「グリーン住宅ポイント制度」とは、国が掲げる脱炭素社会の実現や、新型コロナウイルス感染症拡大で低迷する経済対策の一環として2020年12月15日に閣議決定された制度ですが、具体的な内容について知らないという人も多いのではないでしょうか。今回は制度の狙いと、対象となる住宅や具体的な手続きなどについて解説します。
新しく新設された「グリーン住宅ポイント制度」とは?
2021年6月9日
一定の省エネ住宅購入でポイントが付与される
制度の概要を簡単に説明すると、一定の省エネ性能を有する住宅の新築やリフォームまたは住宅の購入などに対し、ポイント(1ポイント=1円分相当)が発行され、一定の追加工事や様々な商品と交換できるというものです。そして対象となるのは、2020年12月15日から2021年10月31日までの間に売買や工事請負の契約を結んだ該当住宅の新築(持家・賃貸)、既存住宅の購入(持家)、住宅リフォーム(持家・賃貸)となります。対象となる住宅や工事内容、それぞれ発行されるポイント数については細かく要件が定められています。
新築住宅の建築・購入の場合
新築住宅の建築・購入の場合(自己居住用に限る)、一戸当たり最大100万ポイント(100万円相当)が付与されます。高い省エネ性能を有する住宅(認定長期優良住宅、認定低炭素建築物 、性能向上計画認定住宅、ZEH=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)もしくは、一定の省エネ性能を有する住宅(日本住宅性能表示基準で定める断熱等性能等級4かつ一次エネルギー消費量等級4以上の住宅)であることが条件です。ポイント加算要件に該当する場合、一戸当たり30万~60万ポイントが加算されます。
40歳未満の若者世帯への優遇策とは?
この「グリーン住宅ポイント制度」には40歳未満の若者世帯や子育て世帯に対しては、ポイントが優遇される措置が設けられえています。
既存住宅購入の場合
既存住宅(2019年12月14日以前に建築されたもの)を自己居住用として購入する場合において、
・空き家バンク登録住宅
・東京圏の対象地域から移住するための住宅
・災害リスクが高い区域から移住するための住宅
の、上記3ケースのいずれかに該当すれば、一戸30万ポイント(住宅の除却を伴う場合は45万ポイント)、上記3ケースのいずれにも該当しない場合で住宅の除却に伴い既存住宅を購入する場合は15万ポイントの発行となります。
賃貸住宅を建築する場合
賃貸住宅を建築する場合は高い省エネ性能を有し(建築物省エネ法に基づく賃貸住宅のトップランナー基準に適合)、すべての住戸の床面積が40㎡以上の住宅が対象となります。発行ポイントは一戸当たり10万ポイント×総戸数になります。
住宅のリフォームの場合
住宅のリフォームについては窓・ドア、外壁、屋根などの「断熱改修」、もしくは太陽熱利用システム、節水型トイレなどの「エコ住宅設備の設置」の工事のいずれかが必須条件となります。発行ポイント数は外壁の断熱改修で一戸当たり5万ポイント(部分断熱の場合)もしくは10万ポイント、太陽熱利用システムで一戸当たり2.4万ポイントなど、工事の内容によって細かくポイント数が定められています。その他、耐震改修やバリアフリー改修など、工事箇所ごと等にポイントが加算されていく仕組みとなっています(最低5万ポイント以上の工事が対象)。
発行ポイント数は一戸当たり上限30万ポイントとなりますが、若者・子育て世帯がリフォームを行う場合、上限が45万ポイントに引き上げられ、さらに既存住宅の購入を伴う場合は上限60万ポイントとなります。
さらに若者・子育て世帯以外の世帯でも、新耐震基準に適合し、既存住宅売買瑕疵保険の適合基準に該当するなど一定の基準を満たした「安心R住宅」を購入し、リフォームを行う場合、上限45万ポイントになるなどのポイント加算が用意されています。
ポイントはどんなものに交換できる?
ポイントの交換先についてはまだ詳細がはっきりしていませんが、国土交通省の発表によると、コロナ禍や環境・自然災害などに対応するものへの交換が可能となるようです。
・「新たな日常」に資する商品、・省エネ・環境配慮に優れた商品、・防災関連商品、・健康関連商品、・家事負担軽減に資する商品、・子育て関連商品、・地域振興に資する商品
・「新たな日常」に資する追加工事として、ワークスペース設置工事、音環境向上工事、空気環境向上工事、菌・ウイルス拡散防止工事、家事負担軽減に資する工事
・防災に資する追加工事
具体的な交換商品のラインアップについては、国土交通省・グリーン住宅ポイント事務局の専用サイトで随時追加される予定です。なお、賃貸住宅の建築の場合のポイント利用は追加工事のみとなります。
ポイントの申請期間に注意
事務局へのポイント発行申請期間は2021年3月29日~10月31日が予定されており、申請者となれるのは工事発注者や建築主または購入者となります。ポイントの申請方法には、完了前申請と完了後申請の2種類があります。基本的には選択が可能ですが、選択ができないものもあります)。また、事業予算には限りがあるため、事業予算がなくなれば本事業は終了となることに注意しておきましょう。申請タイプや申請方法により手続き方法などは異なりますが、工事完了前にポイント発行申請を行う場合は、工事完了後に完了報告(完了報告書類の提出)が必要です。
制度活用における注意点
では、この制度を利用するにあたり、どのような点に注意すべきなのでしょうか。ポイントは以下の3つです。
・住宅の種類やリフォーム工事によって申請方法や交付条件が細かく定められているため、内容をしっかりとチェックする
・今後も引き続きコロナによる影響を受ける可能性が高いことから、スケジュールに余裕を持ち、住宅関連業者とも相談しつつ工期や購入時期を検討する
・ポイントありきで安易に住み替えを計画しない
住宅は一度購入したら、仕事の都合などで転居したいと考えても、思うような時期に思った価格で売れるとは限りません。また、無理にリフォームを行い、資金計画がうまくいかなかったという結果になっては本末転倒です。税制改正において、住宅に関してもさまざまな特例や見直しが進められています。制度の活用については、その内容をしっかりと理解したうえで行うように心がけましょう。
※本ページに記載されている情報は2021年5月28日時点のものです。