適用される
保険
【メリット】
・当初定めた満期保険金(年金)額が確保されている
・途中で死亡した場合には死亡保障が上乗せされるタイプのものもある
・生命(損害)保険契約者保護機構の補償対象であり、万一保険会社が破綻しても契約保護される
【デメリット】
・利回りは低めで、払込掛金に対して受給額はあまり増えない。
・運用商品見直しの際、途中で解約すると「解約控除」がされる
タイプ別、iDeCoのおすすめ商品
ではいったい、どの運用商品を選べばいいのでしょうか。ここで知っておきたいのが、「運用商品は複数の商品を組み合わせてもよい」ことと、「運用商品は途中で変えることができる」ということ。これらを踏まえ、タイプ別におすすめの選び方を紹介します。
「資産は絶対減らしたくない」という人
定期預金を選びましょう。将来の受け取り額は大きく増えることはありませんが、元利合計額が確保されます。また、iDeCoを通さず銀行の定期預金で積み立てする場合には節税効果はありませんが、iDeCoを利用することで掛金分が所得控除できるため所得税・住民税の減税につながります。
「資産が減るのは嫌だけど、運用で増やすことも必要かも」と考える人
定期預金と投資信託を選びましょう。定期預金で安全性を確保しつつ、投資信託の運用効果を期待することができます。投資信託はパッシブ型やインデックス型といわれるタイプを選ぶことで、リスクやコストを抑えることができます。
「早めに老後設計をしたい」という人
早いうちにある程度の受け取り額を知っておきたい人は、保険と投資信託を選ぶと良いでしょう。保険の割合を高めにしておくのがおすすめです。保険商品といっても金融機関によって取り扱う保険は異なりますが、一般的には確定年金保険や終身年金保険などがあり、あらかじめ年金額や年金受取期間を把握しやすくなります。とはいえ、なかには途中で保証利率が変わる商品もあるので、利率低下に備えて投資信託でも運用し、資産の全体的な運用利回り維持・向上に努めてみましょう。
「できるだけ将来の受け取り額を増やしたい」という人
投資信託を選びましょう。投資信託のリターンはタイプ別では「アクティブ型>パッシブ型(インデックス型)」、投資対象別では「外国株式>国内株式>外国債券>国内債券」というのが一般的です。リスクの大小も同様ですので、自分の運用目標に合わせて選びましょう。もちろん、アクティブ型とパッシブ型の両方を選んでも構いません。
iDeCoも分散投資とリバランスを心がけよう
タイプ別におすすめの選び方の一例を紹介しましたが、最も大切なのは分散投資です。絶対に資産を減らしたくない……という人でない限り、元本確保型商品や複数の投資信託に掛金を分散するようにしましょう。
また、iDeCoの拠出(運用)は60歳まで続いていきます。それまでの間に運用する商品を変更したり、各商品への掛金の割合を変えたりしていきましょう。例えば、若いうちは投資信託の割合を高くしておき、老後が近づいてくれば投資信託の割合を下げる代わりに定期預金や保険の割合を上げるということもできます。
ただし、金融機関によって取り扱っている商品は異なります。なかには3種類とも取り扱っている金融機関もありますが、定期預金と投資信託のみ、保険と投資信託のみという金融機関もあります。自分が申し込もうと思う金融機関がどの商品を取り扱っているかは必ず確認しておいてください。
※本ページに記載されている情報は2021年9月9日時点のものです。