確定申告の際の所得控除の一つに扶養控除があります。しかし、この扶養控除に当てはまる要件をきちんと理解しているでしょうか?度重なる税制改正により、扶養親族の要件も変わってきています。ここで改めて扶養控除を受けることができる扶養親族とはどのようなものなのかを整理しておきましょう。
しっかりと理解しておこう!
扶養親族の範囲とは?
2021年5月31日
扶養親族とは?
扶養親族とは、その年の12月31日の時点で次の4要件のすべてを満たす者で、扶養控除の対象(控除対象扶養親族)は、その年12月31日現在の年齢が16歳以上である扶養親族をいいます。
扶養親族の要件
1.配偶者以外の親族であること
2.納税者と生計を一にしていること
3.年間の合計所得金額が48万円以下であること
4.青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
配偶者以外の親族とは?
配偶者以外の親族とは納税者の6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。また、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子、18歳未満)や市町村長から養護を委託された老人(原則として65歳以上)も含まれます。
生計を一にするとは?
「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、自宅に戻って生活することも多い場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。なお、親族が同居している場合は、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
12月31日の時点において、ひとりの人を複数の納税者が控除対象扶養親族とすることはできません。例えば郷里にいる母の生活費を兄弟が送金している場合、生活費の送金をしていることから「生計を一にする」と考えることができますが、その場合は兄弟のうちのいずれか1人が母を扶養控除の対象の扶養親族とすることになります。この場合、兄弟が均等に送金している場合であっても、兄弟が重複して母を扶養控除の対象とすることはできません。
また、離婚した元夫から子に常に生活費等(養育費)の送金が行われている場合は、親権の有り無しにかかわらず、養育費が送金されている間は元夫の扶養親族とすることができます。
「同居」と「別居」の違い
生計を一にする親族には「同居」親族と「別居」親族がありますが、同居の有無で取り扱いが異なるのが老人扶養親族です。例えば、所得要件を満たす老親が、子ども世帯と同じ敷地内の別棟で暮らしている場合で、その老親が子と食事を一緒にするなど日常生活を共にしているときは子の同居老親等に該当します。また、病気の治療のため入院していることにより納税者等と別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、同居に該当するものとして取り扱って差し支えないことになっています。ただし、老人ホーム等の施設へ入所している場合には、その老人ホームが居所となり同居しているとはいえないことに注意が必要です。
年間の合計所得金額が48万円以下とは?
「合計所得金額が48万円以下」の判断をする際の合計所得金額とは各種所得の金額の合計額ですが、必要経費のほか特別控除といって所得から差し引くことのできる金額があったり、所得の種類によっては全額を算入しなくてよいケースがあったりします。
例えば一時所得の場合、所得金額は「収入金額-必要経費-特別控除(最大50万円)」ですが、総所得金額に算入される金額はこの2分の1となります。
その年の12月31日の現況による判定
年齢の判定
扶養親族に該当するかどうかの判定は、その年の12月31日の現況によります。そして、年齢計算に関する法律により、年齢の加算は誕生日の前日に行います。したがって2006年1月1日に生まれた方は、2021年12月31日に満16歳となるため2021年は扶養控除の対象となることになります。
年の中途で死亡等があった場合
納税者が年の中途で死亡した場合や、扶養親族が年の中途で死亡した場合の生計一であるかどうかなどの判定はその死亡時の現況により行います。その場合の扶養親族の所得判定は次のとおりです。
1.納税者が年の中途で死亡等した場合
その年の1月1日から12月31日までの扶養親族の合計所得金額を見積もって判定します。なお、その判定後に偶発的な事由により扶養親族に所得が発生したとしてもそれはこの判定に影響を与えることはありません。
2.扶養親族が年の中途で死亡した場合
その年の1月1日から死亡日までの扶養親族の合計所得金額で判定します。例えば、年の中途で扶養していた父が死亡した場合、その時点で要件を満していれば、子は父を控除対象扶養親族として申告することができます。
扶養親族の所属の変更があった場合は?
例えば給与所得者である夫が、その年最初の給与の支給を受ける前に提出した給与所得者の扶養控除等(異動)申告書において、子を扶養親族としていたとします。途中で状況が変わり、子を妻(給与所得者)の扶養親族とするほうが有利となった場合には、夫婦双方が扶養親族の所属を変更して扶養控除等(異動)申告書を再提出することができます。この場合は、変更後の申告に従ってその年の年末調整がなされることとなります。
ただし、いずれかが確定申告で扶養親族を確定した場合は、その後において扶養親族の所属の変更はできません。間違った確定申告をした場合には修正申告や更正の請求により確定申告の内容を訂正することができますが、夫婦のどちらが子を扶養親族として確定申告しても間違ってはいないことから、その後において扶養親族の所属の変更はできないこととなります。
(※本ページに記載されている情報は2021年5月1日時点のものです。)